第1話「選ばれなかったはずの俺」
――その日、俺は“判定”を受けた。
白い部屋だった。
無機質で、音も匂いもない。
目の前には一枚のディスプレイ。
そこに表示された文字を、俺はただ見つめていた。
適合率:47%
静かに、医師が言う。
「平均ですね。問題ありません」
問題ない。
それがこの社会における、最大の評価だった。
遺伝子によってすべてが決まる世界。
能力も、将来も、可能性すらも――生まれた瞬間に定義される。
そして俺、真田翼は“普通”だった。
特別でも、欠陥でもない。
ただの平均値。
だからこそ、疑問すら持たなかった。
――あの日までは。
施設の奥に入ったのは、完全に偶然だった。
本来、立ち入り禁止の区域。
だが警備は妙に甘く、扉は半開きになっていた。
「……なんだ、ここ」
暗い廊下を進むと、空気が変わる。
冷たい。
どこか、生きているような感覚。
その先にあったのは――
ガラスの向こうに閉じ込められた、一人の少女だった。
白い髪。
透き通るような肌。
そして何より――
“異様な静けさ”をまとっていた。
「……誰だ、お前」
思わず声が出る。
少女は、ゆっくりと目を開いた。
その瞬間。
視界が――歪んだ。
頭の奥に、ノイズが走る。
知らないはずの“何か”が流れ込んでくる。
数字。記号。断片的な記憶。
――見たことのない光景。
息が詰まる。
「……っ、なんだ、これ……!」
膝が崩れ落ちる。
少女は、こちらをまっすぐ見ていた。
そして、静かに言う。
「あなたも……同じ」
「……は?」
「選ばれている」
その言葉と同時に、ディスプレイが点灯する。
そこに表示されたのは――
適合率:測定不能
心臓が、大きく跳ねた。
ありえない数値。
そんなもの、この世界には存在しないはずだった。
「……なんだよ、これ……」
少女は微かに笑う。
どこか悲しげで、けれど確信に満ちた表情で。
「ようこそ、“例外”へ」
その瞬間、警報が鳴り響いた。
赤い光が、世界を塗りつぶす。
そして俺はまだ知らない。
この出会いが――
すべての“記録”を壊す始まりだということを。
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