#25 最難関試練 襲来!! ②
ま、魔法使い3人。こりゃ凄い構築が来たな……色んな意味で。
RPG歴15000時間の自分から見ても、谷口さんの構築には驚愕せずにはいられなかった。何故なら、谷口さんがやっているRPGで『魔法使い』は最弱職だからだ。
全てのゲームには『バランス』という概念があり、『強い要素』と『弱い要素』が必ず存在する。谷口さんがやってるRPGの場合、『強い役職』と『弱い役職』が存在する。
最近のゲームは『アップデート』と言う概念で、ゲーム運営は『強すぎる要素』を弱くしたり、『弱すぎる要素』を強くする『バランス調整』を施すことが可能だが、それは、あくまでも最近のゲームでの話。
谷口さんがやってるような古い作品の場合は、そもそも『アップデート』と言う概念自体がまだ開発されてない為、『強すぎる役職』と『弱すぎる役職』が浮き彫りになっている。
谷口さんがやっているRPGはとにかく、『魔法攻撃』より『物理攻撃』がとにかく強い。
火力は勿論、消費MP量、汎用性、強化方法等、ほぼ全ての要素において『魔法攻撃』より優れている。更に終盤は『属性攻撃耐性』が豊富な敵が多かったり、『魔法反射』のバフを掛けられて、滅茶苦茶魔法対策される。一方で、『物理攻撃』の強技は基本、無属性攻撃で殆ど対策もされない為、何も考えずに殴るだけでダメージ源になる。
更に、物理型は魔法型よりも耐久力が高い。前衛職だから当たり前だよね。
つまり、『攻撃魔法職』は攻撃面も耐久面も『物理攻撃職』の劣化版という可哀想な役職なのだ。
ちなみにネタバレすると、相手がラスボスの場合、1番勝率の高い組み合わせは以下の組み合わせである。
・勇者、武道家、武道家、治癒師
『治癒師』が入っているのは回復する為だけではない。『武道家』や『勇者』を強化する為に採用している。『治癒師』は味方全体の攻撃力を2倍にするぶっ壊れ魔法を覚えるからだ。『武道家』や『勇者』の攻撃力を2倍に引き上げて、物理で殴り続ける。これが、現実的に考えられる最大のダメージ効率だ。
また、攻撃魔法は『知力』の増加によって、ダメージが強化される。『魔法使い』にも『知力』を底上げする魔法を覚えるが、何故か『攻撃力増加魔法』とは違って、『知力増加魔法』は全体に1.5倍にしか増えない。2回同じ魔法を重ねがければ、2倍になるが、『攻撃力増加魔法』とは違い、何故か同じ魔法を2回掛けなければならない。ここでも魔法使いは不遇されている。
ここまで説明して、如何に魔法使いが不遇なのかがよく分かっただろう。だが、彼女は魔法使いを3人連れてきた。
正直に言って、馬鹿の構築にしか見えない。こんなパーティーで勝てる要素が……ん、待てよ?
もしかして、『あれ』をやるつもりなのか? いやいや、『あれ』を成功させるには『2割』を引くのが前提だぞ? というか、そもそも2割引いたってラスボスの攻撃に耐えれる気がしないのだが……まさかコイツ、やるつもりかっ!?
自分が戦慄の形相を谷口さんに向けると、彼女は不敵な笑みを零した。
この顔っ!? コイツ、やるつもりだ!?
勇者彩香は、不安そうな顔をしている魔法使い3人連れて、ラスボスと面合わせをした。
ラスボスは天地を覆い隠す竜、ヴリドラ。コイツの姿を見る度に吐き気を訴えたプレイヤーは数知れず。
遂に戦いが始まった。谷口さんは1ターン目のコマンド指示をする。
勇者彩香は『全体完全回復魔法』、魔法使いAは『知力増加魔法』、魔法使いBは『知力増加魔法』、そして魔法使いCは……
『神々のルーレット』をコマンド選択した。
や、やっぱり!?
『神々のルーレット』。魔法使いのレベルが最大になると覚えるスキル。使用すると、以下の5種類からランダムで1つ発生する。
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・味方全体のHPが1になる。
・味方全体のMPが1になる。
・敵味方の全てを耐性無視で眠らせる。
・味方全体の攻撃力が2倍になる。
・味方全体の知力が2倍になる。
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乱数を調整する手段は無い。つまり、完全にランダムでどれかが発生する。
谷口さんが狙おうとしているもの、それは味方全体の知力の2倍だ。つまり、知力増加魔法の2倍と組み合わせて、知力は4倍になる。
通常、ステータス上昇系の魔法は、2倍が最大上昇値でこれ以上増える事はない。
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知力:100
↓ 知力増加魔法(1回目)
知力:100 × 1.5
↓ 知力増加魔法(2回目)
知力:100 × 2.0
↓ 知力増加魔法(3回目)
知力:100 × 2.0(2倍以上増えない)
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しかし、『神々のルーレット』で増加する部分はバフの倍率ではなく、元のステータスである。
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知力:100 × 2.0
↓ 『神々のルーレット』で知力2倍
知力:200 × 2.0(元のステータスが2倍)
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つまり、最大上昇値は2倍だが、『神々のルーレット』を使用すれば、最大4倍にまで引き上げる事が出来るのだ。
だが、『神々のルーレット』の実用性は殆ど無い。運要素が強すぎるからだ。
『知力2倍』を引くには5分の1、つまり20%を引かないといけない。引けなかったら、HPやMPが1になって詰み。
そう、彼女は普通にやっても勝てない事を最初から理解してたのだ。ならば、100%倒せるやり方は捨てようと。
彼女は彼女なりに、ラスボスを初見で倒せる『可能性』を考え考え抜いた結果、魔法使いで埋めつくされたパーティーになったのだ。
そして、その僅かな可能性を信じ続けることで、初めて奇跡が舞踊ってくるのだ。
『神々のルーレットを回した! 味方全体の知力が2倍になった!』
ウッソだろ、おい!w
ガチで2割を引きやがった。でも、いくら2倍になった所でラスボスの攻撃を耐えれる要素など何処にも無い。
ヴリドラは躊躇いなく、最強の全体炎魔法を解き放つ。炎魔法は全体に500程のダメージを与える、ヴリドラ専用のぶっ壊れ魔法。魔法使いのHPは380程しか無い為、勇者以外はこれで壊滅する。
と思いきや、目の前に信じられない光景が映し出される。何故か魔法使いは350程のダメージに抑え耐えたのだ。
そうか、知力4倍の効果かっ!?
『知力』は攻撃魔法の威力が上がるだけでは無い。攻撃魔法のダメージも軽減する効果も持っている。
しかし、知力によるダメージ軽減は、実感するのが難しいくらいに少ない。これ程までに軽減出来てるのは、それほどまでに知力が上昇している事を意味する。
最後に勇者彩香が動いて、『全体完全回復魔法』で全回復する。行動順は敏捷性より『魔法使い』→『ヴリドラ』→『勇者』の順番。ヴリドラで大ダメージを喰らうことを読んで、予め回復魔法を指示したのだ。
1ターン目、まさかの全員生存。
2ターン目、勇者は回復、残りの魔法使い3人は最大火力の攻撃魔法を指示する。
『魔法使いBの上級攻撃魔法! ヴリドラに1542ダメージ!』
『魔法使いCの上級攻撃魔法! ヴリドラに1566ダメージ!』
『魔法使いAの上級攻撃魔法! ヴリドラに1555ダメージ!』
嘘だろ……攻撃力を2倍にした武道家よりも火力出てるんだけど。
武道家の1ターンに出せる火力は1000ダメージ前後。『神々のルーレット』で攻撃力を2倍にすれば、2000ダメージ前後を叩き出せるが、『神々のルーレット』は魔法使いしか覚えないし、『攻撃力増加魔法』は治癒師しか覚えない為、2000ダメージを出せる武道家は1人しか入れられない。
じゃあ、1ターンに4500ダメージ出せる魔法使いめっちゃつえーじゃん! と見えるけど、『神々のルーレット』で知力が4倍になってるから強そうに見えるだけで、実際は普通に1ターンでパーティーが壊滅しちゃうからね、ほら。
『ヴリドラは大きな頭で押し潰した! 魔法使いAに1022ダメージ! 魔法使いAは死んでしまった!』
知力がいくら伸びたとはいえ、物理守備力がザルだという事実は変わらない。ヴリドラが物理攻撃してきたら、パーティーは壊滅する。
3ターン目、4んでしまった魔法使いAを蘇生薬で復活させるかどうか。
いや、蘇生薬無しで3人で突っ込むみたいだ。短期決戦に持ち込むつもりなのだろう。ヴリドラのHPは20000、果たして削り切れるかどうか。
魔法使いは見たことの無い桁数のダメージを叩きだし続け、勇者はひたすらに回復する。だが、ヴリドラの攻撃が激しく、徐々にパーティーが崩れていく。
『勇者彩香は825ダメージ! 勇者彩香は死んでしまった!』
あ、終わったかこれ。




