31 じゃじゃ馬
ギリギリ二日連続投稿できました。
今回は流血注意ですそれと後半はステータス確認になります。
「やーーー」
ヤッカの突き出した槍を避けたヒョウがそのまま腕の伸びたところへ飛びかかっていく。
「たっく世話の焼ける」
指輪から放った炎でヒョウを弾き飛ばすと、ヤッカは追撃をかけようと槍を構える。
「下がれ、横から来るぞ」
ヤッカの死角から仕掛けようとした灰山猫を短剣で切り捨てる。
たっく、この馬娘あんまり暴走するなら呼び名に鹿もつけるぞ、いやもうボクバカ娘でいいかも、さっきから突撃一辺倒で失敗してるってのにまた突っ込んでいくし。
闘争心が過剰すぎだよこのじゃじゃ馬が、少数の雑魚くらいならともかく、フロアボス相手に下手なことしてるとホントに死ぬぞ、こんなんで死なれるとこっちが困るんだけど。
岩跳豹 LV15
身体スキル 跳躍上昇
戦闘スキル 噛千切り 殺爪斬 体当り粉砕
戦闘スキルを見ると、どれもかなり威力がありそうだし、防御力の低いヤッカだと下手すりゃ一撃で倒されそうなんだよな、さすがにそれはまずいよね……
はあ、俺の食事で遊んだ罰が俺達と一緒にボスを倒せって、どっちかっていうと俺らの方が罰じゃないかな。
ほとんど足手纏いなんだけどな、ユニコーン達にとっては期待の若手だろうヤッカを育てたいってのは解るけどさ。
でもさ、そのレベル上げを俺達にさせるってのはどうかと思うんだけどな。
「食らえ」
ああ、また突っ込んで行っちゃったよ。
『槍突撃』
槍を構えたまま高速で一直線にヒョウへと突き進む。
あの突撃馬娘、さっきから通じてないってのにスキルに頼りすぎなんだよ。
その手の攻撃スキルは、一度発動すると決まった動きしかできないから簡単に動きが読めるし、かわされても終了までは動きが続くから一気にピンチになる。
ほらまた避けられた、スキル一辺倒でどうにかなる相手かよ。
(お主はイラついておる様じゃが、中級者の下辺りまではステータスとスキル頼みの戦闘が一般的じゃ)
(そうなのか)
まあ確かに、ザコ魔物とかはステータスの能力とスキル一辺倒って感じが有ったから、俺なんかが工夫で何とか出来たって所はあるんだろうけど、スキルとステータス一辺倒なんて無駄が多すぎだろ。
(下級の『迷宮』で稼ぐ分ならば、レベルさえ上げて行けばそれだけでもなんとかなるのでな)
ああ、確かにそんくらいの威力はあるか、ミーシアなんて鎧を一撃で粉砕してたもんな……
(レベルの上がりや新しいスキルの入手が鈍り始める前に、駆け引きの仕方などが出来るようになるかが、中級扱いされるかの分かれ目となるのう)
そうなんだ、ならミーシア達にも経験させた方が良いのか、考えとこ。
(それで、あの馬娘をどうにかできるか)
(今すぐは無理じゃのう、本人が気付くか誰かが教えるか)
俺が言っても聞かないだろうな~
と、話し込んでる間に、馬鹿娘がピンチだな、ヒョウに圧し掛かられて槍の柄で何とか噛まれないようにしてる。
ミーシア達は、灰山猫に囲まれてすぐには動けないか、仕方ない俺が助けるか。
そのまま押さえ込んでろよ、一気に距離を詰めてヒョウの首に短剣を振り下ろす。
くそ、避けられたか、まあこれでボクっ子馬娘は助かったか。
「援護するから下がれ、ミーシアの盾の陰から攻撃すればそんな事にはならないだろ」
ついでに連携の仕方も学んでください、そのままじゃ死ぬよホント。
「ふざけるな、ボクが倒すんだ」
もうやだ、なんだよこの面倒くさいの、そういうセリフは感心しないなあ、そう言う事を叫ぶキャラってのは足手纏い一直線というか、そのせいで周りに被害が出そうな気がするんだよな……
ほらまた槍を避けられてる、ちょっ、灰山猫が集まってるじゃないか。
一気に飛び込んで、連続で短剣を振り回して数体の山猫を切り捨てる。
ヤッカは、くそ、まだ硬直してるか、てヒョウが飛びかかってるじゃねえか、このままじゃ。
ああ、やっぱりこのパターンか。
お約束通り過ぎるぞちくしょーーー
ヤッカの元へ駆け寄り、肩から体当たりして吹き飛ばす。
「いた、なにをするんだ……え」
おお、驚いてる驚いてる、怒りに染まりかけた表情が一気に驚愕に変わって、今青い顔で泣きそうになってら、ころころ変わって面白いな。
まあ仕方ないか、何しろ俺の左肩には思いっきりヒョウが噛みついてるし、てかかなり痛いなこれ……
「お、お前、ボクをかばってそんな」
「い、いいから早く戻れ、そ、そんな、ところで固まってたら、また、やられるぞ、ぐう」
げ、肩ごと左腕もってかれた、ガアアア、イテエエエ、くそ、あ、ヤッカの顔が真っ青になっちゃったよ。
「早く下がれ、お前もやられたいのか」
ヒョウに押し倒されたまま痛みをこらえて叫ぶと、慌てたようにヤッカが駆けていく。
「リョー様」
「こっちは大丈夫だ、守りを固めながら山猫を片づけろ」
悲鳴のように声をかけてきたサミューにそう返すが、他の子達は声を出す余裕すらなさそうだ、さすがにここまでの怪我は初めてだもんな。
早いとこ、こいつを何とかしないと、みんなに余計な心配をかけるか。それにしても痛いな、悲鳴をこらえて指示を出すのがきつい。
腕を投げ捨てたヒョウが今度は俺の首筋に噛みついて来る。
お前はこれで俺を倒したつもりなんだろうけど、こっちはレベルアップでだいぶMPが増えてるんだ、この程度の攻撃ならあと何回かは余裕で耐えられるんだよ。
噛み付かれた首ごと上半身を持ち上げられるのに合わせて、両足をヒョウの体に回して密着する。
「くたばれ」
密着したまま右手に持った『切り裂きの短剣』を一気に突き刺す。
「ガアアア」
悲鳴を上げて距離を取ろうとするヒョウの体を両足で押さえつけたまま、連続で短剣を刺し続け最後に一気に振りぬく。
返り血を浴びながらも、右手を振り続け、相手が弱ってきたところで止めを刺す。
のしかかってくるヒョウの死体をどけると、灰山猫が俺を取り囲む。
クソ、血の匂いに興奮したのか、それとも手負いの俺が手頃な獲物に見えたのか、どっちにしろこれは……
チャンスだな。
「サミュー」
先日と同じ方法を取らせるために、サミューを呼んだんだけど、もう指示済みだったのか、アラとハルが呪文を唱えてるよっ、てっこれもう発動直前じゃねえか。
腕から血を撒き散らしながらも、全力で上空に飛び上がった俺を追うように飛び上がろうとする山猫を、火炎が一気に焼き払う、左肩の傷から流れ落ちる血がそれに触れると同時に蒸発する。
どんだけ熱量あるんだよこれ、てか巻き込まれてたら死なないまでも痛かったろうな……
少し離れたところに着地して辺りを見回す、魔物は残ってないか、ああ、いてええええ。
「ご主人様ご無事ですか」
駆け寄ってきたサミューに頼んで落ちている左腕を拾ってきてもらう、アラやミーシアはもちろんハルも心配そうにしているが、俺の『超再生』を知っているせいか落ち着いている、例外は……
「あ、ボクの、ボクのせいで」
まあそりゃ動揺するよな、自分をかばって仲間が大怪我したんだから、これでふざけた態度を取ってたらぶん殴られても文句言えないよな。
「大丈夫だ、この程度の怪我なら治せる」
サミューの持ってきた腕を受け取り傷口を合わせると徐々に肉が広がっていき腕が繋がっていく。
「ご主人さま動かせますか」
「いやすぐには無理みたいだ、とりあえず繋がりはしたが」
とりあえず痛みは治まってるのがありがたいけど、ここからは道なりに真っ直ぐ行っただけでボスの所につくんだよな、長老はヤッカクラスが六人もいれば楽勝だって言ってたけど。
とりあえず現状を再確認しとくか、みんなを鑑定してと。
まずはお嬢様から行くか。
ハル
奴隷魔法士 LV22
技能スキル 火魔術 水魔法 土魔法 風魔法 雷魔法 氷魔法 短剣 詠唱短縮 高速詠唱 魔法陣作成
身体スキル MP回復 MP消費軽減 魔力視認 魔力操作 浮遊・滑空 飛行(鳥態)
戦闘スキル 小火玉 小水玉 小石玉 小風玉 小雷玉 小冷玉 照明 入眠 着火 火矢 火風 涼風 氷風 熱蒸弾 雷撃弾 火炎弾 岩石弾 岩壁結界 氷壁結界 炎壁結界 落雷陣 小火陣 風砂陣 水流幕 火矢幕 浄炎 強炎 強風 風刃 火刃 溶岩密封 嘴刺突(鳥態)
うーん、若干だけど火炎系に偏ってるかな、そういえば技能が火だけ魔法から魔術に変わってるな、でも全体攻撃とか威力の大きい魔法を優先してるせいか、基礎的な単体攻撃魔法が少ないかも、属性も偏ってるから敵によってはあんまり効かないかもな。
これから教える魔法はちょっと気を付けてしばらくは基礎系の各属性をそろえた方が良いかも。
次はミーシアか。
ミーシア
奴隷盗賊 LV6 奴隷治療士 LV6 奴隷工兵 LV4
奴隷剣士 LV5 奴隷重歩兵 LV5
技能スキル 罠発見・解除 索敵 開錠 回復魔法 掘削 野営 木工 長剣 重盾
戦闘スキル 盗み 止血・鎮痛の指先 火傷止めの爪 創傷回復の指 強斬撃 引き寄せ 盾突撃 鉄壁防御 噛千切り(獣態時) 殺爪殴(獣態時) 圧潰爪(獣態時)
身体スキル 視力・嗅覚・聴覚向上 腕力上昇 怪力 寒冷耐性 肉食回復
生活スキル 料理 洗濯 掃除 生肉解体
レベルはやっぱり全体的に上がるのか、上がった総合自体はハルより上だけど、全部一桁ってのは強さ的にどうなんだろう、ステータスは高いけど種族的なものかもしれないし、やっぱり複数職はあんまりよくないのかな。
スキルは回復系が増えてるけどこれは俺のせいだよな、てか『圧潰』とか『肉食』とか、また凶悪そうなスキル名が二つも増えてる、それに『怪力』って、ああ可愛いミーシアがどんどん猛獣化していく。
次はエロ、もといピンクさんね。
サミュー
奴隷侍女 LV20
技能スキル 鞭 戦闘指示
戦闘スキル 手加減 精密攻撃
生活スキル 料理 掃除 洗濯 裁縫 茶 菓子作成 子守 身支度 食材鑑別 性奉仕 焦らし 羞恥奉仕 誘惑
身体スキル 名器 毒耐性 熱耐性 火耐性 水耐性 寒冷耐性 電撃耐性 窒息耐性 縊首耐性 拘束耐性 打撃耐性 斬撃耐性 刺突耐性 痛覚鈍化 恐怖鈍化 関節強化 皮膚強化 HP自動回復
やっぱり戦闘職じゃないからステータスはそんな上がってないか、スキルは戦闘指示と精密攻撃か、サミューらしいと言えばらしいかな、早いところ戦闘職に就けないとな何がいいんだろ。
てか何で生活スキルが三つも増えてるんだ、てかなんだこれは『焦らし』とか『羞恥』とか『誘惑』とか、なんでこんなスキルが付いてるんだよ、俺か俺のせいなのか。
ええい次だ次。
アラ・フォティ
ダークエルフ LV20
技能スキル 剣術 弓術 風魔術 闇魔術 植物魔法
身体スキル 聴力上昇 視力上昇
戦闘スキル 風牙 闇牙 風弾 闇弾 風刃 風槍 風陣 裂風陣 闇幕 闇毒風 闇痺風 涼風 強風 飛行妨害 葬風 旋風 草操 木操 強斬 二連続切 三連続切 強刺突 精密射撃 二段撃 三段撃 影縫
レベルが上がったほかは少し魔法が増えただけだよな、まあまだ子供だし仕方ないかな、アラもそのうち職業を考えないとな。
後は。
ヤッカ・ラーン
ユニコーン LV16
技能スキル 槍術 棒術 格闘術 幻術魔法
戦闘スキル 強刺突 槍突撃 幻身 幻隠蔽 蹴撃(獣態時)
身体スキル 聴力上昇 視野拡大 無毒化 毒耐性 強化濃縮調合 疾走(獣態時)
全く変わってないな、まあこのくらいが六人分ならうちのメンバーでも大丈夫か。
後は俺か。
サカキ リョウ
魔法士 LV13
勇者 LV6
スキルは多すぎるからいいや、やっぱり『勇者』は上がらないか二重職だから『魔法士』の上がりも悪いしステータスは相変わらずだし……
とりあえず戦力的にはボスも大丈夫そうだけど、さすがに今の戦闘はみんな疲れただろうし、一度小屋まで戻って、いや長老へ報告しに里まで戻るか、ここまでくれば一日や二日ぐらい遅れても同じだろうし。
「今日はここまでにして一度里まで戻ろう、明日ここに近い小屋まで移動して明後日ボスに挑むぞ」
そうやって、里までの帰路を進んでいた俺達が見たのは、里から上がる無数の煙だった。
H26年9月2日 誤字、句読点、三点リーダー修正、痛みに関する文を中心に一部文章追加しました。
H27年1月20日 誤字修正しました。




