25 しろくま先生、教師になる4
お久しぶりです。随分、時間が経ってしまいました。
あれから、1週間が経った。
身体強化を考えて、走り込みもさせたいが、虚弱体質のメンバーは、ラジオ体操で精一杯だ。
今月いっぱいは、とりあえず、ラジオ体操とギルドの掃除等、手伝いを午前にして、残りは読み書きそろばん、1日の終わりに整理体操がてら、ラジオ体操をしていくことにする。
プティー村のポールさんに、手紙を出して、今の状況を説明した。
すると、「応援している、無理はしないように、いつでも戻ってきてくれ、」という内容の返事がきた。
それから、2ヶ月が経った。
この世界でも、1年は12ヶ月で、今は6月だ。
ブロッコリー達は、ゆっくりではあるが、確実に変わってきている。
「あたし達もお手伝いしたいわ。」
言い出したのは、アンさんだった。
そういえば、いつもトムさん達5人組は、ギルドにいる事が多い。
と言うよりは、毎日いる。
「あたし達Sクラスは、世の中が平和な時は、暇なのよ。おまけに、魔力過剰症じゃない? その辺、散歩していたら、変な顔されちゃう。」
「そーそー、歩く危険物、ってな。」
「お買い物をし過ぎると、『戦でも始まるのか』と、お尋ねになる方もいらっしゃいましたわ。ただ、美味しいおやつを、頂きたかっただけですのに。」
「…。」
4人の孫を見つめて、トムさんは溜め息をついている。
「乾電池みたいな物が、あればいいのに。」
「今、何か言ったの? 」
アンが不思議そうに、聞き返すので、答える。
「うん、動力源になるスイッチみたいな、石があるよね? キッチンの流し台で水を出したり、コンロの火を出したりする…。」
「魔石の事かしら? あれは魔物や魔獣を倒した時に、手に入る物よ? 」
この街は比較的都会だ。
プティー村で使っていた、井戸や暖炉等、俺にとっては前時代的な物(と言っても、子供の頃に使用経験がある代物だが)もある。
洗濯や、泥が付いている野菜を洗う時は、井戸端だ。
しかし、ギルドの台所を見ていると、魔石と呼ばれる石が、台所の流し台や、調理用コンロに取り付けられている。
それに手をかざすと、水が出たりコンロの中の薪に火が付いたりする。
「うん、その魔石の魔力が無くなったら、君達がそれに魔力を込めて、また使えるようにならないかな? 」
皆、驚いた顔をしている。
カミュが頭を掻きながら、
「おやっさん、あんたそれ、よそで話すなよ。マジでヤバいぞ。」
と言う。
「そういう発想が、ありませんでしたわ。使い捨てが当たり前の道具だと、思っていましたもの。」
「試す価値が、あるかも知れないですね…。」
「しろくまの御仁は、面白いのう。」
ブロッコリーが、文字の書き方を仲間達に教えるのを横目に見ながら、そんな話をしていると、
「しろくまさーん、いらっしゃいます? 」
マリーさんがコートの裾をはためかせながら、小走りにやってくるところだった。
「おりますよー。」
「丁度良かった。トムさんとの、共同依頼を受けて下さるかしら? 」
「共同依頼? 」
「ええ、ホルン山の調査を兼ねて、ブロッコリー達の研修をして下さらない? 」
なんか分かっていたけど、俺ブロッコリー達の専属教師みたいになっているなぁ。
まあ、良いけど。
この世界の常識は分からないから、若者達に面倒を見てもらおう。何とかなるだろう。
「支度が必要だな。買い物の為のお金を…。」
俺が言いかけると、
「今回は、ギルドの初心者用装備を無料で人数分用意するわ。急な事をお願いするのですから。」
と、マリーさん。ありがたい。
「でも、ホルン山? が、どの程度の山なのか…。他にも必要な物がありそうだね。」
「ええ、しろくまさん、装備を調えないと、いけませんわね。」
ジェニーが、応えてくれる。
「大きなカバンに、武具、食糧や服、下着類に至るまで、必需品を色々とベテランにチェックしてもらわないとね。」
「「「「何で? 」」」」
「お前ら…。」
若者達が疑問に思う中、ブロッコリーは額に手を当てて、天を仰いでいる。
「山の天気は、変わりやすいし、高い所へ行けば行くほど、より寒くなる。夏だからって、油断していると、凍えて死ぬ事もあるからね。」
「まあ、しろくまさんは、分かっていらっしゃいますね。」
「後で、地図を含めて、ギルドにある情報を教えて頂けますか? 」
「もちろんです。どうぞよろしくお願いしますね。」
マリーさんが応えてくれる。初心者にもできる仕事なのだろうけど、油断は禁物だ。
「今回は、護衛にワシらが付いている。まあ、大丈夫じゃろ。」
トムさんが、力強くうなづいてくれる。心強い。
「お勧めのお店があるわ! 後で一緒に行きましょう! 」
「おお! アンさんに頼めば、安心だね。」
「任せてちょうだい! 」
お読み下さり、ありがとうございます。




