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輝けし者

 街についた。

 誰かと街に二人でいくのは最早恒例といったものか。

 早速宣伝活動を開始するとしよう。

「……って何をすればいいんだ」

「考えておらぬのか……」

「そういうお前はどうなんだよ」

「我か?貴様が考えているだろうということを考えていたが」

 小学生に頼ったのが馬鹿だったか。

 こんな振る舞いをしていようが所詮は子供だったな。

「……帰るか」

「いや、待て。向こうから不穏な気の流れを感じる」

 不穏な気の流れって。

 また面倒ごとか?

 しばらく関わる気はないぞ。

「ついてくるのだ」

「おい、ちょ、待てよ!」

 勝手に歩き出すな。

 その方向に何があるんだよ。

 先へ先へと進むメア、それを後から追いかける。

 物陰に隠れながら素早く行動している姿は尾行にも見える。

 一体何があるんだ。

 自然と僕にも緊張が走る。

 いつでも抜けるようナイフの柄に手をかけ、様子を伺う。

「……あれだ」

 建物の陰からメアの指し示す方向を見ると、そこには……。

「おい、ふざけんなよ」

 そこには子どもが喜びそうなぬいぐる屋があった。

「ふざけてなどおらぬ。あの店から邪悪な気配を感じるのだ」

 いや……お前の能力はそんな何かを察知するようなレーダー型の能力じゃないだろ?

「とにかく突入するぞ、武器を構えろ」

 あまり信用は出来ないが、いつでも武器を抜けるよう準備をしながら、メアと共に店に入る。

「ははははは‼︎ここに入ってしまえばこちらのものよ‼︎」

 そう叫ぶと同時に辺りにあるぬいぐるみを物色し始める。

「おいこら。邪悪な気はどうした」

「邪悪な気?何それ美味しいの?というかそんなの感じ取るなんて危ない人だなぁ」

「HAHAHA!いいのか?この家の財布は僕が握っているんだぞ?いくらお前がごねてもそこらにあるぬいぐるみは手に入らないんだぞ?ならばとるべき態度はわかるな?」

「す、すんませんした……」

「わかればいいんだよわかれば」

 年上の権力でねじ伏せる。

 やっぱり権力は最高だぜ。振りかざされるのは大っ嫌いだけどな。

 そして僕が行って良しと許可すると、パタパタと店の奥へ駆けていき、ぬいぐるみを物色し始める。

 普通にしているとただの可愛い女の子なのにな。

 そういえば榊の時もこんなことを考えたような気がする。

 普通じゃない奴しか僕の周りにはいないのか?

 そんなことを考えていると、店の奥の方から慌ただしい声が聞こえてくる。

 なんだ?

「てめえら!この女の子がどうなってもいいのか⁉︎」

 幼女を盾に、ロリショタとその親たちを威嚇する屈強な男。

 おいおい。

 メアの妄想が現実になっちまったじゃねーか。

「って人質になってんじゃねーよ!」

 人質の幼女はメアだった。

「まったく……面倒ごとに関わりたく無いって言ったのに……」

 普段なら元の姿のままで戦うが、人質がいるこの状況では速攻に決めざるをえない。

 ナイフを首元に添える。

 最近自殺スキルが上がってきて、痛みを感じる前に死ぬことが可能になり、かなり死にやすくなったのだ。

「さっさとこの店の人形をぜんぶ寄越せや!ほら!ほら‼︎」

 ……言ってることはあれだが、子供に悪い影響を与えないよう、粉砕しないように倒さないとな。

 一気に首を掻っ切り、膝をつき、意識がなくなる。

 そして同じ体勢のまま意識が戻り、素早く踏み出す。

「くく……我を人質にとったことを後悔するがよい……」

 目の前に光の硬質化したものが現れて僕の拳を包み、勢いを緩める。

 そして、弱まった勢いのまま、屈強な男を殴り飛ばす。

 勢いが死んだことによって、爆散させずにすんだ。

「て、てめぇ……その能力まさかか……」

 こんなところまで影響が出るとは……。

 まったく、嫌になる。

「『グリけしッター』、メア=クロムロードじゃ……‼︎」

 え?

 僕じゃないの?

「またその名か……嫌になる」

「ほ、ほんとだ!メアちゃんだ‼︎」

「メアちゃーん‼︎こっち向いてー‼︎」

 え?なに?なにが起こってんの?

「さ、さっさと退散するぞ!」

 ちゃっかりぬいぐるみを買いつつ、僕の手を引いてその場を立ち去る。

 何がどうなってんだよ……。



 路地に入り、乱れた呼吸を整える。

「おい、なんだあれ」

「あれはだな……我がとある大会に出たときのこと……」

「え?いきなり回想に入んの?」

 しかし、無視して話を続けられる。

「我は優勝賞品である特殊能力付きの眼帯を懸けて戦っていたのだ」

 眼帯って。

「手に汗握る戦いであった……。我は強そうな黒いロングコートのお兄さんを倒し、ついに念願の優勝の座を奪い取ったのだ」

 黒いロングコート?痛々しく聞こえるが、僕も人のことを言えない。

「しかし、問題はその後だ。突然、高坂と名乗る謎の女が現れてな……」

 またお前か‼︎

「『幼女が大会に優勝して、大騒ぎだときいてね、君に異名を付けに来た』と突然名付けられたのが先程のグリけしッターだ」

「……お前もあいつの被害者なんだな」

「いや、そうでもないのだ。確かに、ああいうファン紛いの者は迷惑だが、我がここで生きていけてるのも彼女の力が大きい」

「と、いうと?」

「嫌でも買ったものがタダになるからな」

 ……なるほど。そういうことか。

 妙に納得した。

 僕自身にそんな経験はないが、桜が結構値引きとかしてもらってたからなぁ。

 幼女の力は偉大だということか。ちくしょうめ。

 軽く舌打ちをする。

「しかし……案外適当な理由で異名ってのは付けられてるんだな。拍子抜けだ」

 腕を組み、思案顔でうなずく。

「そんなこともないはずだ。こんなくだらない理由で認定されているのは我ぐらいだろう。他はもっと崇高な理由で……」

「いや……僕の方がくだらない自信がある」

 そういえば貴様も異名持ちだったな、と言わんばかりの顔で僕を見る。

「腕相撲だぞ?しかも僕の方は桜のおこぼれだ」

 そう言ったところで、突然階段状の固めた光を出現させる。

 何がしたいんだ。

 そしてその階段をのぼり、僕の肩に手を置いて。

「……ふっ」

 鼻で笑われた。

「おいおーい。あんまり僕を馬鹿にするんじゃないぞ幼女。自暴自棄になった人間の怖さを思い知りたくはないだろ?」

 変な脅しをかける。

 自分でも何を言っているかわからない。

「お、おう」

 ……生半可な返事しやがって。

「まあいい。そろそろ帰るぞ」

 アスタと榊の喧嘩が終わってる頃合いだしな。

「うむ。そうするか」

 先刻買ったばかりのぬいぐるみを抱きしめ、路地を出て歩き出す。

 僕もその後を追いかける。

 と、その時だった。

「嬢ちゃん。その人形寄越しな」

 怖そうな顔をしたおっさん達が僕達を取り囲む。

 え?なに?




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