82.クズが
81.
サハギンを操っていたのは元クラスメイトだった。
「名前なんつったっけ……こいつ……」
丸眼鏡の根暗そうな男子生徒だ。小太りしてて、顔にニキビが浮かんでいる。
「ひぃいい! 助けてください命だけはぁあああああ!」
名前が思い出せないから、とりあえずコブトリと呼んでおこう。
コブトリは俺の前で土下座している。
あ、そうだ。俺今顔を変えてるんだったか。
だからこいつ、俺=松代 才賀だってわからないわけだな。
「別にてめえを殺しにきたわけじゃねえ。俺は冒険者だ。この洞窟を調査に来たんだよ」
「あ、そ、そうなんだ……」
「ああ? そうなんだぁ?」
「ひぃい! そ、そうなんですねぇ! すみませんすみません!」
コブトリはガタガタ震えていた。
俺がサハギンを圧倒する姿を目撃してるからだろうか。
俺にはかなわない、そう思ってるんだろう。それゆえ震えてるわけだ。
……情けない。勇者が聞いてあきれる。
「てめえ、勇者だろう? なんで盗みみたいなマネすんだよ」
「え? 何でそんなこと聞く……?」
ずがんっ!
「ひぎぃいいいいい!」
銃弾でコブトリの手に穴を開ける。
「手がぁあああ! 手がああああああああああ!」
のたうち回るコブトリに【無傷】を付与して、怪我を治してやる。
「あれぇ!? 手が治ってる!?」
「聞かれたことに素直に答えろ。嘘ついたら撃つ」
「わ。わかりましたあ……!」
よし。とりあえずこのコブトリから情報を、取れるだけとるぞ。
まずは……そうだな。
「さっきの質問にこたえろ。勇者のくせに、なんで一人でこんなところに隠れてやがる?」
「そ、それは……ぼ、ボクが勇者軍を追放された雑魚だから……」
「あ? なんだそれ。追放ってどういうことだよ?」
「ぼ、ボクを含めた【B-】ランク勇者たちは、軒並み軍をやめたんだ」
「B-?」
「Bランクのなかでも、低い能力の勇者たちだよ……」
なるほど。召喚勇者は全員Bラン以上だと前聞いた。だが、その中でも序列が存在するらしい。
「軍を辞めたって……そんなことできるのかよ」
「う、ううん。できないよ。ほんとだったらね。軍を抜けるのは重罪なんだ。今も、ボクは勇者軍の幹部から命を狙われてる」
だから姿を隠してる訳か。
「あんたも逃亡者ってわけか」
「【も】?」
ちっ。
「まあ良い。事情は理解した。けどてめえ……」
俺は銃口をコブトリに向ける。
「てめえが大変な立場だからって、この世界の人間に迷惑かけてんじゃねえぞ? てめえがサハギン使って盗んだ財宝はなぁ、この世界の連中が一生懸命かせいで、手に入れたもんだ。それを理不尽に奪う権利なんて、誰にもねえんだよ」
「ひ! すみません! で、でも……でも! この世界のやつらなんて、どーでもいいじゃないか!」
……コブトリがそう叫ぶ。
「だって、異世界から来たボクからすれば! こんな見知らぬ世界の連中なんて! ゲームのNPC同然! どうなろうが知ったこっちゃない!」
……NPC、だぁ?
エリスや、シロ。ここへ来る途中で出会った村の連中。
彼ら全員、ゲームの、意志無きキャラっていいたいのかこいつは……。
ふざけんな。
「ふざけんな! なにがNPCだ!」
ズガンッ!
「ひぎぃいい! 痛いいぃいいいい!」
いじめグループじゃねえから許してやろうと思ったが、甘かった。やっぱ勇者は軒並み屑だ。




