279 襲撃1
次の投稿は10月以降になると言った傍からこれですが、なんか調子が良かったんです。
それと、今回はかなり流血のシーンが有りますのでご注意ください。
「旦那見えましたぜ、あれが目的の廃村でさあ。まあ村と言うよりは、騎士の駐屯地だった小規模な砦を基に発展した集落になりやすがね」
テトビが指さす先には、確かに村とその後ろに砦と言うか塔が有るけど。
「随分と、騒がしいな」
もうかなり遅い時間の筈なのに、すごい叫び声が聞こえてるんだよね。まるで地元のスポーツチームが優勝した後の繁華街みたいな感じで奇声を発してるしさ。
「まあ、薬がキマッてる連中の集まりですからねえ、毎晩あんな感じみてえでして、それでも人里から離れて周りに気付かれにくいですし、薬目当てで人が集まるんで女も酒も大量にあるらしくて、やりてえ放題って訳でして」
なんか酒池肉林のサバトみたいな感じになってるって事なのかな。
しかしまあ、なんでこんな事になってるんだろ。
「そんでどうするんだ、奴ら生意気にそれなりの見張りを立ててやがる、この大勢で近づきゃすぐにばれるぞ、俺としちゃあ一人残らず潰してえんだがよ。それならもっと近づいてから仕掛けた方が確実なんだがな。めんどくせえことに今夜は満月のせいで、月明りがつええ、多少離れててもすぐに見えちまうぞ」
背中に背負った金属棒を構えながら『金剛杖』が声を抑えて言ってくるけど、近いって、あんたやその後ろに居る連中は強面なんだからさ、月明りの下で見せられちゃうちの子達が泣いちゃうでしょ。
「これだけの手勢が揃っているのならば、ここから一気に仕掛ければどうですか。あれだけ騒いでいるならば、まして注意力の落ちている中毒者ならば多少物音を立てても気付かないのでは」
クリグ・ムラムが『金剛杖』の隣で拳を鳴らしながら武闘派な事を言ってるけど、この人ってかなりイケイケな感じなのかな。
しかし、この間クリグ・ムラムが提案してきた『金剛杖』との共同戦線がこんなとんとん拍子で進むなんて思ってもいなかったな。
だってさ、盗賊の元締めとそれを取り締まる騎士だよ。本来なら会った瞬間に戦闘になっててもおかしくない筈なのにさ。
「そっちは車列を襲撃できない程度に奴らを蹴散らせればいいんだろうから、取りこぼしても構わねえんだろうが、こっちはそうは行かねえんだ。俺らの面子の問題もある、何しろ奴らは上納金をあげねえばかりか、みかじめ料を払ってる行商人まで襲って皆殺しにしてやがるからな。こんなのが続きゃあそのうち誰も俺らのシマを通らなくなる。何よりああいう中毒者連中は一人でも残していると、他の連中に薬を広めるからな。キッチリ全滅させとかねえとキリがねえんだ」
ああ、『金剛杖』としちゃ切実な問題なのか。
「それは心外だ、奴らを殲滅させねばならぬのは小官等とて同じ事、この先もこの地域の街道を当家の隊商が使う以上、安全の確保は重要ですからな」
言われてみればそうだよな、俺が勝手に定額契約を結んじゃったけど、これからの事を考えるなら確かにこの地域の安定や発展は必要条件になるのか。
「ですがどうなさいやすか旦那、あちらさんは二、三人一組で幾つかの組が定期的に声を掛け合い連絡を取り合いながら見回ってやすぜ、ほとんど同時に潰さねえと、すぐにバレやすぜ」
うーん、確かにそうだよな、見張りの連中は笛を持ってるから、何か有ればあれを吹いて仲間を呼ぶんだろうな。
「よければ一組は小官が受け持とう、だが残りは誰かに頼みたいのだが」
となると一組は俺かな、『軽速』と『斬鬼短剣』を使えば三人くらいなら、気付かれる前に行けるだろうし。でも他はどうしよう『金剛杖』の部下ならそう言う感じの暗殺者とかいるのかな、あそうだ、暗殺者と言えば。
「旦那様、その御役目、このトーウめにさせては頂けませんでしょうか」
月光に両手の爪を輝かせたトーウがお辞儀しながら訊いてくるけど、うんトーウなら行けそうだよね。『鬼族の町』でも鬼を瞬殺してたし。
「アラもね、アラもやるの」
アラも元気に手を挙げて来たよ、ちょっと心配だけどまあアラの強さなら大丈夫なのかな。
(心配はあるまい、二人ともお主の『成長補正』の恩恵を受けておるからの、あの程度の雑魚ならばたとえ十人でも問題なかろう)
「わかった、トーウ、アラ頼む」
さてと、残りはあと一組か二組くらい……
「あの、御主人様少しよろしいでしょうか」
ん、サミュー達までどうしたんだ。
「残りの盗賊は、わたし達が受け持ちたいのですがよろしいでしょうか」
え、わたし達って事は、サミューやミーシア、ハルもって事か、行けるの、いや普通に考えればステータスが高いんだから大丈夫なんだろうけどさ、今回は強さよりも正確性が必要なんだし。
「だ、だいじょうぶ、です、いっぱい、れ、練習しました」
「貴方は、ここでふんぞり返ってみているだけで構いませんわ、全てわたくし達が倒してまいりますもの」
(おそらくは、ここ最近トーウに受けている対人戦のやり方を実戦で試そうとして居るのじゃろうて、やらせてみては良いではないか、盗賊とのステータスの差はかなりあるのじゃから、失敗しても危険は少なかろう)
え、何この流れ、みんなに任せちゃっていいの。それで大丈夫なのかな、いやでもさ……
「おいおい、あの『侍女服の獣使い』が出るのかよ」
「え、『侍女服の獣使い』って、あのか、賞金目当てで襲って来た連中を皆殺しにしたって、なんでそんな化け物がここにいるんだよ」
「知らねえのかよ『侍女服の獣使い』は『虫下し』の奴隷だってのは有名な話だろ。それにさっき手を挙げた子供は、例のあれだよライワ伯爵領で盗賊団を壊滅させた」
「ひゃ、百人退治の『雷滅幼女』」
なんだ、うちの子に随分物騒な二つ名が付いてそうなんだけど。
「そうだ、ついでにいやあ、あっちのまな板女は例のラッテル家の出らしい」
まな板ってひどすぎないか、ま、まあトーウの胸は実際……
「ラッテルって言うとあの対暗殺者の家か」
「そうだ、暗殺者のやり口を熟知させるために、直系の連中には全員『暗殺者』の職を取らせてるイカレタ、やべ、聞かれてないよな」
いえ、ばっちり聞こえてますよ、しかし、ラッテル家の評判ってそんなんなんだ。
「スゲえぞ、そんな連中が仕掛けるなら、あの程度の見張りなんざ問題ねえな」
「ああ、俺らは、安心して本番の襲撃用意をしてようぜ」
「さすがは『虫下し』のパーティーって事か」
あれ、これはひょっとしてもう彼女達に任せるしかないって流れですか。
「わ、解った、みんなに任せる、だが無理はするなよ」
「リョー殿の配下の方々が出られるのでしたら小官は遠慮いたしましょう、リョー殿、先に言っておきますが、薬物中毒の犯罪者は情報も殆ど持っていないことが多く、犯罪奴隷としての価値も無いゆえ手加減は無用ですからな、万が一の事が無いよう見張りは確実に仕留めるよう徹底して頂きたい」
手加減無用でトドメを刺せって事か。
いつの間にかみんなが分散しちゃったけど本当に大丈夫なのかな、何かあったら『軽速』ですぐに駆け付けれるようにここでしっかり様子を見てないと。
(やれやれ、心配性じゃのう)
そんな事言ったってさ、あっ、サミューが盗賊たちと接触する、って隠れないで出て行っちゃったよ、大丈夫なのか、あれじゃ仲間を呼ばれるんじゃ。
「誰だ、あん、女かよなんでこんなところに」
「おい、よく見ろよ、スゲーイイ女だぞ」
「ふふ、うふふ」
唖然とした盗賊二人に、嫣然と微笑みを浮かべながらサミューが近づいて行くけど、なんだかすごく色っぽいな。
「こいつはいいや、薬でその気に成ってるようだぜ、おい誰も呼ぶんじゃねえぞ声かけられても普通に答えとけよ」
「解ってるって、せっかくのいい女だ、しっかり楽しんどかねえともったいねえからな、早く変われよ」
「焦らなくても大丈夫ですよ、すぐにオワリますから」
両手でメイド服のスカートを捲り上げてるけど、もしかして向こうからサミューのガーターストッキングが見えてるんじゃ。盗賊たちがすっごい顔でサミューの事を凝視してるよ。
「あん、んむ」
盗賊を誘うようにサミューが片手をスカートから離して、人差し指を自分の口にくわえて舐めまわすって、エロすぎだろ。
(サミューには『焦らし』『羞恥』『誘惑』等のスキルが有るからのう、精神抵抗力の弱いただの盗賊風情では、多少の色仕掛けでいちころじゃろうて、ほれ、後ろを見てみい)
ん、後ろって、うわ。
「す、すげえ、なんだよあの女、こんなに離れてるのに目が離せねえ」
「む、『虫下し』はあんな女奴隷を好き放題に、くそ」
なんかみんなしてサミューの方を見ちゃってるんだけど、なにもしかして、サミューに魅了されちゃってるの。
これはかなり不味いんじゃないのかな、『金剛杖』配下の盗賊連中はともかく、俺達と一緒に車列護衛に雇われてる冒険者連中や、兵士や騎士なんかも魅せられちゃってるから、ここを乗り切った後でラッテル領に移動するまでにトラブルが起きかねないんじゃないか。
「へ、こいつは、とんだ痴女じゃねえか、姉ちゃんまってな直ぐに俺様のをよ」
盗賊の片方がさらに前に出て大木を背にするように立つと、そこへ近寄ったサミューがスカートから手をはなして、右手で盗賊の頬を撫で、左手で胸元を撫でながら徐々に腹の方へと降りて行き。
「こりゃいい、この女慣れてやがるぞ、おいこっちを見てねえで、周りを見張っとけ、俺らが終わる前に誰かに見られちまったら、めんどい事になるぞ」
「クソ、見てるぐらい良いじゃねえかよ、仕方ねえな、向こうを向いてるからとっとと出しちまえ」
一人がサミュー達に背を向けて周りを見回している間にもサミューの左手が下がっていき、下腹部から更にはその下の部分を優しい手つきで撫でまわし、その物全体を包み込むように掌で覆って……
「ふっふ、すぐに逝かせてあげますから、ねっ」
一気に握り潰しちゃったよ。
「うぐう、ぐぐぶじ」
しかも頬に当ててた右手で口を塞いでるし、更には左手でもう一度股間をしっかりと握り直してそのまま左右に大きく揺すりながら一気に手を引いたけど、あれはもしかして引き千切ったんじゃ。
さっきまで嬉しそうに蕩けてた盗賊の表情が言葉では言い表せない位に悲惨な事になってるし。
(まあ、サミューのステータスも相当高くなっておるからの、身体強度のたいして高くないあの程度の盗賊ならば、腕力だけで握り潰す事も毟る事も余裕じゃろうて)
「ひ、ひでえ、ひどすぎる、天国から地獄ってのはこの事かよ」
「あ、あんな死に方、絶対にしたくはねえな」
「さ、流石は『虫下し』の奴隷だ、やり口が……」
後ろを振り向くと男性陣の半分以上が自分の股間を押えてプルプル震えてるんだけど、気持ちはよーく解る。これなら、サミュー達に悪さしようなんて思ったりはしないか。
視線を背後から正面に戻すと、口を押えられたままの盗賊の顔がどんどん青く、ズボンがどんどん赤くなっていくんだけど、そう言えば股間周辺って太い血管が走ってるから、出血が凄いって聞いた事が有るような、だから昔の宦官が去勢する時なんかは命懸けだったとか。
(立ったままであの出血量じゃ、すぐに頭へ血が回らなくなり意識をなくすじゃろうな。そうでなくとも痛みで気絶するかもしれぬの、薬で痛みを感じにくくなっておろうが、見張りを任される程度の理性が残っているのならば、それほど強い薬は使ってないじゃろうからの)
ラクナの言葉を証明するかのように、サミューに押さえつけられた盗賊がその場に崩れ落ちると、『吸生の長靴』の折り畳み式ヒールを立てたサミューが、一気に体重を掛けたストンピングでヒールを頭に突き刺してトドメを……
「うわあ」
「エグすぎる」
悪党の盗賊や百戦錬磨の騎士連中にまでこんな事を言われるサミューって。
「ふふ、お待たせしましたね。次はアナタの番ですよ」
一人目の絶命を確認したサミューが、向こうを向いていたもう一人の盗賊に背後から抱き着いて手を前に回し、また右手を口元へ、左手を下腹部へ……
うん、これ以上は見ない方が良いな。ほ、他の子達は大丈夫かな。
「そーっと、そーっと、き、きづかれないように」
ん、鎧を脱いだミーシアが匍匐前進で見回りをしてる盗賊達に近づいて行くな。
鎧を外したのは音を立てないようにする為か、しかしおっきい身体を必死に丸めてるな。まあ、『盗賊』の職も有るんだから、ああいった隠密行動なんかも出来るのかな。うーん、これなら金属以外の装備もミーシアには用意してあげた方が良かったのかな。
「も、もうちょっと、もうちょっとだけ行けば、こ、ここで大丈夫かな、し、静かにしなきゃ」
盗賊を待ち構える様な位置にある藪の中で、体育座りをして見つからないように縮こまったミーシアが息をひそめてるけど、あそこで待ち伏せるのか、大丈夫かな。
「そんでよ、ん、何か音がしなかったか」
やばい、ミーシアのすぐ横で盗賊たちが周りを見回してる、そのまま通り過ぎちまえば背後から奇襲できたのに、マズイこのままじゃミーシアが見つかる。
「出てきやがれ」
「どこのどいつだ」
ミーシアの隠れてる藪に三人の盗賊が近づいて行く。
「すう、はあ、よ、よし」
深呼吸した後で一気にミーシアが立ち上がりながら『獣態』へと、変身する。
「え、あ、ひがびえ」
「ひぶべ」
「ぐぼ、ぐえべ」
いきなり目の前に現れた巨体に、盗賊たちがとっさに反応できずにいる間にミーシアが振り上げた両手を一気に振り落として盗賊二人の頭がスイカみたいに砕けて。更にもう一人はそのまま頭を丸ごと噛まれて……
「さ、三人を瞬殺かよ」
「あんなデカイ『獣態』の取れる獣人なんて居るのかよ、殆どボスモンスターじゃねえかよ」
「さっきの侍女と言いあの熊と言い、あんな化け物どもを手懐けてる『虫下し』って」
うん、なんか背後からの視線が痛いのは気のせいだよね。
H28年9月30日 誤字修正しました。




