表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
557/715

549 撤収命令


「撤収ですか」


「いかにも、先日、ラッテル領にてライワ伯爵閣下と神官長猊下が面談され、ムルズ王都方面に置けるライワ家の目的はほぼ達成されたと伯爵閣下は判断され、王都への派遣人員の縮小を指示されました。これに伴い、現在王国より借用して居るこちらの館を引き払い、トマホーク卿とラーン卿を含む5名を残して、残りの者はラッテル領まで引き上げる事となりました」


 カミヤさんから使者として送られてきた『蛇食い蛇』ことクリグ・ムラムが、淡々と説明してくるけど、これってちょっと早すぎないか。俺が神官長さんと会ってから、まだ三日しかたってないよな、あの人こうなる事を予想してたのか、それとも、事前に王都近くまで派遣してたクリグ・ムラムに遠方からカミヤさんが指示を送る方法でもあったのかな。


「もしも、使節官のリョー殿がまだこの王都に残られることを望まれる場合は、別に借家を用意しておりますので、残る5名と共にそちらに移って頂きます。ただし、『薬師の創薬刀』は我らと共に、ラッテル領へ持ち帰らせて頂きますし、リョー殿も王都が戦場となる前に退避していただくことが条件となります。それと、伯爵閣下がリョー殿に任命している使節官の役職は、リョー殿がラッテル領へ戻られるか、或いはムルズ王国の国境を越えて他国へ移動されるまで維持されるとの事です」


 はあ、えっと、つまりはライワ家の用事としてはもうやる事はないから、後は好きにしろって事なのかな。カミヤさんからの身分保障が続いてるのなら、ムルズの貴族達も下手な事はしてこないだろうし。


 多分、この屋敷から別な借家に移っても監視は付いたままなんだろうけど、まあでもこれ以上貴族達との交渉事が無いっていうのは、王女様と神殿の一件に集中できるって事だけど。


 ついでに、偽物の『薬師の創薬刀』も引き取ってもらえると、あれが有れば交渉事には便利だけど、欲しがる連中がこの数日、何十人と押しかけて来たから、まともに身動きが取れなかったんだよな。


ついでに言えば、万が一にも奪われた時に偽者だとバレちゃうと、色々と不味い事になるしね。下手をすればヤスエイを倒したっていうこと自体が嘘って事にされて、伯爵家の信用問題になるもんな。


その点、『薬師の創薬刀』が王都を出てしまえば、いざという事態に備えて創薬刀は秘密裏に伯爵の所に送りました、盗難対策の為にクリグ・ムラムが偽物を用意したと言っても説得力があるだろうから。


「解りました、個人的に済ましておきたい用事が何件かあるので、其方を解決してから王都を離れると伯爵にはお伝えください」


 とりあえずは、引っ越しの準備かまあこの屋敷自体が借りものだし、私物は殆ど無いし大半は『アイテムボックス』の中だから、問題ないか。他の連中の事はトマホーク達に任せておけばいいだろうし。


 あ、一応は、この国の連中にも話を通さないとダメなのかも、俺は監視対象みたいだから。






「引っ越しですか、我が国の用意した邸宅はお気に召しませんでしたかな」


 クローニがため息をつきながら、何かメモを取ってるけど、多分俺達が引っ越す事に関して色々手続きや根回しなんかが必要なんだろうな。


 まあ、それに関しては向こうに頑張って貰おう。もともと、そう言った事をする仕事を押し付けられたのがクローニなんだろうしさ。


「確認ですが『薬師の創薬刀』は、ライワ家に引き上げられる方々が持っていかれる、という事でよろしいでしょうか」


「ええ、その通りです。ただすぐにライワ伯爵の元へ戻るのではなく、後学の為に戦場を幾つか回って見ながら帰りたいとの事でして。もちろん戦闘に参加するようなマネや、ライワ家の物資を戦闘中の部隊に提供するようなマネをして、いずれかの勢力の利となるようなマネは致しません。まあ、人道上見捨てるのに忍びない負傷者等がいれば救護などはするかもしれませんが、中立の観戦武官というような形でどうにか手続きを頂けませんでしょうか」


 というか、この中世風世界で観戦武官なんて制度が有るのかな、地球だともっと先の話だよね。とは言え、この件はカミヤさんから指示された事だから、通さない訳にはいかないけど、多分これってカミヤさんの誘いだよな。


 何が有ってもおかしくない戦場近くに、一定の戦力だとは言え数十人程度の集団が、重要な戦略物資と言える『薬師の創薬刀』を持って、ぶらついてるっていうんじゃ、どこかのバカ貴族が欲を出して仕掛けてきそうだもんな。


 幾ら戦場とは言え中立を宣言しているところを、襲撃されたなんて事になったらさ。やっと、俺がマインにやられた一件の賠償交渉がまとまったっていうのに、更にその数倍の規模になるだろう賠償請求が始まる事になるからな。


カミヤさんの事だからすごくいい笑顔で、武力をチラつかせた交渉というか脅迫を始めるんだろうな。ただでさえ、負けが決まりかけてて、戦費やらこれまでの借金やらで追い込まれてるムルズ貴族達がそんな事になったらシャレにならないだろうな。


(いくらムルズの連中であってもその程度の事は、理解して居ろうが、おそらくはそれもカミヤの狙いなのじゃろうて。偶発的な戦闘でも致命的な事態になりかねぬ以上、戦場で『重大な事故』が起こらぬよう、ライワ家の連中とは十分に距離を取り、絶対に接触せぬよう貴族達は厳命するじゃろうがそうなれば、ライワ家と神殿にとっては好都合じゃろうて。戦場で絶対に敵の近寄らぬしかも自由に動く安全地帯が出来るという事じゃからのう。ムルズ側が有利となるような地点や移動する進路上にクリグ・ムラムらが観戦の為として陣取ればどうなるかのう)


ああ、そうなっちゃったらムルズ軍はライワ家を避けるしかないんだから、ライワ家から離れた不利な場所に布陣したり、ライワ家の居る場所を迂回して移動に時間が掛かっちゃうから……


いや、それどころか不利になった神殿軍が、偶々ライワ家の居る場所に逃げたりしたら、たとえ誤射でもやらかしたらアウトな以上、神殿軍への追撃も諦めるしかなくなるだろうからさ。


これが戦争物のマンガとかだと『各員、くれぐれも誤射には注意しろ(解ってるな)』とか言われて、兵士も『誤射ですね了解しました(ニヤリ)』てなかんじで、中立の相手を狙い撃ちして置いて『誤射です、予期せぬ不幸な事故でした』で済ますとかあったりするけどさ、この状況下での誤射は本当に不味い事になるからな。


 多分、ライワ家の近くに矢が落ちただけでも、あの人はムルズ側が仕掛けて来たって難癖付けそうだから。ムルズの軍隊はクリグ・ムラム達に武器を構えるマネすら出来ないだろうな。


 向こうが撃って来ても、撃って来なくても、どちらにしろ神殿やカミヤさんには好都合と、かと言って今の状況下でムルズ側が、クリグ・ムラム達の観戦を断れるとは思えないし、どう考えても詰んでるよな。


(そもそもの話ではあるが、この程度の国力しかない国がライフェル神殿を相手に戦争を始めようという時点で、程度の差は有れど負けて諸勢力に利権を食い荒らされるのは決まっておった様なものじゃ。いや、それ以前に高騰した相場への投機目的で家が傾き戦争で帳消しにせねばならぬほどの借金を負う時点で、貴族家当主としては救いようがないがのう)


 まあ、いいけどさ、俺が王女様に頼まれた停戦交渉の席を用意するって話も纏まりかけてるんだから、後は幾つかの残ってる作業をやるだけで済むし。交渉が上手く行けば、戦争も終わるんだから。


「貴殿の引っ越しの件と、観戦武官の件は承知いたしました、明日中に手配を行い必要書類を用意いたしましょう。ですが、この屋敷を引き払う際と、新たな住居に入られる際、それとライワ家に戻られる方々は王都を退去される際に、それぞれ所持品の一切を確認させて頂きますので、ご了承ください」


 ああ、また手荷物検査か、まあこの王都に入ってから日に数回は受けてるから気にならないけど、今の言い方だと引っ越しで運ぶ荷物なんかも細かく調べるって事か。見られちゃ困るメモとか書類とかが有ったら退去前に燃やしとか無きゃな。


「ご不快かとは思いますが、戦時下という状況に加えて、ヤスエイなどという重罪の組織犯が王都近郊で討伐された事も有り、残党が市街に潜伏している恐れや、違法薬物が隠されている恐れもあるために、例外を認める事が出来ないとの事でして」


 なるほど、そう言う建前があるのか、まあ実際の所は俺は、仮想敵だろうライワ家と、現在進行形で戦争してるライフェル教、両方の関係者だから、何か見つかればそれを根拠にライワ家と再交渉とか、神殿の大義名分を崩して他国の介入を狙うとかって考えなんだろうな。


 変なチョンボをして付けこまれないように気を付けないとな。


ご無沙汰しています、活動報告の方で久しぶりの人気投票でもと思っていますので、もしよろしければ本日付の活動報告を見て頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。楽しく読ませて頂きました。応援しております。 [一言] ここまでのお話でメインヒロインとなると2のサミューを推します。ただアラの設定が活きるお話が少しずつ増えてき…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ