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スキル【無】の俺が世界最強 スキル無しと馬鹿にされた俺、実は無限に進化するSSS級スキル所持者でした【5月1日発売】  作者: 茨木野


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305/312

305.

案内されたエルフの里は、想像以上に幻想的な場所だった。


 天を衝くほどの巨木が幾重にも連なり、その太い枝や幹をくり抜くようにして住居が作られている。

 枝と枝の間には吊り橋が架かり、淡い光を放つ苔がランタンのように道を照らしていた。

 自然と文明が完全に融合した、神秘の隠れ里だ。


 だが、その美しい景観とは裏腹に、俺たちに向けられる空気は針のように鋭い。


「人間……?」

「なぜ人間がここに……」

「おい見ろ、エリン様が!」


 木陰や窓から覗くエルフたちの視線には、明らかな警戒と敵意が混じっていた。

 特に、気絶したエリンが運ばれていくのを見た者たちは、今にも弓を引き絞りそうな殺気を放っている。

 案内役の彼が「客分だ、手を出すな」と制していなければ、今頃ハリネズミにされていただろう。


「こちらだ」


 案内されたのは、里の最奥。

 ひときわ巨大な「世界樹」の根元に建てられた、荘厳な屋敷だった。

 扉が開かれ、俺たちは広い謁見の間へと通される。


 正面の玉座に、一人のエルフが座っていた。

 長い金髪に、翡翠のような瞳。

 年齢不詳だが、刻まれた皺の一つ一つに知性と威厳が宿っている。

 顔立ちはエリンによく似ていた。間違いなく彼女の血縁者だ。


「……よく来たな、人の子よ」


 里長が静かに口を開く。

 その声は穏やかだが、腹の底に響くような重圧感があった。


「私がこの里を統べる者、エルザードだ。……して、そこの不肖の娘が世話になったようだな」

「世話をした覚えはないが、少し寝てもらっただけだ」


 俺が肩をすくめると、エルザードは運ばれてきたエリンを一瞥し、ふっと呆れたように息を吐いた。


「血気盛んなところは母親譲りか。……蛮勇を振るい、客人に無礼を働いたこと、親として詫びよう」

「分かってくれればいい」


 話が早くて助かる。

 俺が用件を切り出そうとした、その時だった。

 エルザードの瞳が、俺の奥底にある何かを探るように細められた。


「それにしても……驚いたな」

「何がだ?」

「その身に纏う異質な魔力。そして、この世界のことわりから外れた魂の輝き……。貴殿、『召喚者』であろう?」

「――ッ」


 俺は眉をひそめた。

 こちらの正体を、一目見ただけで見抜いたというのか。

 人間社会でも、俺が異世界人だと気づく者は稀だ。

 こいつ、ただのエルフじゃないな。


「警戒せずともよい。長く生きているとな、鼻が利くようになるのだよ。……世界を渡る者の匂いにな」


 エルザードは悪戯っぽく笑う。

 敵意はないようだ。

 俺は一つため息をつき、腕の中でぐったりしている毛玉――ぷちに視線を落とした。


「詳しい話は後だ。まずはこいつを休ませてやりたい。俺の威圧の巻き添えを食らって、伸びちまってる」

「うきゅう……むにゃむにゃ……」


 ぷちは幸せそうな顔で気絶しているが、精神的なショックは大きいはずだ。

 ベッドで寝かせてやりたい。


「ふむ。使い魔か。よかろう」


 エルザードは即答した。

 あまりに早すぎる返答に、俺が拍子抜けするほどだ。


「客間を用意させよう。最高級の羽毛布団と、疲労回復の香を用意するがいい」

「……いいのか? 俺は娘を倒した人間だぞ。もっとこう、尋問とか牢屋とか、そういう手順があるんじゃないのか?」

「娘が負けたのは、娘の実力不足だ。それに、貴殿からは『悪意』を感じぬ」


 エルザードはゆったりと椅子に背を預けた。


「召喚者が悪人であれば、とっくにこの里は火の海になっていよう。……貴殿が理知的な男で助かったよ。さあ、旅の疲れを癒やすといい」


 あまりの好待遇。

 だが、その笑顔の裏には、タヌキ親父のような底知れなさが見え隠れしていた。

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