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始めての夜

  僕が能力を解除するには一度死ぬ必要があるらしい。

「って死んだらそれこそ本当に終わりじゃねーか!」

  纏まらない思考に追いつかない頭。

  死ぬ?

  そんなの出来るわけないだろ馬鹿。

「安心しなさい。死ぬと言っても死んだ瞬間に肉体は再生します。胸にナイフなどが刺さった場合でも肉体が瞬時に取り除くので」

「安心しろって言われてもね……」

「ただし女性の体でいる場合は能力を発動でき、どんな箇所に受けた傷でも毒を飲み込んでも能力解除という代償を払い生き延びることができますが男性の体に戻った場合能力の要である頭に致命傷を貰えば普通に死にますし毒なんかに対しては一般人と同じ耐性しかありません。」

 なんか……いろんな制限があるみたいだな。

「ややこしいからこいつの能力を簡潔に纏めてくれ。一緒にいる仲間の能力を把握できないままじゃなにもできん」

  ナイス。

「つまりです。今発動している能力を解除するには死ぬこと。女性の体では無敵。しかし能力解除した男性の体の方はそんじょそこらの一般人と変わりありません。能力を再発動するには頭や心臓が無事な微妙なラインで死ぬこと、傷の修復中に死ぬとどっちの体でもアウトです」

  微妙なラインでって。

「頭と心臓さえ守って死ねば僕はまた復活出来るんだな?」

「そういうことになります」

  なるほど。

  最初からそう言ってくれれば良いのに。

「ん、まあ僕たちは行くわ」

 これ以上聞くことは無いのでとりあえず進むことにした。

 ……進むってどこにいけばいいんだ……?



  なんの目的もないままただ呆然と立ち尽くす。

  会話の種も無いため、お互いが気まずい空気の中必死に話題の種を探す。

  ここで一つ会話の種になりそうなものが見つかった。

  なんでこいつは目的もないのにあんなところで玄人っぽい物腰で僕に話しかけてきたんだ?

  よし聞いてみよう……。

「あのさ」

「あのさ」

  被った。

  これはきつい。

  今僕達の間では壮絶なる心理戦が行われている。

「……」

  おいやめろよなんか喋れよ。

  出方なんか探ってんじゃねーよお願いだから喋れよ。

「あの……お前はなんであんなところで僕にゲームの熟練キャラよろしく話しかけてきたんだ?」

  お前が何も言わないからこっちから話しかけてやったわ。

「あー……そうだな……。あの……」

「はっきり言えや」

「か、かわいい女の子だったから……」

  絶句。

  空いた口が塞がらない。

  なに顔赤くして気持ち悪いこといってんだよ。

「あの……そしてあわよくばにゃんにゃんを……」

  塞がらない口をぱかぱかさせて言葉を発する。

「気持ち悪い……」

「……!」

「イママデアリガトウゴザマシタコノオンハショガイワスレマセンワー」

  顔を先程とは違う意味で真っ赤にさせて反論する。

「なんだよ!お前だって男なんだったらわかるだろ!」

「わかんねーよ!わかったとしてもそんなアホみたいな理由で見ず知らずの奴に話しかけるほど僕は馬鹿じゃねーよ!」

「ぐぬぬ……」

「そんな顔でぐぬぬとかいってんじゃねーよこの馬鹿!」

  変態を罵倒する口が止まらない。

「くそ……こんな変態な奴だとは思わなかった……」

「へっ変態とはなんだ!」

  ぎゃーぎゃーと口げんかを繰り返しているうちに日が暮れてきた。

  ……この世界に来てから初めての夜だな……。

 


 


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