308.
話がまとまれば、善は急げだ。
俺はエルザードの屋敷を後にし、青々と茂るエルフの集落へと飛び出した。
鼻をくくすぐる若葉の香りと、肌を撫でるひんやりとした風が心地よい。
「さっそく、その宝石獣とやらを倒しに行くとしよう」
気合を入れて首をポキポキと鳴らしていると、背後から軽い足音が近づいてきた。
「待て! 私も案内として同行するぞ!」
振り返ると、エルフの少女エリンが腰に手を当てて立っていた。
長い金糸の髪をふわりと揺らし、ツンと尖った耳をピクピクと動かしている。
「別についてこなくていいぞ。危険だしな」
俺がひらひらと手を振って追い払おうとする。
「行くに決まっているだろう! そもそも、お前はどこに敵がいるのか知っているのか!」
エリンはぷくっと頬を膨らませて、ずいっと顔を近づけてきた。
エルフ特有の甘い花の香りが鼻先を掠める。
「わからんが、わかる」
「なんだそれは! 意味不明なことを言うな!」
エリンが盛大にのけぞり、天を仰いでツッコミを入れた。
「なんとなくわかるのだ。殺気を持っている奴の居場所くらい、感覚で掴める」
俺は親指で自身の胸を指差して、自信満々に胸を張った。
伊達に修羅場をくぐり抜けてきていない。
「あにきーっ! ぷちもついていくぞー!」
すると今度は、足元からずんぐりむっくりとした影が飛びついてきた。
まん丸に太った子竜のぷちだ。
短い尻尾をパタパタとちぎれんばかりに振りながら、俺の足にすりすりと頬ずりをしてくる。
「お前ら、戦闘の邪魔になるから絶対についてくるなよ」
俺はエリンとぷちを交互に見やり、面倒くさそうにため息をついた。
「なっ!? この何の役にも立たないデブドラゴンならともかく、優秀なエルフの戦士である私が邪魔だと!?」
エリンはショックを受けたように目を見開き、ガックリと項垂れた。
長い耳まで力なく垂れ下がっている。
「ひどいーっ! ぷちはデブじゃないぞ! ちょっとぽっちゃりしてるだけだー!」
ぷちは短い両手で顔を覆い、バタッと膝から崩れ落ちて号泣し始めた。
地面をドタバタと叩いてコミカルに泣き叫んでいる。
本当にこいつらと一緒で大丈夫なのだろうか。
俺は一抹の不安を抱きながら、騒がしい一人と一匹を引き連れて深い森の奥へと足を踏み出すのだった。
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※2/20(金)
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