表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神として転生したけどなんか違う!  作者: ミスター栗
22/24

第二十二話

あれから、5日が経った。


その間、人間アリは毎日、朝と夕方の2回――俺に祈りを捧げることを日課としていた。


朝の祈りのたびにSPが1増加していることも確認できた。

逆に夕方の祈りではSPは増えないため、どうやら「1日に1回祈られればSPが1増える」仕様らしい。


祈る人数が増えたら、その分SPも増えるのか。

気になるところではあるが、今はどうしようもない。

それはまた今度検証するとして、今は贅沢を言わないことにする。


とりあえず、現時点でのSPは7。ありがたい話だ。


この5日間で、人間アリの生活サイクルについても、なんとなく把握できてきた。


先に述べた1日2回の祈りに加え、日中は主に二つの行動を取っているようだ。


ひとつは村の整備。瓦礫の撤去や雑草の除去など、手作業で少しずつ進めている。

……とはいえ、家屋の修復には手を付けていない。


いや、正確に言えば一度だけ挑戦していた。

その結果――俺の正面に建っていた”元”家は、かろうじて残っていた壁も屋根もすべて吹き飛び、跡形もなく崩壊。

以前は家々に囲まれていて、裏路地を抜けなければ俺のいる空き地には辿り着けなかったが、今ではその元家のあった場所がまるまる開けていて、立派な通路になっている。


……あれで悟ったのだろう。

以降、修復作業は一切行われていない。


もうひとつの行動は、森への立ち入りだ。


さすがに窓では森の奥までは追えないため、戻ってくるのを待つしかないのだが……

たぶん、食糧の調達だろう。


採ったものをその場で食べているのか、帰ってくるときには葉っぱ数枚しか持っていないことがほとんど。

おそらく薬草か山菜の類だと思う。


たまに、プラムのような果実を数個を、ワンピースのような服の裾をたくし上げて作った空間をポケット代わりに詰め込んで持ち帰ってくることもある。


服の都合上ではあるが――その姿は、どう見ても局部丸出しだ。


これが人間だったなら、完全にアウトな格好だし、場面によっては通報ものだ。

興奮するような層が存在しても、まぁ不思議ではない。


……だが、相手はアリである。


何も感じないし、感じたくもない。


仮に蟲姦好きだったとしても、その層が好むのは“虫にヤられている人間”である。

間違っても虫自体が好きなわけではない。


……まぁ、それでも。


こうして同じ村で、毎日顔を合わせて、祈られて、何だかんだと様子を見守っていると――それなりに、愛着も湧くもんだ。


前までは、SPのために仕方なくって気持ちもあったけど、今じゃちょっと違う。


観察キットのアリ……いや、それじゃ言い方が悪いか。

シムシティの市民くらいには、ちゃんと情が移ってる。


まぁ、SPという実利を考えれば、好き嫌いなんて関係なく守らなきゃいけない存在ではあるけど――

好きでいられるなら、それに越したことはない。


そんな穏やかな気持ちで毎日を過ごしていたら、気付けば部屋の隅に物が積み上がっていた。


毎日、DPは欠かさず使い切っているからな。

その結果、部屋の隅……いや、厳密には“隅”なんて存在しないんだが、そこに物がちょっとした山を築いている。


主に食べ物とゲーム関係の品が多い。


あ、もちろん真っ先に交換したのはベッドだ。

TVを見ていたら一度は目にするであろう、あのやたらと「人間工学が~」とか「寝返りが~」とか語られる高級マットレス系。

名前を出すのは控えるが、“真”の“眠り”を“プレミアム”にしてくれるアレだ。


意識が戻ってからは毎晩、そのベッドで眠っている。

まぁ、相変わらず夢は見れないのが惜しいが、それでも前みたいに倒れ込んで目覚める不快な感覚はもうない。

もしまた倒れたとしても、次はふかふかの感覚で済む。大きな進歩だ。


ところで「部屋の隅」って言い方をしていたが、実際にはこの空間、壁という概念が無い。


一度、どれだけ広いのか気になって歩き出したこともあるが、途中で振り返った時に自分のラジカセが豆粒以下に見えた時点で引き返した。

あれじゃ帰ってこられる自信が持てない。

真っ白な空間がただただ広がるだけで、方向感覚もへったくれもないからな。


だから結局、俺の行動範囲は今のところ両手の届く範囲に限られている。

おかげで定期的に物の山を整理しないと、いつかベッドごと何かに埋もれてしまうんじゃないかと不安になる。


広さに制限があるわけじゃないから、いくらでも遠くに物を置けるんだけど――

やっぱり近くにあるってだけで、安心感というか、充実感があるんだよな。


今まで子供の頃以来、まともに私物なんて持てなかったから忘れていたけど、

これはたぶん「物欲」……いや、「コレクション欲」ってやつだろう。


答え合わせしてくれる相手はいないが――

きっと、これは正解だ。


そう思うと、この空間をもっと整えてみたくなるのも自然な流れだろう。


そのうち、棚とか冷蔵庫とかも増やして、ちゃんと収納できるようにしておこう。

せっかく好きに物を集められる環境なんだから、

快適に、整然と、趣味全開で過ごせる空間を目指すのもアリだ。


今の部屋を見渡す。

ベッドに、冷蔵庫、物の山、そして食べ散らかしたゴミ――

今は今で、好き勝手できる自由さがあって悪くない。けど、もう一段上の快適さってやつも味わってみたい。


もっとこう、ラグジュアリーっていうか、洗練された空間っていうか。

昔、某“生物の森”に憧れてたことがある。

あれに近い感覚かもしれないな。好きなものに囲まれて、自分だけの空間を育てるあの感じ。


……うん。

せっかくこんな場所にいるんだ。

好きにやるのが、一番だ。


無造作に床に置かれた懐中時計を見る。

1時……デジタルに言えば13時だ。


せっかくだし、夕方の人間アリの祈りまでに部屋をリホームしてみようかな。

大体あと5時間くらい。DPの残りもあるし、何とかなるだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ