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48 奴隷娘の三者三様とプラス2 ~ ミーシア

予告通りヒロイン視点で振り返ってます。

長くなるだろうと思って、ヒロインごとに一話づつ分けて四話にしたのに、ミーシアだけでとんでもなく長くなっちゃいました。

他の子もこんなに長くなったらどうしよう。

ちなみにモノローグはミーシア視点で全部書き直しましたけど、セリフの八割くらいは過去の本編の同シーンとほぼ同じだったりします。

Side使いが苦手な方は読み飛ばしても大きな問題はありません(多少の伏線や後書きでのお知らせはありますが、サミューとアラだけでも読んで頂けると助かります)

べ、別に手抜きじゃないんですよ……

こんな感じがあと三話続く予定ですがすみません見逃してください。



「ミーシア、この先ちょっと変じゃないか」

 

「え、へ、変ですか、よく解らないです」


 いきなりリョー様にそう言われて前のほうを見てみるけど何か変かな、とりあえず片手に持ってた蝙蝠の丸焼きを一気に食べてから、もう一回前を見直してみるけど。



「三メートルくらい先だ、何かおかしくないか」


 三メートルくらい、あっ床にスイッチだ、あれは『仕掛け槍』かな。


「えっと、あ、は、はい罠があります」


 全然気づけなかった、こんなに近くまで解らないなんて、私の方が人族のリョー様より目が良いはずなのに。


「ほんとか、よくやった、解除も頼む」


 リョー様がそう言って褒めてくれるけど。


「は、はい、でも見つけれたのはリョー様が……」


 ほんとは私が見つけなきゃダメだったのに。


「俺だけでは罠だとわからなかった」


 そんなことないです違和感に気付けるかどうかが大事だって、前に教わったし、それなのに、ううんともかく解体しないと。


「が、がんばります」


『仕掛け槍』なら前もやった事が有るから大丈夫なはずだよね、一人でやるのは初めてだけど。


「罠が有るのでしたら、迂回すればいいだけではありませんの」


 あっそうだよね、このスイッチさえ踏まなきゃ何も問題ないんだから、ハル様の言う通り、避ければいいだけなのに。


「ミーシアの経験のためだ、迂回できないような罠が出てきた時に備えて罠の解除に慣れてもらう」


「は、はい」


 うう、わ、わたしの為にこんな、絶対失敗しないようにがんばって、早く一人前の盗賊にならないと、あっ手が……


「ミーシア、慌てなくていい、落ち着いて対処していけ」


 間違って道具を落としかけたの見られちゃったかな、失敗したの怒られないかな。


「わ、解りました」


 落ち着かなきゃ、一回深呼吸して、よしもう一回、ここを外せば……


 よかった、うまくできたよー


「で、できましたリョー様」


 おそいって怒られるかな、こんな罠にいっぱい時間かけちゃったし。


「ありがとう、よくやった」


 あ、リョー様の手が来るっ……


 あれ、いたくない、頭の上に手があるのに、ゆっくり撫でてくれてる誉めてくれたのかな、きもちいいなー


「ミーシアちゃんだけですか」

「りゃー、アラもー」

「まったく、何をやっているのかしら」


 あっ、え、えっとごめんなさい私なんかが、こんな。


「よし先を急ぐか」


 慌てたように手を離したリョー様を追うように私もすぐに歩き出した、今のなんだったんだろう気持ちよかったな。






「と、通さない」


「アラちゃんには触らせません」


 いきなりこんなに魔物がいるなんて、この部屋で待ち構えてたのかな、リョー様の命令はこの入口でみんなを守る事だけど。


「蹴散らしてやる」


 一人だけ部屋の中に残ったリョー様が飛び上がって、空中にいる蝙蝠たちをどんどん切っていく。


 最初の広間の時もそうだったけど、リョー様はすごい、わたしなんて重たくて遅いからあんなに飛び上がるなんて絶対できないもん。


「キッキッ」


 あれ、蝙蝠の動きが急に。


「キッテッ」


 何回も蝙蝠に体当たりされて、空中で釘付けにされてる。どうにかしないとリョー様が。


 あっ、落ちて行っちゃう。


「キキット」


 ネズミが集まってる、このままじゃ囲まれちゃう。


「リョー様」


「りゃー、『ひゅううが』」


 アラ様の魔法がネズミを数匹切り裂くけど、数が多すぎるよ、リョー様にどんどんネズミが集まって全身に噛み付いて、これじゃあリョー様が死んじゃう。



「ご主人様、ご無事でしょうか」


「あ、あんなに群がられて、でも、私が動いちゃったら、みんなが」


 わたしが中に入ってもあんなにいっぱいの魔物を追い払えないし、それに今動いたら後ろにいるみんなを守れないし。


 リョー様の命令もあるし、でもこのままじゃリョー様が。


「これでは通路からまともに狙えませんわ」


 ハル様ダメ、出てっちゃ守れない、戻っていてください、て言いたいけどハル様の顔が怖くて声が出ないよ。


 ハル様が魔法で魔物を一気に焼き払ってるけど、あの位置じゃ今度はハル様が。


「ハル、俺のまわりより奥だ、奥にいる蝙蝠を焼き払え」


 やっぱり、魔物がハル様の方に向かって行ってる。あんなにいっぱい、早く助けに行かないと、でもそしたらサミューさんとアラ様が、どうしよう。

 


「これでは、呪文が唱えられませんわ」


「ハル、通路に戻れ、他はハルを支援しろ」


 そ、そうだ『引き寄せ』スキルで私のほうに呼び寄せれば。


「は、はい、こっち、こっちに来て」


 盾を振って鎧に叩きつけて大きな音を出せばこっちに来るはず、リョー様に貰った防具が傷ついちゃうけどハル様のためだもん。


 き、来ちゃった、頑張んないと私が防がないとサミューさん達を頑張って守ればアラ様の魔法で密集に穴をあけられるよね、そうすればハル様も。


「行きますわよ、『火矢幕』」


 え、ハル様そんな、こっちに走ってくると思ってたのにそんなところで魔法使っちゃったら、やっぱりだ、火に驚いた魔物がハル様の方に行っちゃったよー


「待ってろ、今助ける」


 結局リョー様が殆どの魔物を切り捨ててくれたけど、わたし何もできなかったな、ただ防いでただけでほとんど戦ってないし、『引き寄せ』も最後まで続かなかったし。


 いけない、今はハル様の回復に集中しないと、わたしが使えるのは『止血・鎮痛の指先』だけだから治るまで時間がかかるし、完全には治せないし、ハル様の綺麗な肌に痕が残っちゃったらどうしよう、ハル様怒るかな。


 でもリョー様の命令でハル様から回復してるけど、リョー様の傷は良いのかな。


「お、終わりましたけど、ごめんなさい私のスキルじゃこれ以上は、ごめんなさい」


 ハル様の肌にはカサブタや赤い傷跡が残ってるけど、もっと上のスキルじゃないとこれは消せないし。


「ありがとう、疲れたでしょう、おかげで痛みは完全に消えましたわ、出血も全部止まりましたし、それよりも」


 あ、ハル様、急に立ち上がったりしちゃまだ回復したばっかりなのに休まないと、ああいえなかった、リョー様の方に行くけど、どうしたんだろう。


「ちょっとあなた、一体何を考えていらっしゃるのかしら、わたくし達を殺す気ですの」


 は、ハル様、奴隷がそんなこと言っちゃ、怒られちゃう止めなきゃ。


「あなたが魔物に群がられて死にそうになっているのを放置すれば、わたくし達の首輪が締まってしまいますのよ、そうなったら戦いどころじゃありませんわ、それを解ってらっしゃるの」


 それは、だからハル様はさっきあんなことを、わたしなんて命令を守る事しか考えれなくて何もできなかったのに、そんな事まで気づくなんてハル様はすごいな。


「奴隷の扱いがわからないのでしたら『迷宮』になんて連れてこないでちょうだい、そんなにボロボロになって、って、あら怪我がありませんわ、これはどういうことですの、こんなのは非常識ですわ」


 どうしたのかな、あっリョー様の怪我が残ってない、誰も回復魔法使ってないよね。あんなに怪我してたのに何で、見間違いじゃないよねリョー様の服はボロボロになってるし、でもどうして。


「ああ、俺の持ってる『魔道具』の効果だ、大抵の怪我ならすぐに治る」


「そう言う大事な事はきちんと教えて下さらないかしら、それさえ解っておりましたら助けたりはしませんでしたのに」


「そうだな、すまなかった、これは伝えておくべきだった許してくれ、それとさっきは助けてくれたんだろう、ありがとう」


 え、リョー様がハル様に頭を下げるなんて、どうなってるのやっぱりハル様だからかなすごいな。でもリョー様は回復魔法いらないんだ、これじゃあ、わたし何の役にも立てないんじゃ、どうしようリョー様に見捨てられたらお肉食べれなくなっちゃう。


「よし、素材を回収したらさっさと先に進むぞ」


 あれ、いつの間に話が終わってたんだろ、リョー様に捨てられるって考えてる間に不安になっちゃった。


「ミーシア、今の戦いよくみんなを守ってくれた、この調子で頑張ってくれ」


 そんな、なにも出来なかったし、それに……


「は、はい、でもハル様に怪我をさせて……」


 ごめんなさい、もっと頑張りますから、売り払ったりしないでください。


 リョー様は優しく撫でてくれたけど、どうしよう。





 鍵穴を覗きこんで金具を動かすけど、上手くいかないな、もう何回もやってるのに何でだろう、あっ。


「あ、開きました」


 よかった、今日だけで、いっぱい経験できたのに全然うまくならないよ、なんでだろう。


「よし、入るぞ」


 あれ、今見えた糸って、ひょっとして罠じゃ、いけないリョー様が。


「くっ、ミーシア」


 短い声と一緒に私の体が突き飛ばされて、目の前でリョー様が爆風に巻き込まれる。そんなリョー様が、わたしがきちんと確認しなかったから、練習の時も言われてたのにドアを開けるときは罠を確認してからって、こんな大切なこと忘れるなんて。


「あ、あああ、リョ、リョー様」

「りゃー、だいじょぶ」

「ご主人様、ご無事ですか」


「ああ、多少怪我したが、問題ない」


 リョー様はそう言ってるけど、怪我してないはずないよね、わたしのせいで。


「あれだけの爆発で、それだけですの、非常識ですわ」


 あやまらないと、早く謝らないと、リョー様に怒られる、ううん、このままじゃ捨てられちゃう。


「あ、あのリョー様、ご、ごめんなさい、私がドアの向こうを調べなかったせいで、ど、どんな罰でも……カッ、ハッ」


 首輪が締まってきちゃった、そうだよねわたしのせいでご主人様が怪我しちゃったんだもん、苦しいけど、役立たずだって捨てられるくらいならこのまま……


「罰を与えるつもりはないから安心しろ、それよりもなぜ失敗したのかを考えるんだ」


 首輪が緩んだけど、どうしてリョー様は怒らないんだろう。じゃなかった、今考えなきゃダメなのはリョー様に言われた事だよね、出来なかった理由は。


「そ、それは私がノロマでグズだから……」


「そうじゃなくてだな……」


 だって他に理由が思いつかないし、習ってたのにできないなんて、やっぱりわたしはダメな子なんだろうな、いっつも言われてたし。


「私のせいで、リョー様に大怪我……」


「大丈夫だ、このくらいの怪我ならすぐに治る」


「あ、わ、私が治します」


 せめて回復魔法だけでもしっかりやらないと。


「そうだな頼む」


「は、はい……」


 スキルを使って出血を止めていくけど、それよりも速く他の傷がふさがっていくし、あんなに綺麗に治すなんてわたしじゃできない、これがリョー様の『魔道具』の力なんだ、わたしって回復魔法も役立たずだな。


「ありがとう、助かった」


「はい、ご、ごめんなさい」


 余計なことしてごめんなさい、回復魔法なんてやってもやらなくても一緒だったのに。




「ん、何か物音がしなかったか」


「気のせいじゃありませんの」


 ハル様は気付かなかったのかな、わたしも聞こえたしそれに匂いも。


「あ、あの、私も聞こえました、変なにおいもします、き、金属のにおい」


「わたしも聞こえました、廊下からですね」


「俺が様子を見てくる、休んでてくれ」


 リョー様が立ち上がって外に出ていくけど、ほんとは私がやらなきゃダメなのに、また言い出せなかった、盗賊なのに。


「できましたよ、ミーシアちゃん」


 料理をしてたサミューさんが声をかけてくれたから、わたしは慌てて食器に盛り付けていく、また考えて呼ばれるまで気付かなかったな。サミューさんも呆れてるのかな。


「それにしても遅いですわね、廊下に出て見渡せば異常の有無は解りそうなものですけれど」


 そういえばそうだよね、リョー様どうしたんだろう。


「食らえ」


 リョー様の叫び声と一緒に金属を打ち合わせたような大きな音が、ひょっとして戦ってるのかな。


 あ、慌てて立っちゃったからお皿がひっくり返っちゃった、せっかくサミューさんが作ってくれたのに。


「ご、ごめんなさ……」


「いいのよ、それよりハルさんが先に行ってしまいましたし、わたし達も」


「は、はい」


 そうだよね、まずは魔物をどうにかしないとリョー様が、何で私こんな優先順位もかんがえれないんだろう。


「今の音はなんですの」


「ハル、加熱と冷却の魔法を交互にぶつけろ」


 リョー様の前には鎧姿の敵がわたしも行かないと。

 

「サミュー、アラをつれて距離を取れ、ミーシアは三人を守れ」


 リョー様が指示を出しながら連続で攻撃をしているけど、鎧にはあんまり効いて無さそう、そんなリョー様でダメなの。


「逃げるぞ、俺が鎧を引き付ける、ミーシアを先頭に後ろを突破しろ」


 ひょっとしてリョー様が殿になるのかな。だめだめ、考えるよりも言われた通りにしないと、このままじゃ挟み撃ちにされちゃうし。


「ミーシア、盾を使って蝙蝠を突っ切れ、みんなはそれに従え、魔法も蝙蝠に使うんだ」


「は、はい『盾突撃』」


 盾を構えて、一気に走り出して、当たる魔物を弾き飛ばしていくけど、小回りの利く蝙蝠じゃ避けられちゃう、当たった魔物は殆ど倒せたけど。


 回り込んでサミューさんやハル様の方に行っちゃう、これじゃあ防ぎきれないよ。


「まりゃくが、まうないよー」


「焔よ、我が風に乗りて燃え上がれ、敵をその……きゃっ」


 ハル様たちが狙われてる何とかしないと。


「どいてください、アラちゃんに近づかないで」


 サミューさんと二人で剣を振り回して蝙蝠を倒していくけど数が多すぎるよ。


「がんばりゅ」

「道をお開けなさい、呪文さえ唱えられたのなら」


 アラ様やハル様も剣で戦ってるけどこれじゃあ。


「ご主人様」


 サミューさんの悲鳴でリョー様のほうを見ると鎧の剣に切られてる。


 このままじゃリョー様が、わたしが突破できなかったからリョー様も逃げられないんだ、これ以上足手纏いになんて成れない、さっきのハル様みたいにわたしも。


『盾突撃』でリョー様の近くまで移動して『獣態』に変身する。


「ミーシア、どうした」


「わ、私が鎧と戦います、あ、あああ、ガアアア」


 リョー様の大きな剣も効かないような相手だけど、白熊の力なら時間を稼ぐくらい、その間にリョー様達が蝙蝠を突破してくれれば。


「ガアア」


 体当たりをして手前の二体を弾き飛ばす、思ってたより軽いかな、これなら力で何とか抑え込めるかも。


 近くにいた一体にもう一度体当たりして壁に押し付ける、あれ潰れちゃった鎧のおかげかな、刺があるから穴も開いたし、もう動かないよね、うん大丈夫そう。


 次は、右手を振りかぶって金属製の爪を思いっきり振り下ろす、防ぐために掲げられた剣を折って兜に食い込む。


 あれ、右手が床に食い込んでる。防がれると思ったのに、目の前にいた鎧は兜が完全につぶれて胸から腰まで縦に分断されてる。


 この爪凄い、初めて使ったけどこんなに強力だなんて、いいのかなこんなに良い物を私が使ってて、リョー様に感謝しないと、でもこれなら勝てるかも。


 さっき体当たりした二体が同時に向かってくるけど、リョー様から貰った爪が有れば怖くないから。


 左手を真横に思いっきり振ると先に当たった一体はお腹の所で千切れて、もう一体はすごい勢いで吹き飛んで壁に衝突して潰れる。


 倒せた、わたし一人で夢じゃないよね。後は一体だけ、これを倒したらリョー様の手伝いに行ける。


 あれ奥から何か来る、あれは狼かなまた敵が増えちゃう、来る前に鎧だけでも倒しておかないと。


 両手を同時にふるって最後の一体を左右から同時に殴りつける、バラバラになっちゃった、この鎧ずいぶん脆い気がするけど爪がすごいだけかな。


 いけない考えるのは後にしないと、狼がもう近くに来てるしリョー様達の方に行かせないようにしないと。


 思いっきり振り下ろした右手が避けられて、地面に食い込んだところを噛み付かれる。


 痛っ、くない、鎧のおかげかな、それとも何か魔法かな。毛皮に噛み付かれてるけどあんまり痛くない。


 お腹に食いついてきた狼にもう一度爪を振るけどやっぱり避けられちゃう、噛み付こうとしてもやっぱり避けられちゃう、やっぱり私がとろいせいかな。


 あ、後ろから誰かきた、リョー様だひょっとしてもう向こうの蝙蝠を倒したのかな。わたしじゃ全然倒せなかったのにやっぱりリョー様はすごいな。


 リョー様が剣を振るって狼を追い込み足止めしてくれてる、これならわたしでも。


 振り下ろした一撃が狼の頭を潰して倒した、ひょっとしてリョー様はこうやって私に経験させてくれてるのかな、罠や鍵の解除もそうだったし。


 もしかして、鎧を足止めしてわたし達に蝙蝠の相手をさせてたのも、小さな相手を倒す練習をさせるためだったのかも。そうだよねリョー様ならあんな脆い鎧なんて簡単に倒せただろうし。


 考えてる間に狼全部倒せてた、わたしだけだったらあんなに大変だったのにリョー様が支援してくれるだけでこんなに簡単に。


 やっぱり、リョー様は考えが有ったんだろうな、それなのにわたし勝手に判断して命令違反しちゃった、おこってるかな。


「ご、ごめんなさい、リョー様の命令を勝手に……」


 あ、また首輪が締まって。


「ミーシアありがとう、おかげで助かった、よくやった」


 首輪が緩むけどいいのかな、わたしは命令違反しちゃったしそれに。


「だ、だけどリョー様が怪我……」


「たとえ鎧が居なくても、あの状況では他に方法は無かった、ミーシアのせいじゃない」


「その通りですわ、自分の『魔力回路』の容量を超えた術を使えば暴走して当然ですもの、その男の自業自得ですわ」


 わたしはハル様みたいには思えないよ、だって私が鎧に行っちゃったからリョー様は蝙蝠に魔法を使うことになったんだし、でもこれ以上謝ってもリョー様が困っちゃうのかな。


「これだけ倒せば近くに魔物はいないだろ、休憩し直そう」


「あ」


 なんで、こんな時にお腹が鳴っちゃうの、リョー様が許してくれたのにまた怒られるかも仕事しないで食べてばっかりなんて、それに女の子がこんな音させるなんて……


「サミュー食事は」


「申し訳ありません、ひっくり返してしまいまして、これから作り直さないと」


「わたくしは遠慮させていただきますわ、疲れて食欲が有りませんの」


 みんな食べるつもりじゃないのに、このままじゃ私だけの為にサミューさんが料理することになっちゃう。


 そうだ、生肉だったら誰にも迷惑かけないかも。


「だ、大丈夫です」


『獣態』に戻って狼の死体にかぶり付く、肋骨ごと胸肉を齧り、お腹に鼻先を突き入れて内臓を食べていく。


 お肉美味しいな、新鮮な臓物なんて奴隷になってから初めて食べたかも。


 焼いたらもっと美味しいかもしれないけど、でもこんなにいっぱい食べられるなんて幸せ、じゃなかったお肉を食べる事だけが目的じゃないんだから。


「リョ、リョー様、わたしが見張りますから休んでください、怪我もしてるし」


 多分、起きたままじゃリョー様は我慢しちゃうだろうし、回復魔法を使わせてくれないかもしれないし。


「あ、わたしだけじゃ頼りないですよね……」


 そうだよね、今日だけでもいっぱいドジしてるのに、一人前に見張りやりますなんて。


「いや、そんなことはない、休ませてもらおう、何かあれば起こしてくれ」


 リョー様は寝たみたいだけどみんなは起きてるのかな、サミューさんがリョー様を膝枕してる。


「ミーシアちゃん、食べ終わったの」


「あ、はい取りあえずは」


 ハル様は焚き火の番をしてるし、アラ様はサミューさんの隣で心配そうにしてる。リョー様の包帯はやっぱり血がにじんでる。


「みーちあ、おなかいっぱい」


「え、えっとそういうわけじゃないけど」


 リョー様の近くに行って『止血・鎮痛の指先』を使う。


「回復魔法なんてかけるだけMPの無駄ですわよ、『魔力回路』の暴走でできた傷は簡単には治りませんもの」


 ハル様はそう言うけど、だから私がやらないと、わたしのせいなんだから。


「ミーシアちゃんはご主人様が心配なんですね、でも無理はしないでね」


「サミュー何を仰ってますの、ここは『迷宮』ですのよ体力も魔力もいざという時の為にとって置かないといけませんのに、治らない傷の為にMPを使うなんて止めるべきですわ、ただでさえ回復魔法はミーシアしか使えませんし」


 ハル様の言う事は正しいけど、でもリョー様をこのままにしとくなんて。


「それでも、多少は痛みが減るんでしょう、わたしはこうして多少寝やすくする事しかできないですから、それにミーシアちゃんも納得しないでしょう」


 サミューさんの言うとおりだよね、リョー様は少しでも痛くない方が良いだろうし、それにわたしのせいだもん。


 指先に魔力を込めて傷口をなぞっていく、いつもみたいに塞がっていかないけど少しだけ傷が小さくなったかな、このまま続けて行けば。


 魔力を籠め続けて傷をなぞっているうちにだんだん瞼が重たく、お腹もすいてきたし。


「おやめなさい、それ以上やれば『魔力枯渇』を起こしますわよ」


 ハル様の言葉に慌てて魔力を抑える。枯渇しちゃったらもっとリョー様に迷惑をかけちゃうし、これ以上の回復が出来なくなっちゃう。


「ちょ、ちょっとお腹が空いたんで、外にいってきます」


「え、ミーシアちゃん、さっき食べたばかりなのに」


「まう、ぺこぺこなお」


「は、はい魔力を使ったからかもしれないです」


 魔物のお肉にはMP回復効果があるから、わたしは大食いだし、いっぱい食べればまた回復魔法が使えるはずだから。


「何をやっていますの」


 後ろから声をかけてきたのは、ハル様だ。


「えっと、お腹が空いたから」


「嘘をおっしゃい、いくら貴方でも狼二頭分も食べてこんなにすぐお腹が減るわけないでしょう、それもわざわざ『獣態』までとって」


 確かにお腹は減ってないけど、頑張ればまだ食べれるし、それにわたししかできないし。


「解ってるのでしょう。あなたのスキル程度ではあれだけの傷を癒す事なんて出来ませんわよ」


「で、でも、わたししかできないし、それにリョー様が痛そうだし、これくらいしかできないし」


 ため息をつくハル様をずっと見ているのは怖くてできないけど、それでも顔だけはハル様のほうを向いて何とか答えるけど。


「もしも出血を止める事が出来ても、そんな事をすれば体を壊すかもしれませんわよ」


「わ、分かってます、でも白熊族は獣人でも丈夫な方だし」


 ハル様がまたため息をつく、お、怒られるかな、怒鳴られたらリョー様起きちゃうかも。


「分かりましたわ、好きになさい、ですけれど体を壊すような無理はしないでちょうだい、あなたが倒れたらみんなが困るのですから」


「は、はい分かりました」


「サミューとアラを眠らせておきますわ、誰かに見られてると貴方も集中できないでしょうし」


 ハル様に見守られて何回も回復魔法を使っているうちに、だんだん傷の治りがよくなってきたような気がするけど。


 それに、魔法で光ってるのが指先だけじゃなくて指全体が光ってるような。


「お待ちなさい、その指は先ほどと違いませんこと」


 やっぱりハル様もそう思うのかな。


「ミーシアこの傷にそのスキルをかけてみてちょうだい」


 ハル様の腕についた傷は、少し前に蝙蝠に噛まれて止血したところだよね。まだ跡が残ってるけどわたしのスキルじゃこれ以上治せないのに。


「いいからやってみなさい」


 怒られる前にやった方が良いかな、でも何ともなかったら、それでもやらなくちゃダメだよね。


「あれ、おかしいな」


 傷跡が治って行ってる、こんなことって。


「どうやら、あなたのやる気は無駄ではなかったようですわね。おめでとうミーシア、多分新しいスキル『創傷回復の指』を使えるようになったのですわ」


 新しいスキル、複数職の私が覚えるのは難しいはずなのに、こんなに早く覚えれるなんて。


 それにハル様が誉めてくれた、こんな私なのにおめでとうって。


「あ、ありがとうございます」


「けれど回復は後二、三回にしておきなさい、新しいスキルを急に使いすぎるのはよくありませんし、それに魔物の肉もそんなに残っておりませんでしょう」


 少し笑ったハル様に頷いてから、またリョー様の手に回復魔法をかけ始めた。






「あ、暑い……」

 

 額に浮いた汗を手拭で拭くけど、すぐに新しい汗が湧いて来ちゃう、アラ様の魔法で少しは涼しくなるけどそれでも暑い。


 寒いのだったらいくらでも我慢できるけど暑いのは……


 リョー様は『蝙蝠の館』でも『薬師の森』でもあんまり稼げなかったみたいで、ユニコーンの角を取るためにこの『迷宮』に来たって言ってたけど、いいのかなユニコーンさんと喧嘩になるんじゃないかな。


 でも、リョー様の命令だったら、わたしは頑張って戦わないと。


「ああ、かき氷もいいか」


「なんですのそれは」


 聞いた事のないリョー様の言葉にハル様が聞き返してるけど、わたしも気になるかな、冷たい食べ物の話をしてたし氷って言うんだから冷たいんだろうな。


「ああ、俺の地元の食べ物だ、冷たくて甘い食べ物だ」


「冷たくて甘い……」


 そんな食べ物があるんだ、お肉も好きだけど、甘いものも美味しいよね、ハチミツとか一回しか食べたことないけど今でも覚えてるし。


「そうだ、いろんな種類があってな、イチゴ、メロン、ブルーハワイ、レモン、オレンジ、マンゴー……」


 いっぱいあるんだな、聞いた事のある果物の名前もあるけど知らない名前もいっぱい、リョー様は偉い人みたいだから珍しいものも食べたことあるんだろうな。


「小豆、抹茶、練乳、みかん、しろくま、それと」


 え、い、いまなんていったの。


「し、しろくま」


 き、聞き間違いだよね。

 

「ああ、甘い練乳をたっぷりかけてな、上に果物とか甘く煮た豆を載せて食べるんだ」


 お肉に甘いものかけるなんて聞いた事ないけど、もしかしたら貴族様にはそんな食べ方があるのかも。


「ご、ご主人様はそれを食べられるんですか」


 もしかして、食べる為にわたしは買われたのかな。


「そうだな、夏には毎年よく食べたな、このくらいの小さなカップに小分けにしてあるのが売っててな」


「ひっ」


 そんな、毎年食べてるなんて、じゃあやっぱり、食べられちゃうのかな、もしかして今までいっぱいお肉を食べさせてくれたのは、太ってた方が美味しいからなのかな。


「そんな非常識なことが、まさか、わ、わたくしもですの」


 あ、ハル様も私と一緒に買われたんだから同じ理由なのかな、でも……


「わ、わたしは、リョー様の命令なら……、でも、できたら痛くないように一撃で止めを……」


 そうだよね、リョー様に買ってもらえなかったらきっと毎日怒鳴られて鞭で殴られてただろうし、最後に美味しい物たくさん食べれたし、楽に死ねるならリョー様に食べられるのもいいのかな。


 役立たずの私でも、おいしく食べてもらえたら。


 あれ、リョー様が変な顔してるけどどうしたんだろう。


「いや、俺の説明が悪かった、かき氷とは細かく砕いた氷に果物の汁なんかをかけた食べ物で、シロクマというのも練乳をかけて具を載せた氷が白熊の顔に見えると言うだけで、肉類は一切使っていない」


 え。


「それはほんとうですの、わたくし達を油断させるためではないでしょうね」


 そ、そうだよね、優しいリョー様がそんな怖いことするわけないよね。


「あ、安心しました」


 わたしったら、早とちりして、勝手にリョー様の事を怖がったりして、だめだなもう。







「崖崩れだ、逃げろ」


 リョー様の叫び声に気付いて上を見上げたら大きな岩や土がどんどんこっちに落ちてきてる。


「くっ『岩壁結界』早くここまでいらっしゃい」


 ハル様が魔法で防壁を作って土砂を防ごうとしてる、あそこまで行かないと。


 サミューさん達やリョー様はもう防壁についてる、わたしは遅れてたから、まだつけない。


 わたしのばか、いくら暑いからってこんなに遅れちゃって、またリョー様達に迷惑かけちゃって。


「ミーシア、お急ぎなさい」


「もうちょっと」


「ミーシア、武器と盾を捨てろそのままじゃ間に合わないぞ」


 リョー様はそういうけど、この剣も盾もリョー様がわたしに買ってくれたのに捨てるなんて。


「せっかくリョー様から、貰った武器なのに……」


 がんばって走れば間に合うかな。


「ミーシア」


 思うように足が動かない、これじゃあ間に合わない、もう土砂は目の前にあるのに。


「こ、こうなったら」


 リョー様のくれたこの盾ならきっと防げるはずだよね。


「くうう」


 大きな岩が当たるたびに盾から衝撃が来るけど、この位なら十分耐えられるかな、そんなに重たくないし。


「ミーシアも非常識ですわ」


 ハル様の声が聞こえるけどどうしたんだろう。


「いえまだです、あの岩が」


 サミューさんの指差す先には大きな岩が、でもさっきの岩の重さを考えたら多分耐えれるかな。


「魔法の規模に『魔力回路』が耐えられずに発動しなかったみたいですわね、もし発動していればその程度の怪我ではすみませんわ」


 ハル様の声がして、そっちを見たらリョー様の腕が血まみれに、もしかしてわたしを助ける為に魔法を使ったの、そんな私のせいでリョー様が怪我を、また足手纏いになっちゃった。


 こうしてる間に大きな岩が目の前に。


「うわああああ」


 盾を両手で構えて岩に向ける。これを堪えなきゃリョー様がまた心配しちゃう。


「なんて非常識なのかしら、こんな事って」

「ミーシアちゃん、すごいわ」

「大丈夫か、ミーシア」

「みーしあ、おもいー」


 皆さんが心配そうな声をしてるけど、これなら大丈夫ちょっと重たいけど。


「だ、大丈夫です、このまま耐えれば何とか」


 だんだん土砂の量が少なくなってきてるかな。


「く、もうちょっと」


 もうちょっとなのに、足元が上手く踏ん張れない、このままじゃ崩れちゃう。


「ミーシアその岩をどうにかして崖下に落とせないか」


 そ、そうかずっと持ってるから足元が崩れていくんだから、落としちゃえば。


「や、やってみ、きゃああ」


 足元が崩れて、せめて岩だけでもなんとかしないと。


 落ちて行きながらなんとか先に岩を落とす、だけどどんどん土砂に流されてってる、これで終わりかなこのまま死んじゃうのかな。


 落ちるのが止まったけど、これって半分埋まったせいかな、このままだと飢え死にかないやだな、お腹すくんだろうな。


「ミーシア」


 え、この声ってもしかして、でもそんなはず、わたしなんてただの奴隷だし役立たずだしリョー様が助けに来るはずなんて。


 なのになんでリョー様がここにいるの。


「リョ、リョー様、危ないです、戻って」


 リョー様が飛び跳ねながらこっちに来るけど、そんな危ない事。


「リョー様、どうして」


「待ってろ今助ける」


 すぐ近くまで来たリョー様がわたしの手を掴んで引っ張ろうとするけど、足に力を込めた瞬間に地面が崩れ出してる。


「リョー様」


 このままじゃリョー様が流されちゃう、慌てて手を伸ばしてリョー様の手を掴む。


「な、流れが落ち着くまで、私の上に乗っててくださ……」


 わたしは埋まってるからこのくらい崩れても何ともないから。


 流れが収まってからリョー様がわたしの足元をほりかえしてくれる。


「大丈夫かミーシア」


「は、はい何ともないです」


 でもこれからどうするのかな、わたしじゃこんな崖は昇れないし、リョー様だけなら戻れるのかな。


「仕方ない、一度下まで下って道を探そう」


 やっぱりリョー様でも無理なんだ、わたしのせいでまた迷惑かけちゃった。


「は、はい、ごめんなさいわたしのせいで、あ、リョー様、け、怪我を」


「大丈夫だ、大したことはない、それより暗くなる前に休めるところを探すぞ」


 首輪が締まりかけたけどリョー様の言葉で、いつもみたいに緩んでいく、いいのかなこんなに迷惑ばっかりかけてるのに。


「そ、その前に治療を……」


「必要ない、俺はこんな状態だから、しばらくの間はミーシアだけが頼りだ、MPと体力は温存しておけ」


 そんな、リョー様はこんなに痛そうなのに、でも命令だから。


「は、はい、わかりました」





 何とか休めそうな洞穴を見つけてリョー様を休めてから、すぐに食べ物を探しに来たけど。


 魔物が飛びかかってくるのを爪で切り裂く、『蝙蝠の館』ではこういう素早い魔物は苦手だったのに、いつの間にか倒せるようになってる、リョー様のおかげでわたしも強くなれたのかな。


 リョー様はユニコーンさん達に食べ物あげちゃったから何も食べるものが無いはずだし、果物を探さないと。


 そうだ魔物の採集部位を持って帰らないと、わたしの倒した魔物はリョー様の物だからリョー様の所に持ってかないと、お肉は食べてる時間ないよね。


『獣態』ならいつもより鼻が利くから何か果物が見つかると思ったけど、なんだろうこの匂い嗅いだことないけど。


 探した先には緑色の細長い実があるけど、見た事ないかな、これが食べれればいいけど、すごい嫌な匂いがするな。


 一口食べてみよう。


「かっ辛い」


 こ、こんなに辛いの初めて食べたよ、こんなのリョー様には食べさせられない、似たような大きい実もあるけどこれも多分辛いんだろうな、他に食べれそうな木の実は無いし、これ以上探しても見つからないかな、あんまりリョー様を一人にするのも心配だし。


「リョー様、ご、ごめんなさい、なにも食べ物が見つかりませんでした」


 ほんとなら怪我してるリョー様に栄養を取ってほしかったのに。


「気にするな、魔物は居たか」


「はい、何頭か倒して採集部位を取って来ました」


 リョー様がお肉を食べられたらいくらでも取って来るのに。


「肉はどうした」


 え、ひょっとして怪我してるからお肉を食べるつもりだったのかな、それとも干し肉にして売るつもりだったのかな、わたしったら勝手に判断して。


「リョー様の食事にはできないからそのままに」


 今から取りに戻れば残ってるかな、それとも他の魔物が食べちゃったかも。


「ミーシアの分はどうした」


「そ、そんな、リョー様の食べ物がないのに、わたしなんて」


 食べるわけにはいかないよ、だって怪我してるのはリョー様だし。


「俺の事は気にせず食べろ、ミーシアまで倒れたら大変だろう、アイテムボックスに干し肉があっただろう」


 それはそうだけど。


「で、でも」


「食べなさい」


 強く言ってくるリョー様の目を見る、息は上がってるし目の力も弱いやっぱりダメージがあるんだ。


 もしリョー様が動けなくなっても、わたしが絶対にサミューさん達のとこまで連れて行かないと、だからこのお肉を食べなきゃ。


「わかりました、あれ、こ、この臭い」


 少しだけだけど、丸ごと焼いたお肉みたいな匂い、血が焦げていくときの匂い、こんな匂いが何処から。


 リョー様のほうから、わたしの居ない間に何か問題があったんじゃ。


「リョー様、ごめんなさい」


 リョー様の左手の袖をまくって包帯の匂いを嗅ぐ、やっぱり匂いはここから、でもなんでこんなところから焦げた匂いが。


 そう言えば、あんなに強かった血の匂いが弱くなってる、わたしが出ていく前は少しずつ流れてたのに。


「リ、リョー様まさか」


 傷口を焼いたんですか。


「血止めをしただけだ気にするな」


 そんなの、すごく痛くて熱いはずなのに、それもこれも全部。


「ご、ごめんなさい、わたしがもっと『回復魔法』が使えてたら、リョー様の言う通り剣と盾を捨ててたら」


 あの大岩を砕くために魔法を使おうとしたせいでリョー様は怪我をしたんだし、全部、全部私のせいだ。


「気にするな、それだけその武器を大切に思ってくれてるんだろ、それに捨てても間に合わなかったかもしれないし盾がなければあの岩は防げなかった、持っていた方が良いというミーシアの判断が正しかったんだろ」


「そ、そんな、あ、『回復魔法』を」


 魔力暴走の怪我は無理だけど火傷ならきっと治せるから。


「大丈夫だ、鎮痛の薬草を使ったから痛みは治まってるし、少しずつだが『魔道具』の回復効果もある」


 リョー様の持ってた薬草って確か、あれは。


「あの薬草を、あ、寒くないですか、あの薬草は体温を下げる副作用が……」


 リョー様の体がだんだん震えだしてる、薬草が効いてきたんだ、それに多分出血のせいもあるのかなこのままじゃ。


「リ、リョー様大丈夫ですか」


「だ、大丈夫だ、薪も足したししばらくすれば」


 どんどんリョー様の震えが強くなってる、焚き木もこの頻度で使ってたら朝までもたないかも、これじゃあリョー様が凍えちゃう。


 温める方法は、何とかリョー様を温めないと、そうだわたしの毛皮なら、でもそんな抱き着くなんて。


「だ、大丈夫、リ、リョー様のためだもん、恥ずかしくない、恥ずかしくない」


 うん大丈夫、今までさんざん迷惑をかけて来たんだもん、この位役に立たないとダメだよね。


「リ、リョー様、わ、わたしが温めます」


「ミーシアの毛布を貸してくれるのか、自分で使いなさい」


「そうじゃなくて、わたしの体を使って温まってください」


 今晩だけは、わたしがリョー様を守ります。


「ミーシア、気持ちは嬉しいが、もっと自分を大事に……」


 わたしは、リョー様の奴隷なんだから、そんなこと言わないでください、わたしをリョー様の役に立てさせてください、あれなんで涙が。


「わ、わたしには、このくらいしか出来ないし、いつもリョー様の足手まといになってばっかりで、だから、せめて……」


「ミーシアには助けられてる、足手まといなんて思ってはいない」


 そんな事ないのに、リョー様だってダメな奴隷だと思ってるはずなのに何でこんなにやさしいの。


「リョー様……」


「だから、今回も俺を助けようとしてくれてるんだろ」


 今回もじゃなくて、今回はです、あ、リョー様が頭を撫でてくれてる、やっぱり気持ちいいな。


「ありがとうな、すまないが寒くて仕方ない温めて貰えるかミーシア」


「はっはい」


 とりあえず、毛布を用意して、それから武装したままじゃまずいからアイテムボックスの獣態用装備を出しておいて。


「ミーシアどうしたんだ、そんな事をして」


 よし準備が出来たから後は変身して。


「あ、ああそうかそうだよな、当たり前だよな、何考えてたんだろ俺は」


 あれ、リョー様が変な顔してる、さっきまでの苦しそうな感じとは違うけど、ちょっと気が抜けたような少し残念そうな、どうしたんだろう。


 それよりも早く温めないと、リョー様の隣に横になって体重がかからないように注意しながら抱きしめていく。


 間違って爪を立てたりしないようにしないと。


「あ、あのリョー様、苦しくないですか」


「大丈夫だ温かくて気持ち良い」


 よかった、これなら朝まで大丈夫かな、その頃には薬草の効果も消えてるだろうし。


「やっぱりちょっと恥ずかしい、です」


 わたしの胸の中にリョー様がいるんだ、心臓がすごいドキドキしてる。


「あ、でも、い、嫌じゃないです」


 そうだよね、ご主人様と一緒で嫌なんてことは無いもんね、何でこんなドキドキするんだろう、リョー様に聞かれてないかな。


「うん」


「あ」


 背中を撫でてくれるリョー様の手が気持ちよくて変な声が出ちゃった、変な子だと思われなかったかな、大丈夫かな。


 もう寝ちゃったかな。


 リョー様に気付かれないように片手を傷口に当てて少し魔力を込める。


 MPを使い切っちゃダメだけどこの位はしたほうがいいよね。


「おやすみなさいリョー様、わ、わたしが絶対に護りますから」






 あ、寝ちゃった見張ってなきゃダメだったのに、リョー様は、よかったまだ寝てる、わたしが寝てたって知ったら怒るかな。


 わたし寝相が悪い時があるけど踏んだりしてないよね。


 痛そうにはしてないし、傷口の匂いも少し良くなってる大丈夫かな。


「あれ、この匂い魔物かな」


 だんだん近くなってきたかな、唸り声も聞こえるし、もしかしてリョー様の匂いに引かれてきたのかな。


「もう暖かいよね」


 朝になって気温が上がって来てるし、これならわたしが離れても寒くないかな。


「わたしが守らないと、一人でも怖くない、わたしがリョー様を守るんだから」


 起こさないように気を付けてリョー様から離れて外の魔物に向かって行く。


 そうだこの魔物を倒して食べればMPを気にしないで回復魔法が使える、頑張らないと。


 


 結局魔物を食べ終わる前にリョー様が起きて来たけど、安全なユニコーンの村に行けたからそこでやっと回復魔法が使えた。


 ハル様には怒られたし、サミューさんには泣かれちゃったけど心配かけちゃったんだから仕方ないかな。






 え、サミューさんが怯えてる、どうしたんだろう。


 また『寒暑の岩山』に戻って来てもう何日もたったけど、何で今回はこんなに冒険者がいるのかな。


 こんなにいっぱいの集団なんて、シルマ様の所で大規模討伐を見送った時しか見た事ないよ。


 あれ、また覚えのある匂いがする、誰だったっけこの匂いさっきからずっとしてるけど。


「知ってる匂いが強くなったかな、あれ、この匂いって確か」


 ハル様に似てるあっこれ。


「ガルおにい……」


 やっぱりガル様だ。


「ハルとミーシアか」


「は、はい、お久しぶりですガルさま」


 ガル様は普段は怖いけど、機嫌のいい時なんかは余り物の食べ物をくれたりしたんだよね、『迷宮』で食べ終わった骨なんかを離れたところに投げてくれたり、奴隷の皆でスープのダシにしたよね。


 何かあると、鞭で殴られた事も有ったけど、たまに食べ物をくれるから我慢できたし、でも。


「ふむ、そこの冒険者、この奴隷共は元々我がシルマ家の物、返してもらうぞ」


 それは嫌だ、リョー様は優しいし殴らないしご飯もいっぱいくれるし、それにわたしだけじゃなくて皆にも優しいから、こんないいご主人様ならずっと一緒にいたい。


 わたしは役立たずで足手纏いだけど……





 投げナイフは狙い通りに飛ばなくて的の外に刺さる。


 やっぱり上手くいかないな、リョー様に言われて投擲の練習してるけどどうしても当たらない。


 盗賊なら出来て当たり前なのにやっぱり向いてないのかな罠の解除も失敗したし。


 ううん、それじゃだめリョー様にやるように言われたんだから頑張らないと。


 わたしの事を手放さないでいてくれたんだもん、リョー様に見捨てられないようにしないと。


 明日はボス戦だって言ってたけど、頑張らないと絶対にリョー様に迷惑をかけないようにして。


 でも大丈夫かな、ボスって強いんだよね負けちゃわないかな。


 ダメダメ、戦う前から不安になっちゃってたらまた足手纏いになっちゃう、良い事考えないと。


 そうだボスって言うんだからやっぱりお肉も普通の魔物よりも美味しいのかな。


 きっとそうだよね、うん頑張って倒して一口だけでも食べさせてもらおう。


 だから今はナイフ投擲の練習をしっかりやらないと。


 リョー様のために頑張らないと、もうすぐごはんが出来るからそれまでに一回だけでも真ん中に当てないと。




 明日も美味しいお肉が食べれるといいな。


 明日はリョー様の足手纏いにならないといいな。


ミーシアは自己評価が極端に低いですがガチンコの殴り合いならパーティーで一番強いです。


今ハル編を書いてますが、こっちも長くなりそうな予感が……

しかもミーシアの所と被るシーンもあるし。

一つのシーンで色んなキャラの内面を入れようとすると何回も繰り返さなきゃならないってのは一人称の欠点なのかも、三人称なら一度にみんなの心理状況かけそうだけど……今更ですね。


H27年2月5日 誤字、句読点修正しました。

H27年3月6日 過去の分との相違点を修正しました。

H27年3月16日 誤字修正しました。

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