47 領主館にて
また後半が説明帳になってしまいました……
「それは多分、亡骸の角だろう」
ユニコーンの長老が、お茶を飲みながら答える、俺が到着してから呼び出されたらしいけど、ずいぶんこの館に慣れてるなー
あ、御菓子をお代わりしたよ、でも亡骸って。
「我らがあの『迷宮』に移り住んでから数十年は経っておる、その間に亡くなった者は、集落の外れに埋葬されておる、そこを掘り起こせば」
その分の角が手に入るってわけか、だけどなー墓泥棒ってのはちょっと、どうなんだ、祟ったりしないのかな、いやそれは無理やり角を奪い取られても一緒かな。
「それなら、犠牲者が出たわけじゃないのか」
よかった、ユニコーン達に何かあったらもうどうしようかと思ったよ。
「それがな、そうでもないんだよ」
カミヤさんが、機嫌悪そうに言ってるって事は何かトラブったって事なのか、やだな。
「何か問題があったんですか」
ああ、やだなー嫌な予感がプンプンするんだけど。お願いですからこっちに火の粉が飛んできませんように、てか敬語使うの久しぶりだからなんか慣れないな。
「ああ、ラーンの部族と交流のある他のユニコーン達にも声をかけてたんだが、そのうちの幾つかが、すでに冒険者に襲われててな、結構な数がさらわれてる」
まじか、てことは救出ミッションなのか、うわー、でも仕方ないのかな今回は伯爵が兵力出してくれるんだろうし。
「という事は助けるんですね、どこで襲撃するんですか」
「それが出来れば楽なんだがな」
あれ、ちがうのか。
(お主も随分と好戦的になったものじゃの)
ほっとけよ。
「上級の冒険者が何人か絡んでいるようでな、下手に仕掛ければこっちの被害が大きい」
そんなに危険なのかな、勇者のカミヤさんに『成長補正』で育てた精鋭がいれば楽勝じゃないのかな。
(鍛え方次第で冒険者の強さは千差万別とはいえ、上級ともなれば最低でも百人力と言われるからの)
うわ、そんなに強いんだ、あれ、でも俺なら……
(あの程度の小物を何十人倒したところで、上級を相手にするのはまだまだ……)
そうですかそうですか、どうせ俺は脆弱ですよ。
「それでだ、奴隷として買い取りを打診しているが、今現在の価格を考えると全員を買うには予算が足りない、二、三年前の市場価格ならギリギリ間に合ったんだが」
角の価値がユニコーン自体の価値よりも上がってるって事か、まあ金貨200枚だもんな、あれ、でもそれなら。
「そうだ、高すぎて買えないなら、買える値段にまで落としてやればいい」
そうだよな角の価値を失くせばいいんだよな。
「早々に万能薬を使ってリューン王国の王族を治せば、ユニコーンの角の買い取り先は無くなるってことですか」
「そうだ、今の事態さえ解決すれば角一本の平均的な市場価格は金貨40枚程度、しかも禁制品だから大量に売り買いすることは難しいし、長期間持ち歩けば逮捕される危険もある」
「そこを買い取ろうってわけですか」
一気に五分の一か、それなら手が届くって事か。
「いいや、買い叩くんだ、向こうにとっちゃ、持ってるだけで危険なブツだ、早く手放したくてしょうがないだろうし、俺らの他に早期に大量購入してくれるような当ては無いだろう。俺の使いに舐めた口を利いてくれたんだ、徹底的に買い叩いてやる」
カミヤさん、笑顔が怖いですよー
「とは言え、ヤッカが濃縮を終えるまでは後二、三日はかかる、量が量故な」
う、まあ百五十樽だもんな、食べるだけでも一苦労か。
「それでだ、ユニコーン達がレイドの街へ連れ込まれる前に万能薬を届けたいんだが、手駒が無い。領軍や子飼いの冒険者はユニコーン達の警護や護送で手いっぱい、使者に出せるような文官も護衛なしで高価な薬を運ばせるのは盗賊に襲われる危険がある」
てことは俺の役目は、運び屋って事ですか。
「わかるな、物が出来次第、出来る限りの速度でレイドまで届けてもらいたい」
まあそれなら危険はないだろうし受けてもいいか。
「いいですよ、馬車しかないですがそれでよければ受けます」
「必要なら馬を貸し出そう」
いや、乗馬なんてわかんないんだけど、ラクナに教わるしかないかな。
話が決まって長老が帰っていくけど、俺ももう退室した方が良いのかな、あ、そうだ。
「報告が遅くなりましたが、マイラス達の事なんですが」
「話は聞いている、領内の村で娘が二人殺されたそうだな」
「そうです」
やっぱり通報しておかないとね、これでなんとか……
「何ともならんよ」
はあ、マジですか。
「相手は他国の貴族だ、俺の権限だけでは処分できない、家を焼かれたとか、略奪したとか言うなら侵略行為として軍を出せるが、数名殺されただけでは、厳重抗議と領外追放が限界だ」
まじっすか、二人も殺しておいてそれだけって、どうなってるんだよ。
(仕方あるまい、正当な権限なく他国の貴族を殺せば。今度はアキラが周辺国より攻め込まれることになるかもしれぬ)
そうですかい、奴らはまだこの町でのうのうとしてるってのにな。
(追放だけでも、実際の所ではマイラスやその関係貴族との関係は一気に険悪になるゆえ、そう簡単には出来ぬじゃろう)
うーん、それじゃあ、もしかしたら奴らはこのまま、何日も街にいる可能性があるのか、すぐに出発するって言ってたけど実際にどうかは解らないからな、となるとやっぱりこれはまずいな。
「そうだ、うちの奴隷達をこの館に留めたいんですが許可してもらえますか」
そんな状態で、あの子達を街に置いとくのは危険すぎるもんな。
「それは構わんが、何かあったのか」
「マイラス達と『迷宮』で遭遇しましたが、うちの子と面識のある冒険者が居るらしくてトラブルの可能性が有るので」
「『うちの子』かパーティーメンバーを大切にしているんだな」
「当たり前じゃないですか仲間を大切にするのは普通でしょ」
「こっちではそうでもない、『勇者』の中にはゲーム感覚でパーティーメンバーを安易に切り捨てる者もいるし、貴族などは奴隷や平民を使い捨てにするなんてことはざらだ」
まあ、あの様子を見るとなんとなく解るけど、でもあるんだそんな小説みたいなこと。
「そんなものですか」
「仲間は大事にして置け、『迷宮』でいざという時に助けてくれるのはパーティーの仲間だけだぞ」
真面目な表情で此方を見ていたカミヤさんが、急に口許を歪め、懐から紙製の扇子を取り出して、それを隠す。
「して、例の物はどうなっておる」
この流れはまさか。
カミヤさんの狙いに気付いた俺も口許を歪めて、アイテムボックスから小箱を取り出す。
「はい、ご所望のお品は滞りなく、とりあえずは此方を」
「はてこれは」
「お代官様がお好きな光る実にございます」
(いやいや、一領の主を代官呼ばわりはおかしくないかの)
全く分かっていない首飾りが何か言ってるが、とりあえず無視だな。
「おおこれは、日の光を弾いて輝いておるわ、ワシはこの輝きに目が無くてのう」
箱の中身を確認したカミヤさんが嬉しそうに頷く。
「バレてはおらぬかの」
「すべては内々に済ませております」
「そうかそうか、越後屋お主もワルよのう」
「いえいえ、お代官様ほどでは」
(お主らは一体何を話しておるのじゃ)
和の心が解らない首飾りは黙っていてくれ、日本人なら一度はやってみたいやり取りをしてるんだから。
「ふっふっふっふっ」
「ふっふっふっふっふっ」
「ふっふっふっふっふっ、ふう」
うーんこれは。
「このやり取り一度やってみたかったが、もう一人正義の味方役が必要だったな」
カミヤさんが残念そうに言っているが、俺も同感だ。
「芸者も必要だったかもしれないですね、こう人間コマな感じで」
「よいではないかよいではないか、アーレーって奴だな、確かにあれも必要だったな」
うん、あれも確かに男の夢だよな、今度サミューにお願い、いやいやそれは危険すぎるよな。
「まあ冗談はこの位にして置いて、これと同じものがどのくらいある」
カミヤさんが指差す小箱の中には『寒暑の岩山』から集めてきたピーマンやパプリカ、唐辛子等がみずみずしく光を弾いている。
「そうですね、全部で樽三つ分と言ったところでしょうか」
「それだけ有れば、種が十分取れるな、何年かすれば俺達が使う分くらいは安定生産できるだろう」
ずいぶん自信満々だなー
「そんなに上手くいくものなんですか」
「ん、そういえば言っていなかったな、俺は向こうに居た頃は農業大学で教えてたからな、まあ日本で作ってた大概の作物の事は解るな」
「それはまた」
ずいぶん『勇者』とかけ離れた職業だなー、まあ俺も人の事は言えないけどな。
「まあ、だから見つけ次第どんどん持って来てくれ」
それは良いけど、そんなことしてた割りにはあんまり農業に力入れてるって噂なかったよな、俺が聴いてないだけかもしれないけど。
「なんだ疑問に思ってそうだな、何で農業改革をしていないのか」
そうだよな、よくある異世界召喚物だといろいろ工夫するよな。
「やってるぞ、とりあえずは農具の更新や肥料の改良なんかはやってるがな、そのほかはチビチビと試験的にやっている程度だ」
なんかずいぶんのんびりやってるんだな、感じ的にはもっと大規模にやっても良さそうな気がするけど。
「農業改革は失敗すると大量に餓死者を出すからな、とある国の躍進し損ねた政策みたいな目はごめんだろ、地質や気候との兼ね合いもあるし、十何年も経つ事で出てくるような弊害もある、そういうのをきちんと確認していかないとな。ゲームじゃないんだ、間違えたからやり直す訳には行かないだろう、領主は領民の生活に責任が有るんだから」
おお、どこかの国の政治家連中に聞かせてやりたいなー
「さてと、話が長くなったな、とりあえず今回の報酬だ」
十数枚の金貨を受け取るが、金貨は使い勝手が悪いんだよな、この世界の貨幣価値だと。
金貨が十万円
銀貨が千円
銅貨が十円
百ずつってのは解りやすいけど、安いものを買う時に少額硬貨が無いと御釣りがとんでもない事になるんだよな。串焼き買う時に金貨しかなけりゃ、銀貨が99枚に銅貨が数十枚だもんな、下手すると釣りが無いと怒られるし、もっとこう……
「十倍価値の大銀貨とか十分の一の小金貨とかないんですかね」
うん十ずつだったらやりやすいよね、結構そう言った設定の小説もあるし。
「使いづらいだろそんなの」
あれ、おかしいな、使いやすいと思うけど。
「考えてみろ、信用で価値が決まる紙幣じゃないんだ、使ってる金属の価値がそのまま硬貨の価値だ、同じ金属で価値が十倍って事は大きさも十倍だぞ、そんなでかいの他の硬貨と一緒に積めないだろ、十分の一も同じだな小さすぎて使いにくい、街中では硬貨を半分に切った半銀とか四分の一にした四分銀なんかが有るが正規の取引じゃ使わないな」
確かに十倍だと記念メダル位に成っちゃうか、確かに使いにくいかな。
うーんこれは我慢するしかないのかな、でもまあ何とかなるか。
それよりは次の依頼の事を考えた方がいいんだろうなー
次回から何話か番外編の予定です、蝙蝠の館からこれまでをヒロイン達の視点からやってみようかなーと。
ほんとはもっと早くやるつもりだったんですが、タイミングが無くって……
ということで次回は『奴隷娘三者三様プラス2』の予定です。
もしも、別サイドでの同じシーン繰り返しが嫌いな方は、飛ばしていただいても大丈夫かと、若干の伏線や後書きでのお知らせなどはありますが……
H26年11月22日 誤字、一部モノローグ、句読点修正しました。
H27年2月26日 誤字修正しました。




