絶対悪
「で……。あなた方のやるべきこととはなんなのですか?」
「そういえば話してなかったっけか」
店側の計らいによって無償で服を提供してもらえることになり、榊とメアが吟味している間店の外で待っている時間を活用して城山に依頼内容を説明する。
「俺たちのやるべきこと……依頼はだな、とある組織の壊滅だ」
「……続けてください」
「最近各地で暴れまわっている組織……アブソリュートエビルとかいうらしいな。絶対悪っていかにもって名前だな」
「そ…………」
「そ?」
「それって僕のいた組織じゃないですかああああ‼︎」
「マジで⁉︎」
なんてこった。服屋の時点で戦いは始まっていたのか。
「なんか教えてくれよ!些細なことでもなんでもいい!依頼はただぶっ潰してくれってだけなんだ。明確な目的がないとなんか潰しにくいからなー」
「そうですね……我々……いえ、僕の元いた組織はただ力を蓄えるためだけに動いています。その力を一気に放出し、ここらあたりを支配下に収め、それを拠点に周りをどんどんと支配しよう、と」
悪の組織のやりそうなことだな。
支配、か。
「あ、ちなみにあなた方の御一行はめちゃくちゃマークされてますよ。ぬいぐるみ屋の件、眼帯の件、そして今回の件。ぶっちゃけ眼帯の辺りから幹部クラスの人間を送りこもうとしてましたよ」
やだ、なにそれ怖い。
アスタと榊が苦戦した相手より更に強い幹部クラスって。
簡単にいきそうはないな。
……面倒な仕事押し付けてくれやがって。
しっかり話は聞いておくべきだった……。
「僕は隊長クラスです。幹部クラスまでいくと僕の数倍強い、と考えて頂けると幸いです」
「数倍かよ……。それ、俺たちだけでなんとかなんのか?」
「相手の情報はある程度僕がお教えします。……残念ながらこの中で一番弱いのは僕のようです。しかし、そういう面でカバーしていこうと思います」
いや、残念ながら一番弱いのは多分僕だ。
武器を上手く扱えても、先程のように受け流されたり、エロガキの様に一撃で決められたりすると一溜まりもないんだ。
僕にはアスタの様な鎧も、榊の様な必殺技も、メアのような特殊な技もない。
桜の能力を除いては、な。
「お待たせしました!」
店の中から榊とメアが出てくる。
「おぉ……」
……なんでそんなに死にそうな顔をしているんだ?榊よ。
「な、何故私が洋服を……」
ああ、そういうことか。
「似合ってるではないですか。彼女は何が不満なのです?」
「こいつはな……洋風の物が大っ嫌いなんだよ。触るだけで失神しそうになる」
「なんとしょーもない……」
「あ、お前もそう思うか?」
「は、はい……」
初めてこのアホな体質に同感してくれる奴が現れた。
ありがたい。
「誰が……しょーもない……ですか……!」
「反論する前にその体質治せよ。まるっきりアホだぞ」
まごうことなきな。
「これからどうすんだ?俺たちは」
「……そうだな。とりあえず、突入だ」
「え、いきなりなんですか?いきなり行くんですか?」
城山が異議を唱える。
「そりゃいきなりいくだろ。俺たちが把握してるだけで既に幾つもの物が略奪されてるんだ。そこにいるメアなんて能力付きの物を取られてる。さっさと潰さないと被害は広がる一方だ」
最近のお前シリアスモードばっかだな。
説明が楽でいいよ。
「なるほど……。確かに僕が略奪した中でも危険度の高いものがありました。早急に行きましょう」
だから今すぐ行くっていってんじゃねーか。
「っと、その前にお前の能力を聞かせてくれ。能力を把握出来てないといざというとき困る」
先程の戦闘を見る限り、衝撃を受け流す能力……?
「僕の能力はですか……僕、能力ないんですよ」
……ん?
ちょっと待て。
能力が無いってどういうことだ。
この世界に来た者は全員能力を与えられるって……。
「驚くのは無理もありません。……まあ、それはいつか説明致します。それまではどうかご容赦を……」
……こいつにもなにかあるんだろう。
自分で話すと言っているんだ。根掘り葉掘り聞くわけにはいかないか。
「そうか。いつか自分で話すなら今はほっとくさ」
「ありがたいです。しかし、戦闘をする手段はしっかり確保しております。先程見せた技、失堕というのですが、あれは僕に当たった攻撃全てを地面に受け流せるのです。……ただし、僕の足が地面についている限り、ですが」
なるほど、だから体が浮いた途端榊にやられたのか。
「ま、それがお前の能力だと思っとけよ。武器が上手く使えるだけの僕よりよっぽど強いと思うぞ」
「……ありがとうございます」
って、僕はなに自分のこと卑下してるんだ。
ま、いいか。




