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悲痛な叫び

「フェルン、すまないが急な仕事が入った」


俺とフェルンのデートは、突然やってきたヴィルラドの一言で終わりを告げた。


「え・・・。今日はお休みだって言ってたのに、まだ夕方にもなってないよ」


フェルンにしては珍しく、とても不服そうだ。


「仕方がないさ。私たちは勇者パーティなのだから」


「でも・・・」


フェルンは気まずそうに俺の方をちらりとみた。


「仕方ないさ。俺はいつでも暇人だから、またフェルンの徒弟がない時に誘ってくれよ」


「・・・うん」


笑顔を向けると、彼女はうつ向いてそういった。


「悪いな、勇者」


「元だよ、元。貴族のお前が間違えんな」


「ふ、そうでもないさ。時期にわかる」


「・・・?」


首を捻った俺を無視して、ヴィルラドは去っていった。


「ごめんね、じゃあまた・・・」


その後ろを、フェルンも申し訳なさそうについていくのだった。


・・・この時の俺はまだ知らない。今日という一日が、あんなに長くなるということを。


そして、次に会う彼らがあんなにも・・・変わり果ててしまうということを。



一人ですることもないので、奴隷の彼女が待つ家へと帰る。


ま、彼女の精神的には俺のことなんて待っていないんだろうけども。


「ただいまー」


もちろん返事なんて帰ってこない。いつか帰ってくるようになればいいなと切に思うが。


「・・・早かったわね」


「ま、いろいろあって。・・・なんか疲れてないか」


椅子に座って頬杖を突く彼女は、どこかそう見えた。


「仮に疲れてたとしてもあなたには関係ないことでしょ。いちいちキモいこと言わないでよね」


「そーですかい」


彼女の前の椅子に腰かける。


すると。


「・・・」


奴隷の彼女が、俺のことをじっと見つめてきた。いつも通りの不機嫌そうな顔で。


「何。どうかした?」


「別に」


問いかけると、一度は視線を外すが、時間がたつとチラチラ俺の方を見てくる。


「だから、何?顔になんかついてる?」


「だから別にって言ってるでしょう。安心していいわ、あなたの顔には何もついてない。いつも通り冴えない顔してるわ」


「嘘だゾ。ぜったい嘘だゾ」


「は?嘘じゃないですけど?」


うーん。彼女はそう言ってるが、やはり何か言いたげに俺のことをチラチラ見てくる。なんか微妙に居心地が悪い。


良し、ここは冗談でも言って場の空気をを換えてしまおう。


「もしかしてお前・・・俺とフェルンのデートが気になるのか?・・・大好きなご主人様の恋の行方がどうなったか気になるなんて、案外乙女だなぁ」


そうして、『何バカなこと言ってんのよ』って怒られてしまえばいつも通りの俺たちだ。


・・・と、そんな予定だったのだが。


「ー--なっ!?」


奴隷の彼女が、机をたたいて立ち上がる。


「な、ななな何バカなこと言ってるのよっ!?」


彼女の口から出た言葉は予定通りだったのだが、そのニュアンスはだいぶ違っていた。


「おいおい、なんでそんなに取り乱してるんだよ」


「取り乱してなんてないからっ!」


もう一度机をたたいて叫んだ彼女の頬は、ほんのりと赤らんでいる気がした。


「ごめんな・・・軽い冗談で場の雰囲気を変えようと思ったんだけど・・・まさか図星だったとは・・・」


「違う!だから、違うんだってばっ!」


その日初めて、元勇者の家中に奴隷の彼女の悲痛な叫び声が響いた。

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