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私はこの子と生きるために、なんでもしてみせる……

産れた子どもと2人で生きていくことを決めた明美は、住み込みの仕事を探した。しかし、子連れの人間を住み込みで雇ってくれる所など全く無かった。途方に暮れると、どこからか子どもの声が聞こえてきた。声の聞こえる方へと足を進めると、そこには古い長屋があった。その長屋の庭では、子どもたちが笑顔で楽しく遊んでいた。その様子を見ていると、

「お姉さん、どうしたの?」

1人の女の子が、明美に話しかけてきた。

「えっと、お姉さん迷子になっちゃって。ここはどこなのか教えてほしいの。」

明美は、迷子ではないのだが迷子と言ってごまかした。

「うーん、ちょっと待っててね。……ぎぃーちゃんっ!ちょっときてー。」

「……用事があるならあんたが来なさい、美奈っ!今、手が離せないんだよっ。」

美奈という少女が、誰かを呼ぶと長屋の中からハスキーで怒ったような声が返ってきた。

「むぅ、別に怒らなくてもいいのに……ごめんね、お姉さん。ちょっと着いてきてっ。」

「あっ、ちょっと待って。急に手をひっぱらないで。」

美奈と呼ばれる少女は、明美の手を握って長屋へと案内した。明美は、長屋を近くで見て思ったよりも綺麗な家だなと思った。

「ほら、ここはね『シロツメクサ』って言うんだよ。」

「シロツメクサ?そういう名前のお家なの?」

そうだよーという明るい声で返事をした、少女は中に入っていった。

「ぎぃーちゃんっ、どこーー?」

「なんだい、さっきから。台所にいるよーー。」

2人の会話を聞きながら、明美は玄関に腰掛けていた。

「ほら、ぎぃーちゃん。迷子さんだよ。」

「こりゃまた、でっかい迷子だねぇ。」

少女は、40代と思われる白髪交じりの黒髪ショートヘアをした女性を連れてきた。

「んで、ここに来た理由は?あんたも、子どもを捨てにきたのかい?」

「えっ、捨てる?……そんなことするわけないじゃないですかっ!」

明美は、いきなりそんな事を言われ腹が立った。せっかく授かった子どもを捨てる親がどこにいるのかと思った。

「……というか、あんた。ここがどういう場所かわかってんのかい?」

「……知りません。」

明美は、初対面でいきなり失礼な事を言われたので少し苛立ちながら返事をした。

「そいつは悪かった。ここに来る連中は、大抵そういう人間ばかりだからあんたもそうだと思ってたよ。」

「……ここは、何なんですか?」

明美は、謝罪の姿勢を見せる女性に聞いた。ここは、何なのかと。

「ここかい?ここは、親の都合で居場所を無くした子どもたちが集まる場所さ。」

「それって……」

明美は、女性の言葉を聞いて庭を見回した。そこには、元気に遊ぶ子どもの姿しかない。

「まあ、要は児童養護施設ってところさっ。」

女性は、そう言うと明美の隣に腰掛けた。そしてその女性の膝の上に、少女は飛び乗ってきた。

「こら、美奈っ。重いからどきな。あんたはもう、6年生だろうがっ。」

「えぇーっ、たまにはいいじゃん。だって、ぎぃーちゃん沙由の相手ばっかりするんだもん。私も、たまには甘えるのっ。」

そんな2人のやりとりを見て、明美は羨ましく思った。私も、涼がいた頃は……

「それで、あんたは何しにきたんだ?」

「えと、歩いていたら子どもの声が聞こえたので、何かなと思って。」

明美は、苦笑いをしながら答えた。

「……いや、違うね。あんた、どうしようもないって顔してる。なんか悩みでもあんのかい?」

「……いえ、初対面の人に悩みを言うのは…。」

当然、明美は自分の抱える問題の重大さを理解している。しかし、こればかりは相談してもどうしようもない。

「まぁ、話してみなって。こんなところに四六時中いると、暇でしょうがないのさ。」

女性は、子どもの前でそんな事を平気で言っていた。きっと、大雑把な性格なのだろう。

「……えっとですね、働ける場所を探してるんです。」

「あんた、そんなのどこにでもあるじゃないか。ましてや、あんたみたいな美人を雇わない所なんて無いだろうに。」

「いえ、ちょっと特殊な条件じゃないと働けないんです……。」

「かーっ、贅沢な子だね。条件求めるなんざ百年早いよ。で、その条件ってのは?」

「……子どもと一緒に住み込みで働ける所じゃないと。」

「…………」

明美のその条件を聞いて、女性は何か考える仕草をしていた。そんな様子を見て、早く探しに行かなきゃと思った明美は、腰を上げて歩き出そうとした。

「ちょいちょい、どこに行くのさ。」

「いえ、時間が惜しいので手あたり次第聞いていこうかと。」

「それなら、あたしに名案があるよ。あんたのその難しい条件をクリアできる働き口、紹介してやろうか?しかも3食昼寝付き。」

「……へっ?今何て……」

一瞬、この女性が何を言っているのか分からなかった。明美は、それを理解する為にもう一度何と言ったのか聞き返した。

「だから、紹介してやるって言ったんだよ。あんたの働く場所。」


……何を言っているんだろう?

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