二つの告白
「僕の質問以外に何も喋るな。いいというまでだ。」
こくん、と首を縦に振る。わかってくれたみたいだ。
「それじゃあ聞くからな。お前はなんでこんなところに来た」
「こんなところ呼ばわりは酷くないですか?」
「お前も黙れ。ほら、答えろ」
これ以上事態をややこしくしたくはないので、半ば強引に話を進めていく。
何故ここに来たかの返事をゆっくりを語り出す。
「何故ここに来たか、ですか。もちろん佐倉さんにこの想いを告げようと……」
「そこだ。僕とお前に認識はない。何がお前をそこまで駆り立てるんだ」
「……えっと……」
顔を赤らめて急に黙り込む。
え?なに?さっきまでの行動より恥ずかしいことなんてあんの?
「なんだよ。さっさと言えよ」
苛立ちを覚えずにはいられない。とんとん、と腕組みしながら指を叩く。
「早く言え。さもないと去勢するぞ」
「はい!言いまーす!貴方の記事を見てそれで一目惚れしてしまいましたー‼︎」
……それだけか?それだけなのか?マジで言ってんのか?本気なのか?
「言いました!ご褒美!」
「やると思うか?」
「ですよね!でも焦らしプレイもいけますよ!」
「榊」
榊の名前を呼び、指を鳴らす。
「イェス、ボス」
僕と同じく短く返事をし、刀を構える。そう、今にも斬りかからんばかりに。
「次やると、お前の首と胴体は別れを告げるぞ。去勢よりも酷いはずだ」
「……はい」
今度こそ大人しくなってくれればいいのだが。
……話を進めよう。
「一目惚れだ?そんな適当で曖昧な理由でこんなとこまでか」
あれ?これさっき言わなかったっけか。会話が拗れてわからん。
「真剣です!逆に聞きますが、俺の何処が駄目なんですか⁉︎」
「いや……駄目ってことはねーけど……」
顔のレベルでいうと、かっこいいに分類される顔をしているし、声もいい。立ち振る舞いも異常行動を起こす時以外は、凛々しくて好感を覚える。
しかし、だ。
「僕はホモじゃない。だから駄目なんだ」
「……はい?あなた女性ですよね?」
「楓さんはまごうことなき男性ですよ。残念でしたねー」
「……いやいやいやいや‼︎何言ってんですか⁉︎この大きなお胸!引き締まった腰!愛くるしい表情!サラサラとした髪!どこをどう取ってもなまら可愛い女の子じゃないですか!」
僕の写真を見せながら熱弁を初め、体が熱くなってくる。
そこまで言われると、悪くない気分にはなるが、残念ながら事実は事実だ。
仕方がない、見せるか。
「これ、掃除するのが大変なんだよなぁ……」
無駄に慣れた手つきでナイフをくるくると回しながら引き抜き、喉元を掻っ切る。
よし、一撃だ。
「何をーーー」
「まあ、見ていてください」
「……これが僕、佐倉楓の本性だ」
ゆっくりと立ち上がり、そう告げる。調子の確認の為、首をゴキゴキと鳴らす。
うん、問題ない。
「そ、そんな……」
両手を地面につけ、がくりと頭を垂れるルーク。好きになった相手が、実は男だなんて、僕でも嫌だ。
「……悪いな、なんか。本当に」
どうしていいかわからなく、とりあえず謝っておく。これ以外にやるべきことが思いつかない。
「佐倉さん……いえ、佐倉君」
敬称まで改め、僕の名前を呼び直す。
「なんだ?」
「申し訳ありませんが、まだ気持ちに踏ん切りがついていません。しっかりと俺を振ってください。お願いします」
……まぁ、これくらいはいいだろう。このままでは残酷すぎる。
「ちょっと向こう向いてろ」
ルークを別の方向へ向かせ、その間に能力を再発動し、再度此方に向き直させる。
「ルーク・コールさん。私は、貴方とお付き合いすることが出来ません。ごめんなさい」
「……そうですか。ありがとうございました。……それでは、邪魔者は帰るとしますね」
「ああ、良かったらまた来い。僕で良いなら力になる」
「ははっ。希望を持たせないでくださいよ。……さようなら」
「じゃあな」
お互い別れを告げる。それは二度と会えない恋人同士の様に……。
「あの、なんでこんないい話っぽくなってるんですか?さっきまでホモがどうのこうの言ってたじゃないですか」
「さあ。雰囲気に呑まれたんじゃないのか?」
哀愁漂うルークの背中を二人して眺めながら、そんなムードぶち壊しな会話を交わす僕たちであった。




