表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/252

4  北方口承伝

この異世界大陸の地図の中に、 

 《希望の丘》という地がある。 

 この地はかつて神話の時代の神々が降り立った場所とされた。無論、これは中原諸国に広く普及した宗教上での話である。 

 中規模都市カンブラ(以下日本で表記される「甲」と表記する)の人々もまた信仰していたからだ。


黒馬村の民はなぜこのような目立つ場所に逃げ延びるのか? 

 答えの一つに宗教自自治区である所が大きい。

 この地は中原諸国の都市国家の介入を受けないばかりか、逆に信者の多さを強みに国家群に影響を与えている。 

 つまり、この地に一兵でも入れれば、その国は禁忌を犯したことになり、外は無論、内側からも圧力がかかり、結果、体制が崩れる。 

 彼らはこれを目論み、奔る。 すこし、ここで甲地人について語る。

 彼らの築いた都市国家《甲》は、中型の規模と雖も鉄などの生産が豊富であり、自国の軍備の強化はもちろん、他国にまで鉄を流通させることで莫大な利益にあずかった。


 気性はとても真面目であり、細工などの手工業が得意である。反面、彼らは荒っぽい性格でもあった。

 中原諸国の諺に「熱い鉄を叩けば甲人の如し」と揶揄される有様である。

 常備軍は都市国家の健全な男子一五歳から四五歳までと決め、総勢で三万人であった。そして、予備軍の奴隷や雇兵を含めると、五万人を超えたと言われている。 

 なにより鉄で固く装備された軍である。


 (――それが負けた。) 

 それが例え、放逐された黒馬の民といえど、絶望は大きい。

 山を大きく迂回して下り、海岸沿いに奔る黒馬の民達の一団の姿が有る。 

 潮の匂いが風にのってやってきた。 

 尚馬脚を早めると、遠く蒼き平盤の果に暁が射した。 

「ここで、すこし馬を休めよう。」 

 誰かが、そう聲をかけた。 


 後続の者、あるいは先を走るものにもそれが伝播し、人々は草地と砂浜の間にとどまった。 

 「これから、あとどのくらいかかるだろう?」

  言いつつ、若い男が竹の水筒に口をつけて空腹を紛らわす。 

「これからあと7マリほどだろう。しかし、問題は、入国の方法だ。」 

 クラプトは、殿軍を巧みに率い、追手を躱して彼らに追いついた。

 その彼が肩で息をしながら答える。 

 一団の注目が彼に集まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ