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馬に蹴られてしんじまえ

いままでにあった最大の修羅場@お城の坊ちゃん集まれ


まず前提。


うちの一族は子供が生まれると城に親戚一同を集めてお披露目のパーティーをする。


で、その親戚の一人に、酒を飲むと別人のようになって周囲にウザ絡みする困ったちゃんがいる。たしか俺のひいひいばあちゃんの妹。


従姉妹のお披露目んときに、そのばあさんがやらかしたらしい。


周囲が目を離した隙にベロベロに酔っ払っちまって、食器がみんなと違うとかなんとか因縁をつけて、なだめられてるうちに「あたしが悪いってのかい」ってヒートアップして、そうなるとなんかわけわからん言葉を一人でくっちゃべりまくるらしい。


くそおそろしいことに、その「わけわからん言葉」がなんかの拍子にひょいっと呪いとして成立しちまったりするんだ。無駄に腕が良い魔女なもんで。


最初は「フン、こんなチビっ子、トウフの角に頭ぶつけてSiんじまえ」とかぶつぶつ言ってたらしい。トウフってのが遠い異国の食材だったらしく、この国にはないから、呪いが成立しなかった。ばあさん、外国に行くの好きだったらしい。


それから何度も言い直してたら、「糸巻きのつむの先に指を刺して」のときに成立しちゃったんだと。


まあそんときは、とっさに近くにいた別の腕っこき魔女(俺の母上の妹)が「Siぬのではなく、Siのように深い眠り」ってちょこっと呪いを改変して、なんとかなった。


従姉妹と糸巻きのつむを接触させないよう、城中一丸となって努力したが、呪い自体は回避させられなくて、一時期従姉妹のみならず城中が眠りについちまって、その間、従姉妹の城に連絡がつかなくて大変だったらしい。


それが俺が生まれる前にあったこと。


なので、俺が生まれたときには細心の注意を払って機嫌を損ねないようにしたんだって。


ばあさんのほうも、さんざん叱られて、反省して、はじめのうちは神妙にしてたらしいんだが……


飲んじまったらもうダメで(たちの悪い酔っ払いあるある)


「なんだい、こんなちっこいの、馬に蹴られて……」

まで言っちゃったんだと。


そこでまた叔母上が「蹴られるけど助かる!」って叫んで、危ういところで呪いは回避……してねえよなあコレ(涙)


馬に蹴られたらSiにはしなくても怪我はするよな。


従姉妹の時は、お触れを出して国中のつむを隠したらしいが、馬はなあ。失くしたら国の産業が成り立たんよなあ。


でも俺は、一族待望の久方ぶり男子だったんで、死なせるわけにはいかんってんで、総勢で知恵を絞って出てきた対策が「護衛をつける」だった。


呪いを逸らせてくれた魔女が、母上の妹だが。やっぱり外国に行くのが好きで。某国から連れてきた壺妖精ってのに話をつけてくれたらしい。


壺妖精ってのは、元は魔族とかそういう悪さをするやつで、魔法使いとの戦いに負けて、まじないのかかった壺に閉じ込められてたんだそうだ。


この子を成人まで呪いから守ってくれたら、お前を解放してやるってなことで話をつけたらしい。


俺には知らされてなかった。





いや変だなあとは思ったんだよ(涙)


俺が出歩く時には護衛が山盛りで、ものすごく気をつけられているはずなのに。


そこに馬がいる限り、なぜか吸い込まれるように俺は蹴られる。


で、宙高く舞い上がって、もうダメだと誰もが思ったところで藁を積んだ荷馬車が通りかかって荷台にバフっと落下したり、ハンモックに引っかかったり、木だの枝だの繁った葉っぱだのがセーフティネットの役割をしてくれたり、するわけよ。


馬に蹴られるというのはそれだけで結構なダメージなはずなんだが、どういうわけか大きい怪我に至ったこともない。痛いけどな。


馬に蹴られる王子ってな悪いイメージ(事実だが)が定着したことで、成長して学友と一緒にいても、馬がいるところでは遠巻きにされるんだよなあ(涙)


でもまあ、生き延びられたわけだから、文句は言っちゃいかんが。いかんと思うが。


でもなあああああ(涙)





なんでそういう事情を知ったかというと、今日が誕生日で。


さっき時計の針が0時になった瞬間、成人したと魔法的に見做され、俺にかけられた雑な呪いは消滅したそうな。


壺妖精はめでたくお役御免。


奴は解放されてたちまち俺んとこに来た。


でもって全てを教えてくれた。


ついでに説教も。



曰く、


「若いメイドの胸元ばっかり見るな」


「着替えくらい自分でやれ」


「さりげなくメイドの体に触れようとするな」


「若いメイドの匂いを嗅ぐな」


「若様付きのメイドにはなりたくないと国中の若い娘が嫌がっている」


「執事が特別手当をちらつかせて因果を含めている」


今更そんなこと言われても。


どうして誰も言ってくれなかったんだ。


「言えるか、雇い主だぞ」


まさかわかられていたなんて。


「わかられていないと思う方が阿呆だ。めでたい奴め」


さんざん説教して、晴々とした顔で出て行ったけども。


残された俺の心境が、いま修羅場。


なあ、こんなこと、普通だよな。


みんなやってるよな。


気持ち悪いとか、そんなことないよな。


ーーーーー


うん、きもい

ーーーーー


いるいるそういう男


本人はさりげなくやってるつもりなのなー。でも、わかんねえわけねえじゃん。


きんもー

ーーーーー


大丈夫。城に住んでるような坊ちゃんなら、どれほどすごい評判がこびりついていても、政略結婚の相手には事欠かないから。きもいけど。

ーーーーー


若い男なら誰でもやりたくなるさ


実際にやるやつはあんまいねえが


きもいから

ーーーーー


みんな、やめたげて!


イッチのライフはもうゼロよ!! 


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