17-another side
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ある日、突然、西の空が闇に包まれたんだ。
こういうときは、晴天の霹靂って言えばいいのか?
とにかく昼日中に真っ暗になるなんて、不吉を通り越してだな、えーと
・・・なんて言えばいいんだ?
まあ、一瞬誰かに目隠しされたのかと思っちまったくらいだ。
闇が空を覆ったと同時に、西の都ナハルとの連絡が途絶えたもんだから王国は大慌てよ。
応龍だかなんだかが出た時ですら、冷静に対処してったのによ。
まあ、うちの国は武力には自信があるからな。
裏を返せば、力ごり押しで対処できなそうなことにはからっきしダメだ、つまり臆病なんだな。
でも慌てながらも、アナト王国は調査隊の派遣をすぐに決断したのさ。
上の方々がブルっちまったってとこだろうけど、それでも情報を迅速に取りに行くことは大事だ。
どんな些細な情報だって、知らないってのは国にとっては致命的だからな。
アナト王国の騎士見習いの俺は、見習いの中でも体力と馬の扱いでは頭一つ抜きんでてた。
馬に身を任せればあいつら勝手に動いてくれんのよ。
獣は命令したり、支配しようとすると言うことを聞いてれくれねえのさ。
まあようは、見習いの中ではちょっと優秀だったんだな。
今回はそれが裏目にでちまったかもしれねえ。
王国の斥候隊と共に西へ迎え、とよ。
よりにもよってだ、西の空に広がる闇を調査する隊に組み込まれちまったんだ。
見習いは断れる立場にはない。
めんどくせえけど、行かなきゃだな。
端っこの方でニコニコしてるか。
ということで、俺は今一番向かいたくない方角、つまり西へ馬を走らせていた。
・・・
やけに静かなだな。
確かに、王国周辺だったり街道沿いは、王国に住み着いてる傭兵団達が小金稼ぎに狩りつくしてるから普段からあまり魔物が出ない。
とはいえ、まだ道中一度も魔物と出会わねえぞ。
これは、幸運なのか。
はたまた、魔物すらブルってんのかよ、あの空に。
スムーズはスムーズよ、この旅路は。
ただ、背後から太陽が照ってるのに目の前の空は闇も闇。
静かな街道は不気味以外の何物でもないよなあ。
・・・
ただ目の前は闇が広がるばかり。
闇の原因を見つけられれば調査ができるが、もし何も手がかりがなければナハルまで行かなきゃいけないらしい。
まあ、闇の原因がナハルよりもずっと西の出来事だったら、ナハルに先に着いちまうもんな。
その場合は、連絡が途絶えた原因の究明をして、戻ってこいとよ。
はあ、だるい。
てかナハルってどんんだけ遠いんだよ。
地図見とけばよかった。
・・・
ナハルってだいぶ遠いんだな。
10日くらい経っただろうか、これでナハルまで半分ほど踏破だとか。。
遠すぎだろ。
相変わらず魔物はでねえ。
野営の際の見張りも楽なもんよ。
しかも、常に暗いからぐっすり眠れるときたもんだ。
馬を走らせている時に目を開いてると、どうにも真っ暗な何かに飛び込んでいくような感覚がするんだ。
化け物の腹の中に自らとびこんでいくような。。
これじゃ、飛んで火にいるなんとやら、だな。
そんなことが気になっちまうもんだから、目を閉じてみると、いやこれが意外に気持ちいい。
一切の物音がしない中、馬の呼吸音、駆ける音が響く。
俺や斥候隊様方のキモイ呼気音も響いてるけど、まあ仕方ない。
目を閉じて馬を走らせる、癖になりそうだぜ。
と人が暗闇の疾走を楽しんでいたら、今までの空を覆っていた闇が嘘のように晴れた。
・・・
晴れたな。
調査はどうすんだ?
結局あの闇はなんだったんだ?
わかんないことだらけだな。
光源、ってのはちょっと違うな、闇の源はなんだったのかくらい突き止めないと、せっかく馬を走らせたのに無駄な行軍になっちまう。
てことで、結局ナハルまで行って、例の闇の情報収集をすることになった。
かったりいけど、しょうがねえ。
ナハルくんだりまで行ってやるとするか。
・・・
空は普段通り、明るい。
太陽が照れば明るくなり、雲が遮れば少し暗くなる。
普通が一番だな。
明るいけど、俺は目を閉じて馬に乗っている。
周りを警戒しろ、と怒られそうだが、まあ相変わらず魔物も出ず静かなもんだ。
ちょっとくらいはいいだろ。
駆ける音と風が、気持ちいい。
・・・
キリキリッ
ん?
何か、聞こえたな。
これは、たしか…弓を引き絞る音のような、っ
不味いっ…
「おい、矢で狙われているぞ。避けろ!」
咄嗟の隊長の言葉で、隊のほとんどは矢を避けることができた。
機転の利く男だよ。
んだが、運の悪いことに先頭を走ってた馬のケツに当たっちまったみたいだ。
んでさらに間抜けなことに後続が転げた馬にぶつかってドミノ倒しみたいになってら。
落馬って結構あぶねえんだよなあ。
後ろの端っこに陣取ってて命拾いしたぜ。
「ハッ、命が惜しけりゃ金目のモンと女を出せ!!」
おい、おっさん。
蛮族だか、盗賊だかわからんが、身なりのよろしくない髭野郎がなんか吠えてんな。
とりあえず、馬の音が聴こえたから喧嘩吹っ掛けたってか?
20人くらいいやがるな。
戦力差は倍以上か、ただ…
こちとら、アナト王国の騎士と傭兵の混合部隊だぞ。
なめんなよ。
隊長が怒声を発した。
「痴れ者がっ、かかれーーーっ!!!!!」
痴れ者って、古い言い回しだな。
隊長、興奮すると古風な一面があんだな、なんて思いながら腰に刺した剣を引き抜いた時に、おかしなものが目に入った。
おかしいってのも失礼な話だな。
人だ。
ただ、んーお世辞にも趣味がいいとは言えないような仮面をつけてら。
拗らせた系か、なんにせよあの細腕。戦いには不向きだな。
そこで、おとなしくしてろよ。
と思ったら、盗賊?の一人が放った流れ矢が仮面野郎にスッと飛んでいって、そして首に刺さった。
ああ、あれは即死だ。
首には絶対に傷つけちゃいけない血の管が何本も通ってんだ。
あれは致命傷だよ。
と、おもむろに仮面野郎が首から矢を引き抜いた。
げ、なんで血が出てないんだかわからねえが、向こう側が見える、ってことは貫通してたんだな。
そして、仮面野郎は倒れる、のかと思いきや
あれは、、、なんだ!?
圧倒的な存在感、とてもいえばいいのか?
何か凄まじいオーラのようなものを発している、気がする。
他の奴も感じてんだな。
気づけば、盗賊?たちは戦いの手を止め仮面野郎に注目している。
気になることがあっても目の前の敵から注意を逸らすなんて、隙だらけだぜ。
素人かよ。
注意の分散ができないと、戦場じゃ命とりだぜ。
まあ、俺もまだ見習いだけどよ。
と、仮面野郎の指先が輝いている。
まさか…いよいよ、こいつは。。
そして、仮面野郎が指を首にあてると空いていたはずの首の穴がみるみる塞がっていく。
!!?
これは、やはり、神の奇跡だ!!
大半を討ち取られ、盗賊たちが逃げていくが、今は知ったこっちゃない!
神の御業をお使いになる方が降臨されたのだ!
俺は、興奮のあまり仮面の方に近づいて、声をかけた!
「あ…あの、、あのあの。。。あの…?」
聞きたいことがあるのに、上手く言葉がでてこない。。
そう、俺はコミュ障だった。




