廻天術師
「……まだやってんのかお前ら」
カルテットをティフとマタドーラの元に帰した時には日は傾き、もうすぐ太陽に変わって月が辺りを照らすような暗さになっていた。そんな時間になってもまだこいつらは戦い続けている。
もう丸一日は戦い続けてんだぞ……?
「ぁ……ぅ…………」
「まだ……まぁぁぁ…………」
発声すらまともに出来ていない。
だが、お互い獲物だけは捨てず、フラフラになりながらもまだ戦う意思を捨てずにいる。
とんだバーサーカー共だ。
軍隊にでも入ったら英雄呼ばわりされる伝説の傭兵になれるんじゃないか?
「くぅ……ば、ばかああああああ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
……何言ってんだこいつら。
二人とも最後の力を振り絞って相手に向かっていき、刀とランスを交える。
しかし、そこで力尽きてしまった。
膝から崩れ落ち、お互いがお互いに平伏す。
「……悪い城山、こいつらを運ぶのを手伝ってくれ」
「ぷはっ!はぁ、生き返りましたよ」
出してやった水を一瞬で飲み干し、本当に生き返ったかの如く生気を取り戻す。
アスタは……。
「かーっ!動いた後の酒は格別だぜ!」
「おいてめえ未成年だろ!」
「残念だったなぁ……。この前誕生日を迎えて、晴れて二十歳になったんだよ!」
……そういえばこの前、妙にそわそわしてた日があったな。
多分それがあいつの誕生日だったんだろう。
「ま、こんなクソッタレな街で法なんざ守ってるだけ俺は偉いと思うけどな」
「……それもそうだな」
と、全員一息ついた所で、城山に本題に入ってもらう。
「皆さん、この世界の人間には誰しも能力があることは知っていますよね?」
「うむ、我には光を硬化する能力、楓は肉体強化、アスタは鎧、雫は早着替えといった特殊ではあるが」
「よく考えたらここにはカルテット以外唯一性の能力ばっかだよなぁ。 でも楓も発動条件が特殊なだけでよくあるか」
アスタが僕の方をちらりと見る。なんか文句でもあんのか?
「そんなことねーだろ。お前と榊だって出すものが違うだけで似たような能力だしな。本当に珍しいのは、メアとかティフのだろ」
「こんな奴と一緒の能力だなんて虫酸が走りますね」
「喧嘩を売るな」
「はい、光の硬化とあの不死身性は特筆すべきものだと僕も思います。……話が逸れましたね。とまあ、全員にある能力ですが、僕にはそれが無かった。何故だと思います?」
城山が僕たちに質問をぶつけてくる。その真意が見えない。
「うーん……。どっかに落としたとかか?」
「その答えはどうかと思うが……」
うん、落としたはないだろ。
「そうですね、でしたら誰かに奪われたとかですか?」
能力を奪われる。
それはあるかもしれない。
何故なら僕の記憶の片隅に時間制限付きとはいえ、能力を消去する能力の持ち主がいるからだ。
能力をどうにかする能力は確実に存在する。
「榊さんのが近いです。……それでは、真相を話します。はっきり言いますと、僕は一度死んでいます」
「……今なんて?」
僕の聞き間違いか?
「僕は、死人です」
「どっ、どういうことだよ⁉︎死人って……まさかてめえはゆうれ……」
「その先は言わないでくださいいいいいいいいい‼︎悪霊退散、悪霊退散んんんんんんん!」
そういえばこいつ、幽霊とかそういうの大の苦手だったな。
黄昏てたメアをボコったこともあったっけ。
「落ち着いてください。今はしっかりと生きています。佐倉さん、貴方も似たような経験があるんじゃないんですか?」
「……ある。まさかあのジジイが……?」
「はい。彼のことを人は『廻天術師と呼びます。プロフェッサーは謎ですが」
「廻天術師……。そいつが桜を殺したあいつ達を……!」
でも、僕も助けられた。
憎むべきなのか、感謝すべきか、僕は……。
「……佐倉さん、彼は人里離れた山の中に住んでいると聞きます。探すなら、そこからです」
「……ああ」
草の根を掻き分けてでも探し出して
、奴の目的をはっきりとさせてやる。それで桜も……。
「……って、ちょっと待てよ!まだ能力がない理由を聞いてねぇぞ!」
「バルガスさん、今から話します。今から話すことが、榊さんにも聞いて欲しかった事です」
「私……ですか?」
「はい。貴女の多用する霊装や特殊能力付きの服、能力付きの武器や特殊装飾などに深く関係する話なので」
特殊な服か。滅鬼黒衣や四刀・春陽、メアの眼帯など、今まで見てきた能力付きの服は意外と多い。
「能力付きの服なんて物は通常作ることができません。能力は人間のみに宿る特別な代物です」
「……でも、それが服や武器に移転してる。そこが問題なんだな?」
「そうです。能力を物に付加することなんて出来ない、しかし、それを行う方法があるんです」
「方法……?」
「その方法は……。死体から能力を切り取り、能力を転移させる能力を使用して服に移転させているのです」
死体から……?
……話が繋がった。城山に能力が無かった理由はなんらかの理由で城山は死に至り、能力を剥奪された。そして、剥奪された後に蘇生され、能力の無い普通の人間として生きてきたんだ。
「そんな……。わ、私が使っていたのは、死んでしまった人の……」
「榊、落ち着け」
「でも……っ!」
取り乱すのも無理はない。
だって能力は、その一人一人にしかない、かけがえのない大切なものなのだから。
僕は桜とのただ一つの架け橋、アスタは自らの支え。
他のみんなにも、それぞれ大切にしている理由があるのだろう。
しかし、それを何も知らずに我が物顔で使っていたのだ。
しかも、その人が最後に残した形見のような物だ。
こうなるのも、分かる。
「落ち着け。気に病む必要はない。お前は、死んだ奴に感謝しながら使ってたらいいんだ」
「……そうですね」
榊の顔に少し笑顔が戻った。
「おい、城山。まだ何かあるだろ。俺は誤魔化せねーぞ」
アスタが鋭い視線と指摘をする。
「流石です。問題は、能力を奪うため、欲しい能力を持った人間を殺して、この能力を転移させる能力者の元へ死体を持って行く者も行くのです」
「それは……」
「ええ、許されることではありません。何を隠そう、僕もそれ目的で殺された一人ですし」
城山の死因は、それだったのか。
僕も死んだことは多々あるが、あれは何度経験しても嫌なものだ。
最後死ぬとき、城山は何を思ったのだろう。
「……で、どうするのだ?ここで話していても何も始まるまい」
メアが話を進める。まとまりそうだ。
「勿論、二人に会って問い詰めます。なぜそのようなことをしたか、理由はあるか」
「そういうと思ったぜ」
「微力ながら手伝わせて頂きます」
アスタと榊が力を貸す宣言。
「我に全て任せるが良い」
「僕もそいつらには聞きたいことがある。やってやろう」
僕とメアも協力する。
「皆さん……。ありがとうございます」
「さて、いつになるかはわからんけど、頑張ろうぜ!」
アスタの叫びと同時に全員で「おー!」と手を挙げ、叫ぶ。
目指すは、廻天術師。




