83.帰る、返す
コブトリのやつから【無間地獄】で情報を引き出せるだけ引き出し、あとは【無量大数】をぶち込んでやった。
脳内に無限に等しい情報を流し込まれた元勇者は廃人となった。
コブトリをひもで縛って担ぎ上げ、俺はエリスとともに街へと戻った。
で、だ。
冒険者ギルドにて。
「こいつが犯人です」
ギルドマスターに、コブトリを突き出す。泡吹いて倒れているコブトリを見て、目を丸くしていた。
「この黒髪……もしや、勇者軍のかたでは……?」
そういや、黒髪は日本人だけなんだったな。
こいつアホだな……。居場所をバレたくないとか言っていたくせに、変装ひとつしねえでやんの。
『というより、こやつはこの世界の事象に対して無関心だったのではないか?』
……妖刀の言うとおりかもしれん。
つまりこいつは、黒髪=この世界では日本人だけ、というこの世界での常識を知らなかったってわけだ。
知らなかったというか、知ろうとしなかったんだな。
ま、俺には関係ない。
「こいつが盗んでいた財宝だ」
俺は黒衣から、サハギンどもが奪った財宝を取り出す。
「どれがどいつの持ち物なのかはしらん。おまえらで仕分けしてくれ」
「ありがとうございます! なんとお礼を言ったら……」
「礼などいらん。金をよこせ。それ以上は求めん」
ギルマスが表情を明るくしやがる。
頭を下げてすぐに部屋を出て行った。残されたのは俺とエリスだけ。
「ぬふ~♡ ダーリンは優しいです~♡」
「おまえそれしか言えないの? 語彙すくなすぎない?」
「アホですので♡」
自分で言うのか……。
「ダーリンはやっぱり優しいです。取り返した財宝を、そのまま返してあげるんですもの」
「あ? 当たり前だろうが。それが依頼なんだからよ」
「仕事をきっちりこなすダーリン、かっこいい! そして大好き~♡」
ほんと、こいつ語彙力皆無な。




