表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/85

優越感の充実感

今度は、日用品とか買うんだって。

「はい、着きましたー。なんでもござれの百貨店『ソロエル』です。」

「すごい大きいですね。……でも、ほんとに僕の物なんか買っちゃっていいんですか?僕は、別にお下がりとか気にしませんよ?」

昼食を終えた2人は、知亜の日用品や消耗品を買うために百貨店を訪れていた。この『ソロエル』は、明美達の住む家からバスに乗って20分もかからない場所に位置し、また住宅街の近くに立地している事もあり、ここを訪れる人は多い。休日は特に人が多いのだが、今日は平日なので人はそこまで多くはない。

そして、この『ソロエル』の一番の魅力は品揃えの充実性である。住宅街に住む多くの家族が必要とする食料品や、子どもの為のおもちゃやゲームなどファミリー層を重点的に置いた品揃えで消費者の心を掴んでいる。もちろん、若年層にも魅力な点はある。芸能人が立ち上げたブランドの商品や、放課後の遊び場としてゲームセンターも配備している。プリクラ、UFOキャッチャー、アーケードなどもあるが、このゲームセンターには家族で訪れ、足として使われたお父さん達のために懐かしいインベーダーやブロック崩し、麻雀など大人向けのゲーム機も置いている。全ての世代を思い、取り込もうとする行動力があったからこそ、この『ソロエル』は満足度NO.1の地域密着型の百貨店になりえた。

「私が気にするの。知亜君だって長い時間を、あの家で過ごすんだからちゃんと自分の物を持たなきゃ個性が無くなっちゃうぞ。」

「……でも――」

「いいから。ほら、行くよっ。」

明美は強引に、知亜を店内へと連れて行った。知亜も内心では、楽しみにしているのだがそれを表に出す事を苦手としている。やはり、すぐには貪欲にはなれない。

「まずは――服を見ましょう。後で行こうとすると、適当に決めちゃいそうだからじっくり悩んで買いましょう。」

「でも、最初に時間かけちゃったら後の方が雑になっちゃうんじゃ――」

知亜のそんな指摘に耳を貸さず、明美はどんどんファッション売り場を目指す。


「ここは、『ソロエル』にテナント出店しているアウトレットを扱う激安服屋『ヨイスヤ』よ。ここには、本当にお世話になってるわー。」

「凄いんですねー。明美さんは物知りですね。」

店の前で知亜に力説する明美、そんな明美を尊敬の眼差しで見つめる知亜、そんな2人を野次馬が見ていた。

「それじゃ、知亜君の服を探しにいきますか。」

「はい、よろしくお願いします。」

知亜は興奮気味に返事した。その理由は、店外に飾られている商品の安さに原因があった。なんと、冬物の長袖シャツやPコート、ジャケットなどが定価の50パーセント引きで販売しているからだ。そして、とどめは店の壁に貼られているポスターだ。そこには、本日、服の詰め放題、という文字が書かれていたからだ。野菜などは聞いた事がある。しかし、服を詰め放題にするとはなんと太っ腹なのだろう。

「いい、知亜君。一刻も早く、詰め放題をしたいという気持ちはわかるわ。だけど、詰め放題だけに目を向けてはダメよ。このお店では、服のタイムセールっていうのもやってるの。いつ、なんどき、そのアナウンスが流れるかわからないの。だから、服の詰め放題にばかり注目しないで、より良い物を、より安く手に入れる為に行動するのよ。」

「はっはい、わかりました。僕、頑張ります。」

明美の先を見据えた考えを聞いて、知亜は目先の利益に心を奪われまいと耳を澄ませてタイムセールを待ち構える。


――ただいまより、タイムセールを行います。対象商品は――


「明美さん、タイムセールですよ。早く、買いに――」

「いいえ、まだよっ。対象商品に、知亜君の服は含まれていなかったわ。……次のタイムセールまでは時間が――」

明美は知亜にそう言うと、1人なにかを呟き始めた。

「――こうなったら……知亜君!急いで詰め放題の方に向かうわよ。」

「えっ、だけど――」

知亜の返事も聞かず、明美は詰め放題コーナーへと向かって行った。知亜は、わけもわからず明美を追いかけた。

「はい、知亜君。これが詰め放題の袋ね。」

「あっあの、明美さんタイムセール――」

「今は詰め放題に集中するのよっ。ほら、自分が欲しいと思った服をなるべく詰め込むのよ。」

明美は、知亜に透明の袋をを渡すと平日にもかかわらず、多くの主婦が群がる戦場へと向かって行った。そして知亜は、子ども服の詰め放題コーナーに恐る恐る向かう。

「うぅ、人が凄いよぉ。こんなの絶対無理だよー。」

知亜は、一応詰め放題コーナーに向かったのだが、あまりの人の多さに怖気づいていた。

「あら、僕、どうしたの?洋服が欲しいの?」

知亜が、袋を持ってコーナーをうろうろしてる姿を見ていた1人の主婦が声をかけてきた。

「えっと、そうなんですけど……怖くて…」

知亜は、ちょっと涙目になりながら声をかけてくれた主婦にそう言った。

「まぁ、初心者には無理ね。――どれ、おばさんが詰め込んできてあげようかな。僕は、何色が好きなの?」

「えっ、あの迷惑じゃないですか?」

「そんなの子どもの僕が、気にする事じゃないよ。ほら、遠慮しないで言ってごらん。おばさんに任せれば大丈夫だから。」

「えと、好きな色は……明るい色ならなんでも好きです。」

「うん、明るい色ね。」

主婦は、知亜の抽象的な好きな色を聞いてコーナーへと進んで行った。その背中は、歴戦の勇者のように大きな背中に見えた。

こんなせまい所に、こんなに人が集まるなんて。……詰め放題って魔法の言葉みたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ