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四度目のテロリスト

「すっげえなここ……」

 依頼を受け、数日かけて来た街は元の世界より技術が進んでそうな近未来な都市だった。

「おいおい……こんな街があったのかよ」

「ふふん。私は知っていましたがね」

 そういえば言ってたなそんなこと。

「いや……お前が言ってたのは日本と変わらないって事だけだ」

「そ、そんなことないですし」

 そんなことあるから言っているんだぞ?

「というか文化レベル違いすぎるだろこれ……。なんでこうなってるんだ?」

「それはですね。この世界にしか無い物質を現代科学に織り交ぜた結果こうなったんだそうです。あとは、この世界は版権とかそういうのがない無法地帯なので他人の技術を互いが互いに流用してやりたい放題したというのがこの街の発展の理由だそうですね」

「なるほどな……」

 手に持っているパンフレットを読めば一発で分かりそうだが、榊の顔を立てるために何も言わない。

 しかし……。

「浮いてるな」

「おう、浮いてる」

「浮いておるな」

「……何がですか?」

「お前の格好に決まってんだろ‼︎」

 明らかに街に合っていない服装をしている榊に一喝いれる。

「え……?そ、そんなことないですよ‼︎私のどこが浮いているんですか!」

「浮きまくりにもほどがあるっつーの‼︎僕は制服だし問題ない。アスタもそれなりに大人っぽい服装だし問題ない。メアは……痛々しいけど都会に行けばこんなの結構いるからまぁ問題ない。で?お前はなんだ?お前だけ時代背景が江戸時代じゃねーか‼︎」

「うっ……!そ、そんなことは……‼︎」

 否定する榊。

 否定、出来てると思うか?

「そんなことあるっつーの!例えるならばお前は電車に乗ってる和服のおばあちゃんだ‼︎」

「お、おば……」

 15歳におばあちゃんは応えるものがあったらしく。膝と手をついて真剣に悩み出す。

「おばあちゃん……いや、違う……。違う……。違う筈……。私はおばあちゃんじゃ…………」

 ブツブツと独り言を言い始めた。

 時代背景江戸時代ガールがブツブツと独り言言っている姿は他人にも痛々しく映るらしく、周囲の目が痛い。

「と、とりあえず移動してはどうなのだ?」

 ナイス、メア!

「そ、そーだなぁ!いどーするか!」

 お前もナイス。

 未だへたりこんだままの榊の手を引いてその場を走り去る。

「依頼者に貰った前金がある!それでこいつの服を買うぞ!」

「そ、そうだな!これじゃあまともに仕事すらできん‼︎」

 とりあえず適当に目に入った服屋に駆け込む。

「はぁ……はぁ……。榊、さっさと選べ」

「おいコラ。何やってんだてめぇ」

「あ?誰だお前。話に入っ……ごめんなさい」

 銃を持った人たちがいっぱいいる。

 え?なに?ここって世紀末なの?

 ってほぼ世紀末状態か。

「えええええええええ⁉︎都会の服屋さんってこんなとこなのおおおおおお⁉︎」

 落ち着けメア。

 そんなわけないだろ。

「うるせーぞクソガキ。死にてーのか?」

 というか最近テロリスト率高くないか?

 この数日間でもう4回目だぞ。

 なに?巻き込まれ系主人公かヒロインかがこの中に混ざってんのか?

「なんか疲れたな……」

「疲れてんのはお前だけじゃねえんだよ。俺もだ」

 これ含めて二回しか戦ってないくせに……。

「勝手に喋ってんじゃねぇ。殺すぞ」

「いや……もう殺してくれていいよ……」

「楓さん……‼︎」

 僕の名前を呼ぶ榊。

 目で合図し、戦闘態勢に入ってもらう。

「いいんだな?言っとくがマジだからな?」

「あ、出来たら首撥ねて……」

「……それぐらいは聞いてやるよ」

 大きな剣を僕の首へと入刀する。

「きゃあああああああ‼︎」

 店員のお姉さんの声が店中に木霊する。

 それを皮切りに店内に叫び声が連鎖し始める。

「おい、黙れ!こいつみたいに殺すぞ!」

「誰みたいって?」

 正常に能力が発動した。

 テロリストの一人を店外へと蹴飛ばす。

「て、てめぇ‼︎」

 銃を乱射してくる。あぶねーな。

「榊!」

「わかりました!」

 刀を振り回して他の人間に当たりそうな弾を斬っていく。

 頼んでおきながらいうことじゃないが、人間技じゃないな。

「蹴散らすぞ!」

「了解‼︎」

 一斉に戦闘を開始する。

 前みたいに長引かせる訳にはいかない。

 総員全力で掛からせてもらう。

「絶鬼流抜刀術一と二の型……始双‼︎」

 一とニって。

 しかし混合技の威力は高く、細切れ……とまではいかないが、威力の殺される木刀では普通出せないような威力を誇っている。

「うおらっ‼︎」

 あいつ普通に戦えたのか。

 腕だけに鎧を纏い、どんどんと殴り倒していく。

 エルヴレインは全てを纏うと自動的に武器が出てくるらしい。

 なので一部だけに留めておくと、装備を出さずに済むという。

 メアは相変わらずの無駄な詠唱を唱えながら気絶させていく。

「これで打ち止め!」

 最後の一人を倒し、一息つく。

「終わったか……?」

「そのようですね」

「……おい、楓、榊、メア、構えろ。一人残ってる」

「なかなかやりますねぇ」

 奥から仰々しい態度の男が現れる。

 メガネをくいくい上げる知的キャラか。

 武器は……棒。

 棒術使い。

「お前で最後か?」

「ここで隠す意味もありません。そうです、僕で最後ですよ」

「その口調をやめてください!キャラが被ります‼︎」

 え?気にするところそこ?

「楓さんも!貴方と一人称が被ってるんですよ⁉︎」

 心底どうでもいいんだけど。

 しかもキャラ被ってるとかいうけどおまえはただ敬語ってだけで知的じゃないぞ?むしろ馬鹿に分類される。

「ええい、もういいです!私が戦います!」

 何一人でキレてんのこいつ。別にいいけどさ。

「他の人もいるんだぞ。間違ってもいつもみたいな力任せな戦い方はするなよ」

「承知しました!」

 能力で日本刀を出す。

 心配だ……。

「行きます」

 堂々と宣言、抜刀の構えをとる。

「ふっ……君に僕を倒せますかね?」

 あちらも戦闘態勢に入る。

 僕らは今のうちに客を逃がそう。巻き込まれたら大変だ。

「勝てるんかねぇ」

「あいつの実力はお前が一番知ってるだろうが。信じてやらないでどうする」

「別に死んでくれても構わねぇんだけどよぉ」

「……なんでこの二人はここまで仲が悪いのだ?」

「さぁ。どーでもよすぎて忘れた」

 確か洋風と和風の戦いだったような。

 でも今はその理由だけで喧嘩してねーだろ。

 ぶっちゃけ本人たちも忘れてるだろ。

 ……おっと、始まるな。

「絶鬼流抜刀術一の型……喰!」

 いきなり絶鬼流を使うのか。

 なかなか頭に来ているようだな。

「はっ!」

 しかし、持っている棒で刀を受け止める。

 初めて絶鬼流が止められるところを見た。

 こいつは一筋縄じゃいかないぞ、榊。

「くっ、絶鬼流抜刀術二の型……双鎌そうれん

 絶鬼流の真髄、二連撃が出る。

「これは受け止めれそうにないですね……ならば」

 男が刀に向けて攻撃を放つ。

 神速の剣に真っ向から立ち向かうというのか。

 命知らずというか……。

 しかし、その攻撃は相殺され、地面にヒビが入る。

 そんなに高威力なのかあれ。

「ぜ、絶鬼流抜刀術壱ノ太刀……御神楽!」

 広範囲の斬撃を放つ……が、難なく躱され、受け流されてしまう。

「どうしました?もう終わりですか?」

「ま、まだ……!はぁっ‼︎」

  絶鬼流を使わずに普通の乱戦に攻撃を切り替える。

 一撃必殺の絶鬼流が効かないとなるとこうするしかないだろう。

「無駄です。貴方の攻撃は僕には効きません」

 ぼちぼち攻撃を開始する男。

 こいつ、強い。

「榊、一人で大丈夫か⁉︎」

「問題っ!ありません!」

 戦いながら返事をする。

 舌噛むぞ。

「……絶鬼流、かんなぎ!」

 初めて抜刀術以外の技が出た。

 そこまで余裕が無いのか。

せん夜伽よとぎかしわ天恍てんこう‼︎」

 まさかの五連撃。

 次々と技を出していくが、それも受け流され、地面のヒビがどんどん大きくなっていく。

 ……ん?流石にヒビ入りすぎじゃないか?

 いくら受け止めたとはいえ、榊の技は基本的に切り裂く技だ。そんなに地面が陥没したりヒビが入るような力の入り方はしてるはずないんだけどな……。

「なるほど、そういうことかよ」

「アスタ、何か分かったのか?」

「よく考えたら当たり前なことじゃねえか。あいつの動きを見ろ。避けれる攻撃も全て受けて流している。つまり、あいつがやってんのはダメージを地面に逃がしてるってことだ」

 ダメージを地面に……?

 だからあんなに地面に影響が出てるのか。

「榊!」

「ええ、気づいています。今対策を練っているところです」

 攻撃の手を休めず、しかし思考も止めず。

「絶鬼流、もとめ!」

 ガードを切り上げて崩し、もう一本刀を出し、次の技へと移る。

「絶鬼流抜刀術壱ノ太刀……御神楽!」

 相手の胸に直撃する。

 勝負ありか?

「駄目ですねぇ。全然ですよ」

 あの状態から地面に受け流したってのかよ。

 これじゃ無敵じゃねえかよ。

「の、のう。雫は大丈夫なのか?」

 心配を始める。

「大丈夫だぜメア。あいつは馬鹿だけど馬鹿じゃない」

「なにいってんだお前。ニュアンスは伝わるけど言葉としておかしいぞ」

 ともかく、信じてるぞ。榊。

「……仕方ないですね」

 刀を鞘から抜く。

 得意の抜刀術では倒せないと判断したのか。

「今度は何をするつもりです?」

「貴方を倒すんですよ。その前に名前をお教え頂けませんか?」

 敬意を評したのか、名前を聞き出す。

「城山。城山悠人です」

「城山さんですか。良い名です」

 日本人だったのか。

「それでは、参ります」

 場に緊張が走る。

 これで決められなければ多分、榊はこいつを倒すことが出来ない。

 そう全員が読み取ったのだろう。

 僕らはおろか、ギャラリーも誰も喋ろうとしない。

「やぁっ‼︎」

 榊が出せるであろう最高速で城山へと向かっていく。

「何をするつもりか知りませんが、結局は同じです‼︎」

 今度は城山から攻撃を仕掛ける。

 しかしそれを躱し、鞘をしっかりと握る。

 何をする気だ?

「絶鬼流……!」

 城山の下に回り込み、攻撃へと移る。

 鞘を心臓目掛けて投げ、こつんと当たり、刀を鞘へと全力で戻す。

「がっ……」

 戻した刀ごと上へと城山の体を上げ、攻撃を受け流せない状態へと変化する。

「喰らえっ‼︎」

 そのまま地面へ叩きつける。少し動くが、力尽き、それ以降城山は起き上がらない。

「納刀術、もどし

 決め台詞を決めた所で、榊の側へと駆け寄る。

「やりましたよ、皆さん!」

 こいつに勝てたことが相当嬉しいのだろう、いつになく上機嫌だ。

「はは……負けましたよ」

 ようやく起き上がる城山。

「私の勝ちです。で、貴方は何故ここを襲ったのですか?」

 真実へと歩み寄る。

「申し訳ありませんが僕にもわからないのです。上からの命令で……。ま、任務に失敗した僕はすぐに処分されると思いますけどね」

 切ないこと言うなよ。気分が悪くなる。

「……その任務とやらは知りませんが、私達と共に来ませんか?今、少しでも人手が欲しいのです。どうせ死ぬのなら戦ってから死にませんか?」

 おい、なにいってんだお前。

「……ふっ、いいでしょう。本来なら無いはずの命、貴方に捧げましょう」

 お前もOKしてんじゃねーよ。

 何が捧げましょうだ。

「よろしくな、城山!」

 えっ、認めていく感じなの?

「大義を全うするのだぞ」

 マジで?

 ……。

「仲良くしようぜ、城山!」







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