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魔法の世界へようこそ

なんだこれは。

 目の前には見知らぬ世界、でかいおっさん、そして、二つの球体。



  普通の高校。

  チャイムの音が聞こえると同時に何人もの生徒が一斉に教室へと入ってくる。

  それを傍目に見ながらただぼぅっと椅子に座っているのはこの僕、佐倉楓。

  名前のせいで誤解されがちではある

 がまごうことなき男である。

  なんて漫画の主人公の様な脳内自己紹介を済ませたところで先生が足音をどんどんと鳴らしながら教室に入ってき、やがて教壇に立つ。

  そして名簿を開き、出席をとる。

  いつも通り。

  このいつも通りがどんなに素晴らしいことか。

  テロリストは攻めてこないし女の子が空から降っても来ない。

  漫画に出てくるような主人公の様な生活なんてごめんだね。

 とか思ってるうちに佐倉楓、僕の名前が呼ばれる。

 その時だった。

  もの凄い轟音を立てて扉が開いた。

  開くというよりは扉が吹き飛んだと言った方が適切かもしれない。

  その扉があった長方形の空間から体の大きなおっさんが教室にずかずかと入ってくる。

  さらにその足は勢いを緩めることなく…….僕の方へ歩いてくる。

  いつも通りが崩壊していく音が聞こえる様だ。

  おい、やめろよ、まだ僕は言葉を発してない。

  あ、そんな風に掴むなって‼︎

  ちょっと待て‼︎

 なに僕を呑もうとしてるんだ⁉︎

 死ぬのか?僕は死ぬのか⁉︎

  物語の序章なんかで終わるのなんて嫌だああああああああ……。

「死ね……おっさん」

  薄れゆく意識の中で呟いた一言だった。



  僕はおっさんに呑み込まれた。

  こんな人間は他にいるだろうか?いや、いないね。

  断言できる。

  そしてこれは副作用なのかな?

  下を向くと二つの柔らかそうな物体。

  触ると本当に柔らかかった。

「なんだこれは」

  女の子って……こんなに柔らかいんだな……。

  とかそんなギャルゲにありそうなセリフを思い浮かべる。

  正直思考が追いつきません。

「……なあおっさん、ここはどこなんだ?」

 少々声が震えながらも自分の身に何が起こったかを確認する。

  ついでに二つの球体については放置しておく。

「ここはまほうのせかい」

  頭おかしいのかこいつ。

  抑揚の無い発音でお花畑なこと言いやがって。

「あなたはせんしとしてえらばれました。あなたののうりょくはしょうしょうとくしゅですががんばってください。では」

  すっと音を立ておっさんが消え、目の前広がるものは見知らぬ世界と視線を下ろすと見える二つの球体だけになった。

  魔法の世界?能力?アホか。

  なんで魔法の世界なのに現代バトル漫画にありがちな能力系なんだよ。

  馬鹿らしい。

  とりあえず先程のおっさんを探すため、魔法の世界の第一歩を踏み出した。

  後から振り返ってみれば。

「よし‼︎いくか‼︎」

  といった感じで冒険が始まりそうな雰囲気で始めた方がかっこよよかったと思い直すのはだいぶ後になってからであった。



  大きな塔がある。

  これは本当に大きい。

「すごい……」

  とついつい漏らしてしまった。

「ここに始めて来た人はみんな言うぜ」

  声のする方を向いてみると屈強そうな男が笑いかけながらこっちを見ていた。

  おっさんとの遭遇率が高いなおい。

「ここには来たばっかりか?」

  「ああ、なんか変なおっさんに呑み込ま……」

 ここまで言ったところで詰まった。

  こんなことを言うと確実に変な奴だと思われる。

「ああ、この街だけじゃなくてこの世界にも来たばっかりだったのか」

「……今なんと?」

「だからこの世界にも来たばっかりだったのかって」

「あぁ……やっぱりここは異世界的なやつなんですね……」

 溜息。

「俺とずっと前にあのおっさんに呑まれてよ、そっからずっとここの住人さ」

  へぇ、ここにいる奴全員おっさんに食われたのか。

「この世界初心者なら俺がいろいろ手ほどきしてやるぜ!」

  第二のおっさんが仲間になった。


 おっさんの名前はアスタ=バルガスというらしい。

  日本人じゃないんだな。

  言葉が通じるし日本人かと思ってた。

「というかあんた日本語わかるんだな」

「この世界ではどんな言語を話しても相手には自分の使っている言葉に聞こえるみたいだ」

  すっげーご都合主義。

  「というかお前女なのに言葉使い悪いな。男みたいだ」

  目を背けていた問題が唐突にカムバックしてきた。

  永遠に旅に出てくれてたら良かったのに。

「どうでもいいだろ」

  こうして問題君を送り出すことが出来た。

  バイバイ問題。

  お前のことは忘れないよ。

「しかしなんだ。あのおっさんはなんの目的で俺たちをこんなところに連れてきたんだか」

 街をぶらぶらしながら尚も第二のおっさんとたわいもない会話を続ける。

  ここでふと疑問になっていたことを解消するために口を開く。

「そういえばここにきたばっかりの時に例のおっさんに能力がどうのこうのとか言われたんだけどさ」

「ああ、そのことか」

  なにか知ってる様な様子だ。

「丁度今向かっているところにつけばお前の能力がなんなのか把握できるさ」

「能力……ね」

  今だここの世界観が掴めないままよくわからないものの意味不明な効果を告げられるとはなんとも置いてけぼりにされているようでいい気分ではない。

  しかしあのおっさんが言っていた特殊な能力も気になる。

  合点のいかない点も数あるが今は歩みを進めるしかないようだ。



「ついたぞ」

  小さな小屋を指差しこちらを見るアスタ。

  かわいい幼女だった萌えポイントだったのに。

 ぎぃと古めかしい木の扉が音を立て、ゆっくりと開いていく。

「いや早く開けよ」

 本当にゆっくりと開くので待ちきれずに扉を無理やし押し切ってやった。

  中に座っている老婆が驚愕の色を隠せずにいる。

「よ、ようこそ」

  老婆は少々言葉を濁らせながらもにこやかに挨拶をする。

「どうも」

  こちらも必要最低限の挨拶をぶっきらぼうに済ます。

「早速ですがあなたの能力を読み取らせていただきます。そのためにきたんでしょう?」

  まったくその通りだ。

  すると先程までにこにこと笑っていた老婆の顔から表情が無くなる。

  僕の目をじっと見つめて。

  見透かすように。

「……終わりました」

  今ので終わったのか。

「あなたの能力の判定をします。」

  おお、ついに。

  「あなたの能力は……。」

  もったいつけずに早く!

  「性質は妖、具体的な能力は肉体の超強化です」

  「いやさ、いきなり妖がどうのこうのとか言われても困るんだけど」

  なんだよ妖って。

「今から説明します」

  ならいいけど。

「この世界には能力というものがあります。それは把握していますね?」

「ああもちろんだ」

「一口に能力と言ってもその分類は多岐に渡ります。魔法や超能力や妖術、そういったわかりやすい能力だけではなく頭脳が発達したりするのも能力の一種といえますね。あなたの能力はなかなか特殊なようで……。あなたの持つ能力は妖術で身体能力を飛躍的に上昇させる、そういった能力なのですが……。性別まで変わってしまっているなんて例は始めてです」

  アスタがこっちを見て声を荒げる。

「お前やっぱり女じゃないのかよ!なんかおかしいと思ったんだ!」

「うるせえな……。おっさんがみっともなく叫ぶなよ」

「俺はまだ19歳だ‼︎おっさんじゃねえ!」

「あら失敬」

  軽く返す。

「謎は多いがとにかく君の能力はとても強力だ。はっきり言って今まで見てきた中で最強クラスの実力を持っていると思う」

「嘘だ⁉︎こんな奴にそんな最強クラスの能力与えちまっていいのかよ神様!」

「そんな顔で神様とか言われるとちょっと引くからやめてくれないかなぁ」

 引きつった笑顔を演出して相手を最大限煽る。

「……天は二物を与えずって本当だな。力は強くて見た目は良くても一番肝心な性格が悪い」

「見た目良くて最強なら二物貰ってるじゃねーか」

「うぐぐ……」

「というかそんなことはどうでもいいんだ。早く男に戻る方法を教えてくれよ」

  半ば放置していた老婆に再び注目し、答えを催促する。

「君は能力でその姿に変化している。ならばその能力を解いてやればいいだけだ」

「なるほど……」

  まあ妥当な答えだとは思うがね。

「んでその解除方法は?」

「解除方法は……。一度死ぬことだ」

 神様……。俺の耳はどうかしてしまっているらしい。


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