最初の依頼は
なんだか取り留めの無い話になったが、これで晴れて日常に戻ることが出来る。問題が解決した訳ではないが。
ちなみに、報酬は少ししか貰えなかった。これでは慈善活動だ。しかし便利アイテムである高坂さんが、今回の依頼を受けた人達の活躍をまとめた記事を出してくれた。その中で、僕たちのことを結構大きく書いてくれたのだ。そこで便利屋の宣伝もしてもらい、少しは依頼も増えるだろう。……客はまだこないけども。
「楓さん楓さん」
唐突になんだ。
「お腹すきました」
「そうか」
「え……?『そうか。』じゃなくて何か作ってくださいよ」
「お前料理スキル0だからなぁ……。おまけに家事スキルもだ。和風少女が聞いて呆れる」
「う、うるさいです!剣の修行で忙しくてそんな暇なかったんですよ!」
剣の修行か。二年間でよく免許皆伝できたもんだ。素直に驚きだ。
「……ま、今から覚えていけばいいさ。今からなんか作ってやるから一緒にやるか」
「えぇー……面倒です……」
「てめぇ……」
そんなコントを続けていると、不意にきぃ、という音を立てて扉が開く。
「すみません、依頼をお願いしたいんですが」
「あ、どうも」
今は僕と榊しかいないので、二人で対応する。
「どうぞお掛けください。あと、安いお茶ですが……」
テキパキと接待を始める。こういうのは得意なんだな。
「ありがとうございます。……それで
、佐倉さんはいらっしゃいますか……?」
なんだ?僕に用があるのか?まあ、報道された写真では能力発動時で、しかも幼女ではない姿で写ってるしわからないか。
「僕だけど」
そう短く依頼主に伝える。
「……え?き、君が……?」
「僕だよ」
「お、俺は……」
「俺は?」
「俺はその姿の君も愛することができる!だから付き合ってくれ!」
……?
「な、何を…………」
「真剣なんだ!」
真剣か真剣じゃないか以前に、まだ事態が飲み込めていない。出会って数秒で告白だなんて何を……。
「俺の名前はルーク・コールです!佐倉さん、どうかお願いします!」
「お、おう……ルークね、はい。で、でもなんでそんな急に……」
確実におかしい。何が彼をそこまで突き動かすのか。
「理由は色々ありますが、とにかく俺と……」
「一旦黙れ!」
話の流れを無理矢理にでも断ち切るため、思いっきりルークを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたルークは壁にめり込み、そのまま倒れこむ。
「やべっ……」
「貴方の能力は強度的に最強クラスなのを忘れましたか?」
妙に落ち着いてやがるなこいつ。榊の癖に生意気な。
「と、とにかく目覚めるまで待機しておくか」
「う……」
「起きたか。さ、さっきは悪かったな」
「佐倉さん……。いいえ、佐倉さんの攻撃を受けることが出来て光栄です!」
うわ……。
「あなたドMなんですか?」
踏み込み過ぎだ。初対面の男に聞くことでは無い。
「佐倉さん限定ですけどね!」
「お前もやめろ!」
爽快に返事してるんじゃねーよ。
とにかく詳しい話を聞きたい。
とりあえずしっかりと椅子に座らせ、ロープでしっかりと固定して身動きの取れないようにする。
「いやぁ、佐倉さんに縛って頂いて光栄ですよ」
「喋るな変態」
どこぞの不死身ドM野郎を思い出す。
「んで?お前も目的はなんだ」
「ああ……言葉攻めもいい……♡」
「ひっ…………」
流石に耐えきれなくなり、榊の背中にコソコソ隠れる。
「楓さん……。なんだか本当に女の子っぽくなってませんか?」
「そ、そんなことないっ!」
「ほらほらー♪今のなんて本当にそれっぽいですよ?」
「頰を赤らめる佐倉さんも……!」
「だからお前は口を挟むなって‼︎」
「あだっ!」
机の上に置いてあった湯呑みを投げ、ルークの顔に直撃する。
話が進まない……。




