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第九百六十八話 食欲の試練編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるためにまた西を目指しています。
樹里達は道を進みました。
遥か彼方に天竺大雷音寺の壮大な屋根が見えて来ます。
「ここまで来たか」
孫左京が呟きます。
「何だかいい匂いが……」
亜梨沙が鼻をヒクヒクさせます。
「亜梨沙、気をつけて、試練だと思うわ」
蘭が言った時には亜梨沙は匂いの元に辿り着いていました。
「美味しそう!」
居並ぶ料理に狂喜する亜梨沙です。
「仕方がないわね」
呆れる蘭ですが、
「おお!」
彼女の目の前に採れたての胡瓜が現れました。
以前にもあった光景です。
「なってないぞ、お前ら! 煩悩の塊か!」
さっきから不機嫌な左京が言います。
「蘭さん、しっかりしてください。その胡瓜を食べてはいけません」
馬に戻って樹里を乗せている馨が言いました。
「そうだった。ありがとう、馨」
蘭が照れ臭そうに言ったので、馨はドキッとしました。
「ほら、亜梨沙」
左京は料理をたべそうだった亜梨沙を引き戻しました。