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異世界に転職しました  作者: Aries
第6章
120/202

勇者爆誕!

 




 その日世界に激震が走った


 なんと、女神の試練を達成したものが現れたと、聖国から正式に通達されたのだ


 新たな勇者の誕生である


 パレードが行われる事となった聖グレースランド王国には、ブリリアント王国の王族は勿論、近隣諸国の外交官や豪商など多くの著名人が招待されている


 各国の要人たちは普段入ることのできない聖国の首都リアムに入れるとあり、我先にと馬車を飛ばした


 本来なら東西南北の街も厳しい入国審査があるが、今回は要人をスムーズに通すため、いつもより緩くなっている


 それでも大都市の入場審査と変わらないくらいしっかりとした確認がなされている


 噂を聞きつけた周辺の人々が、『聖女』や『勇者』を一目見ようとが押し寄せ、東西南北の教主の街もまた野次馬で凄い熱気を帯びていた


 普段では考えられないほどの人の量と相まって、周辺の街道は大渋滞した


 リアムの中央には今回のお披露目の為だけにとても大きな舞台が作られ、儀式が行われるのだ


 特別な儀式の為に巫女や神官達は大忙しだったが、その表情は皆誇らしげであった


 舞台に並ぶのは聖女を始め各姫巫女


 一段下に大司教、東西南北の教主、聖職者達


 更に一段下に招待された王侯貴族


 それを取り囲む様に聖騎士達が警護し、外周にはリアムに入ることができた幸運な民衆が群がっていた


 誰しもが期待に満ち溢れた瞳で中央を見ていた


 盲目の歌姫と名高い今代の聖女の歌声を待ち望んでいたのだ


 ーリン


 鈴の音が鳴ると、騒めきを吸い込んだかの様に周囲を静寂が支配した


 聖女が歌う様に祝詞を唱え、姫巫女達が神楽鈴を鳴らし舞を踊る


 キラキラと聖なる光が迸る


 厳粛な空気の中、神降ろしの儀式が静かに始まった


 神降ろしの儀式といっても実際には女神が降臨するわけではない


 国家の行末を占ったり、人間(こちら)から質問を投げかける事などはなく、聖女と姫巫女達が女神様の神託を賜る為の物で、主に次代の聖女、聖女候補をらを決める


 唯一、此方から質問を行えるのが『勇者』について


 女神に『勇者』の是非を問うことができるのだ


 これは本来、試練をクリアしたことが真実であるか、勇者として相応しいかなど、『勇者』の資質を問うものであり、本来ならばこの様に盛大に行う必要はない


 前回の勇者から時代は流れ、仕来りの伝承が正しく行われておらず、権力の誇示や見栄、所属国の主張など、様々な思惑が絡み合いこの様な大規模な行事をすることとなったのだ


 筆頭は勿論ブリリアント王国


 彼の国はこの神聖な儀式を使って召喚した勇者が自国のものだという事を知らしめるつもりだった




 それは最初、淡い光だった


 頭上から花びらの様にキラキラと光が降り注ぐ


 ふと、上を見上げた聖女の()()の先を誰もが見上げた


 跪く聖女に倣い、姫巫女が跪くと巫女達が、聖職者達が波の様にひれ伏していった


 信仰心の薄いもの程、その顔は驚愕に染まった


 まさか本当に本物なのだろうか?


 悪い夢を見ているのか?


 いや、良い夢?


 直ぐに頭を下げた為、わからなかった者も多いが、頭上をふわりと漂うベールの様な光を多くの者が目にしていた


『…』


 何か声が聞こえる様な気がしたが、女神様のお声を賜る事が出来るのは聖女と姫巫女だけだ


『…』


 姫巫女達は恐る恐る顔を上げた


 いつも頭に響く様に聞こえる女神様の声が耳から聞こえたから


 大司教は何を言われたか、そして目の前に起きている出来事に理解が追いついていなかった


 発せられた声が聖女のものでないことは確か


 そしてその声は少女アイリスが聖女に選ばれた時の声と酷似していた


 過去に聴いていなければ到底信じられる物ではなかった


 目の前の聖女アイリスに何が起きたのか?


 理解しているものはいなかった


 聖女は宙に浮いていたのだ


 いや、辛うじて聖女アイリスであろうと思われる少女が、宙に浮いていた


 っと言う方が正しいだろう


 開く事のないその瞳を開けて


 聖女アイリスの瞳の色を知る者は極僅かだが、明らかに人の瞳のでは無かった


 その白き眼はキラキラと銀色の虹彩が揺れていた



『如何に?』



 そしてその口から、先ほどよりもより明確な言葉が投げかけられた





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