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6. 感情的な優しさと、構造的な優しさ

 

 子どもが泣いていると、すぐに安心させたくなる大人もいる。


 泣かせたくない。

 嫌な思いをさせたくない。

 今すぐ笑ってほしい。


 その気持ちは自然なものだ。


 子どもを大切に思っているからこそ、苦しそうな顔を見ると、すぐに助けたくなる。


 しかし、ここで一つ考えなければならないことがある。


 その場で泣かせないことだけが、本当に優しさなのか。


 たとえば、子どもが片づけを嫌がって泣いたとする。


 そこで大人が「今日は片づけなくていいよ」と言えば、子どもはその場では安心するかもしれない。


 けれど、それを何度も繰り返せば、子どもはこう学ぶ可能性がある。


 泣けば片づけなくていい。

 嫌なことは泣けば避けられる。

 自分でやらなくても、最後は大人がやってくれる。


 これは、短期的には優しく見える。


 しかし長期的には、子どもが自分で行動する力を弱めてしまう。


 もちろん、泣いている子どもを突き放せばいいという話ではない。


 子どもの気持ちは受け止める必要がある。


「片づけたくないんだね」

「まだ遊びたかったんだね」

「嫌な気持ちは分かるよ」


 そう伝えることは大切である。


 しかし、気持ちを受け止めることと、やるべきことをなくすことは違う。


 泣いている理由を理解したうえで、必要なことは必要なこととして残す。


「嫌なのは分かったよ。でも、遊んだおもちゃは一緒に戻そう」


「全部は大変だから、まずブロックだけ片づけよう」


「終わったらお茶を飲もうね」


 このように、感情は受け止める。


 けれど、行動の責任までは消さない。


 これが、構造的な優しさである。


 感情的な優しさは、その場の苦しさを減らす。


 構造的な優しさは、子どもが次に困らないようにする。


 感情的な優しさは、今の涙を見る。


 構造的な優しさは、その子がこれからどう育つかを見る。


 子どもは、最初から自分で判断できるわけではない。


 嫌なことがあれば泣く。


 思い通りにならなければ怒る。


 疲れていれば投げ出す。


 それは当然である。


 だからこそ、大人は子どもの感情に引っ張られすぎてはいけない。


 子どもが泣いたから、すぐにルールを変える。


 子どもが嫌がったから、すぐに大人が代わる。


 子どもが怒ったから、説明をやめる。


 これを繰り返すと、子どもは感情で状況を動かすことを覚えてしまう。


 本当に育てたいのは、感情を出す力だけではない。


 感情があっても、少しずつ考えて行動する力である。


 嫌だけれど、必要だからやる。


 泣きたいけれど、少しだけ頑張る。


 怒っているけれど、叩かずに言葉で伝える。


 遊びたいけれど、終わったら片づける。


 こうした力は、急には育たない。


 大人が何度も支え、説明し、待つことで育っていく。


 そのためには、大人自身も短期的な安心だけに逃げないことが必要になる。


 子どもを泣かせないことは、優しさの一つである。


 しかし、泣かせないことだけを優先すると、子どもは困難に向き合う練習を失ってしまう。


 大切なのは、泣かせないことではない。


 泣いても、そこから立て直せるように支えることである。


 子どもが嫌がる時、すぐに取り除くのではなく、少しだけ一緒に向き合う。


 子どもが泣く時、すぐに譲るのではなく、理由を伝えて待つ。


 子どもができない時、全部代わるのではなく、できる部分を一緒に探す。


 これが、長期的に子どもの判断力を育てる。


 優しさとは、ただ甘くすることではない。


 厳しくすることだけでもない。


 子どもの気持ちを見ながら、その子が将来困らない形へ導くこと。


 その場の涙だけでなく、先の成長まで考えること。


 それが、感情的な優しさを越えた、構造的な優しさである


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