振幅
「あ⁉︎」
男は突然の攻撃に困惑を隠せないらしく、しかし動揺しながらも応戦する。
男の振り上げた大型のナイフを蹴り飛ばし、その後蹴りでさらに追撃するが相手もそれを許さず、激しい打ち合いとなった。
「くっ……!」
相手もなかなかの手練れで、一度距離を置く。
「佐倉さん⁉︎何故こんなところに……」
「ん?あー、あれだよあれ。偶然通りかかったんだよ」
「……そうですか」
釈然としない表情を浮かべながらも戦闘態勢に入る。
「下がってろよ、この人数の相手はきついだろ」
「いえ、大丈夫です。僕も戦います」
そういうと、先ほど手に持っていた眼鏡と、今かけている眼鏡を交換し始めた。
まさかあれは……。
「いきますよ。『クエイク』」
空気が震えた気がした。
「城……っ」
言い終わる前に男へと向かっていく。
武器も何も持ってないのに……!
「馬鹿が!てめえが俺にっ……⁉︎」
城山が男の額に触れると、男はそのまま倒れ込んでしまった。
「次」
と短く言い放つと、他の二人に近づき、倒れ込んだ男にしたことと同じことをやろうとする。
「ひっ……く、くるなぁ!」
片割れが銃を取り出し、銃口を城山に向ける。
……が、弾丸は発射されることなくそのまま銃ごと吹き飛ぶ。
「佐倉さん、大丈夫ですのに」
「ま、一応だ。よし、やっちまえ」
僕は取り出した銃を腰に仕舞うと、城山にゴーサインを出す。そんなことをしなくても行くとは思うが。
そしてこちらに少し微笑み、二人のチンピラの額に二本の指を置く。
「震えろ」
そして、先ほどの男と同じように昏倒。
城山が一息ついた後、労いの言葉をかける。
「お疲れさん」
「ええ、ありがとございます」
「なあ、さっきのってその眼鏡の力か?」
「ええ、この眼鏡は『震淵』といいましてね、僕の触れたものを高速振動させる能力があるんです。魔力で揺らしているのでハタから見たら何が起こっているかさっぱりですけどね」
「震淵ね……。震えると覗く深淵をかけてるのか。眼鏡だけに」
「それはどうかわかりませんが……」
困ったような表情を浮かべる。
「でもさ、なんでそれなんだ?能力付きの装飾品だったら他のもあるだろうに」
「……佐倉さん、前に僕には能力が無いって話をしましたよね?」
「ん?ああ、したけど」
「これが僕の失った能力、振幅です」
……どういうことだ?
「いや、でも……」
「話は少し長くなるかもです。一旦家に帰って話しましょう。あと、この話は榊さんにもしておきたい」
「……ああ」
物陰に隠れていたメアとカルテットにも声をかけ、一緒に駅へと向かう。
「おい、くそッ離せ!」
……先ほど、僕にセクハラしてか男が駅員に拘束されていた。
どうやら、性犯罪者のテロリストだったようだ。




