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第九百八十九話 孫左京の憂鬱編
御徒町樹里はとうとうありがたい経典を授かり、国に帰りました。
皇帝は樹里達を盛大にもてなし、宴は夜遅くまで続きました。
「樹里よ、どうじゃ、朕が壮大な寺を建てるから、そこに移らんか?」
皇帝がニヤリとして言いました。樹里は、
「ありがとうございます。ですが、私にはそのようなものは要りません」
と応じました。皇帝はムッとしました。
「朕の言う事を聞けぬと申すか?」
「はい」
樹里は笑顔全開で応じました。
大広間では霊宝天尊達が余興を始めていましたが、孫左京は一人で城の外に出て、夜空を見上げています。
「どうした、猿? お前には似合わんぞ、そういう姿は」
露津狗と鷺基がやって来ました。
「うるせえよ」
左京は二人を見て言います。
「まだお師匠様に未練があるのか?」
鷺基が尋ねました。左京は赤くなって、
「お師匠様はもう俺らの手の届かないところに行っちまったんだよ。もう諦めた」
「ほう」
鷺基は露津狗と顔を見合わせてニッとしました。