水臭い
「というわけで参戦するからな」
部屋内に沈黙が訪れる。
何を言っているんだこいつというみんなの目が痛い。
「いや……。具体的に話してくれんと俺たちもどうしたらいいかわからんから」
確かに。
主語を欠いては話が伝わらないからな。
主語を欠いた僕が言うことじゃないが。
「つまり……あの今度開かれる大会に参戦するってことだよ」
そういうとアスタと榊が一斉に立ち上がる。
「おうそうか!って聞き流せるか!今更元の世界へ帰りたくなったのか⁉︎」
「ということは私たちと一緒に居るのが嫌になったということですか⁉︎私たちの事が嫌いになったんですか⁉︎楓さんの馬鹿ああああああああああああああ‼︎」
あまりの勢いに少したじろぐ。
そして、いつもの終末思想、ご苦労様です。
心の中で敬礼。
「まあまあ、二人とも落ち着くっすよ。楓君にも何か理由があるのかもしれませんぜ」
ありがとうティフ、君がいてくれて助かった。
僕だけではこの馬鹿二人の暴走を止められない。
「ティフの言うとおり理由があるんだよ。わかったか?」
「その理由を早く教えてよー」
エロガキの催促。
「そうだそうだ!早く教えろ!」
「早くお願いします!」
こいつらは多分祭りとかで小遣いやったら数分で使い切って帰って来るタイプの奴らだな。
先走りすぎだ。
マタドーラはマタドーラで気にしない振りをしつつもチラチラと此方を見て、目で訴えかけている。
控えめながらも主張の激しい奴だ。
「説明するからちょっと黙っててくれよ?」
「はい!」
全員一斉に返事をする。
うん、素直ないい生徒たちだ。
「参戦する理由はな……」
「なるほど、悪人達も参戦するから、それを見過ごすわけにはいかない、と。そういうことか。なんだよ、早く言ってくれればよかったのに」
散々言おうとするのを邪魔したのは誰だ。
「それは見過ごせませんね、迅速に処分しませんと」
榊が刀を携えて立ち上がる。
「はーいそこ、今からどこにいくんですか?」
「闇討ちです」
「闇討ちです。じゃねーよ馬鹿!お前参加者が誰かすらわかってねーだろ!悪人だって命があるんだぞ!」
とまぁ、こんなことをいっても盗賊達を有無言わずに死体の山に変えたこいつに通じる訳はないだろうが。
「……それもそうですね」
ありゃまー。
通じちゃったよ。
こいつもしかして勢いだけで生きてるんじゃないのか?
「確かに人を殺すような人たちを元の世界に能力付きで解き放つ訳にはいかないっすね……」
わかってくれて先生嬉しいぞ。
まぁ、別に参加したくないならしなくていいんだ。お前達にそこまで付き合わせる義理はないしな」
正直言って僕だけでどうにかなる問題ではない。
しかし無闇に巻き込む訳にもいかない。
嫌がる奴を無理やり引き入れた所で結末は破滅だからな。
最低桜と二人だけで行こう。
「義理がない、だと?」
「馬鹿ですか楓さん」
えっちょっと待ってなんで罵られてんの?
「水臭いっすよ。楓君がやるならみんなやる筈っすから」
「お前ら……」
なんていい奴らなんだ。
「まぁ、正直面倒臭いけどねー」
「……嫌ならやらなくていいんだぞ?」
「ごめんなさいやらせてください」
素直でよろしい。
「あっしは戦闘能力ないんでせめて皆さんの壁にでもなるっすわ」
少し申し訳なさそうにティフが言う。
最初ティフの能力を見た時は驚いたが、戦闘能力が無いのは応えるものがある。
見た所武術の経過もなさそうだし、よくよく考えるとティフと戦ったときも自ら攻撃せずに、ジリ貧作戦をとっていた。
一見ヘラヘラしてるようでもこいつもこいつなりに苦労しているということか。
「俺は熱線の精度を上げておく」
それだけの言葉を残して家を出る。
今でも十分精度はいい筈だが、 本人的には納得していないようだ。
というかお前はあくまであのビームを熱戦と言い張るのか。
「僕も充電しとくよー」
お前充電式なのかよ。
「桜さん、私と街で装備を整えに行きませんか?」
「うん、いいよ♪」
榊よ、お前の装備を整えるというのはただ服を見に行くだけじゃないのか?
そして桜誘っていくのかよ。
「……あ、僕に使えそうな飛び道具あればついでに買って来てくれないか?出来れば銃とかで頼む。一番嫌なのはブーメランとかそういうやつな」
用件だけ伝える。
僕は僕であの盗んだナイフの特徴を掴んで、上手く使えるようにならないといけない。
「んじゃ、俺はエルヴレインの点検でもするとするか」
ぶつぶつと詠唱を唱えてエルヴレインを出す。
……なんか装備していないと間抜けに見えるな。
こうして各々準備を始め、来たる大会の日まで待機するのであった。




