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異世界に転職しました  作者: Aries
第6章
122/202

姫巫女達の問い

 




 セレニティが面倒だと思って眺めていた地上では、静かな混乱が起こっていた


 混沌、暴動とならなかったのはセレニティの神気が強すぎた所為なのだが、そのおかげで民衆はパニックにならずに済んでいた


 イネスはアイリスから昨日


「何があっても段取り通り、冷静に対応するように。」


 と、言われていた


 何があっても、とはどういう事なのか?


 アイリスの言い方は何かあるような含みがあったが、イネスにはそれが何かまでは分からなかった


 女神様(セレニティ)から視線を向けられるまで


 視線を向けただけで冷静さを取り戻したイネスは、歴史的瞬間に立ち会える誉に感極まった


 そして小さく深呼吸して、高らかに宣言した



「女神様の御降臨で御座います!」



 イネスの宣言に続き、厳かに質疑が行われると思われたが、しゃしゃり出てきた5人がいた


 異世界勇者3人と、ブリリアント王国の王子、王女である


 そして恐れ多くも直答しだしたのだ


「あんたが俺たちを召喚した女神様か!」


「本物かな?直接は会えない感じ?」


「浮いてるです!(女神!出て来いやぁ!!)」


 余りにも余りにもな出来事に、姫巫女を始め教職者達は顎が外れんばかりに驚愕した


 女神様の御降臨よりも驚いたのではなかろうか


「純白の女神よ!お初にお目にかかります。我が名はアレキサンダー・ブリリアント。この者達は異世界より参られた勇者の卵達で御座います。我がブリリアント王国で保護し、互いに切磋琢磨しております。」


「女神様におかれましてはご機嫌麗しゅう存じますわ。同じくブリリアント王国、エリザベート・ブリリアントで御座いますわ。この者達は、先日貴女様の試練に打ち勝ち、無事生還しましたわ!この強く気高き者達に、どうぞ魔王を打ち滅ぼす加護をお与えくださいませ。」


 声は小林の風魔法で響き渡り、その姿はこの日のために飯田が水魔法と幻影を応用して作り出したスクリーンに、映像として映し出されていた


 颯爽と、そして輝く様な出で立ちの王子と見目麗しい淑やかな王女に民衆はうっとりとした


「おう!魔王は俺たちが倒してやるよ!」


 斉藤は力強く手を振り上げる


 満更でも無い小林と、民衆に酔いしれる飯田


 誰もが女神様のお声を、生起の瞬間を待ち望んだ



『…魔王?』



(まずいですわ!)


 プリシラはブリリアント王国の者達に主導権を握られているこの状況を打開したいが、どうしたらいいのか分からなかった


 だが、ハルカ達がどうして帰ってこないのか


 本当に死んでしまったのかずっと疑問だった


 信じられなかった


(ソウイチロウが付いていながらそんなことあるはずがありませんわ!)っと思っていたから


「信仰の姫巫女、プリシラが問いに答え賜え!」


 だからとっさにそう叫んでいた


 それが通常の練習、段取り通りの行動だった


 質問の内容は飛んでいた


 ザワリと空気が揺れた


 全ての視線がこちらに向いてしまったが、彼女の姫巫女としての矜持が、プライドが、その腹をくくらせた


「い、異世界人は8人おりました。他の5人は今どこにいるのですか?」


 プリシラの発言は本来の予定とは違っているが、他の姫巫女達もだんだんと冷静さを取り戻していった


「勇気の姫巫女ケイリーの問いに答え賜え。あたしは勇者の是非を問う!」


「節制の姫巫女サンマリアの問いに答え賜え〜!自分は勇者の資質を問う〜!」


「正義の姫巫女エミリーの問いに答え賜え!あたしは魔王の是非を問うよ!」


「慈愛の姫巫女ジュリアの問いに答え賜え。魔王は何処にいるのか教えて下さいな。」


「知恵の姫巫女イネスの問いに答え賜え。私は…我らが罪を問う。」


 イネスの質問は本来なら「我らが未来を問う。」だったのだが、プリシラがイレギュラーを起こしたので選択肢として2つの問いがあった


 イネスは迷った上でこちらを選択した


 イネスも叶や新堂達が帰ってこない理由があると思っていたから


 そして裁かれることない者達に、裁きが下るのではという少しの期待と、この世界の女神というものが本当に機能しているのかという知的好奇心


 知りたいというイネスの欲求が、本人の知らないところで、女神様(セレニティ)の選択を決定させる一因となる





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