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便利屋との戦いの終幕

「始める前に自己紹介だけしておくっす」

「いらん」

 今から殺されるかもしれんのに何言ってんだこいつ。

「あっしの名前はティフ=エンドール。しがない便利屋でさぁ」

「今しなくていいって言ったよな⁉︎」

 馬鹿なのかこいつ。

「闘いを始める前に言っておくきまさぁ。このキャンペーンを受けたの君たちが初めてなんすよ」

「どういうことだ?」

「つまりこのキャンペーンは君たちを見て思いついたんでさぁ!」

 うわぁ……ものすごくどうでもいい情報がきた。

「殺しの依頼を受けないのにルールが殺しありっておかしいと思わなかったんすか?」

 そういえばそうだな。

「気づいてましたよ?私は」

 ここで榊が話に入ってくる。

 さっさと終わらせたいんだからあまり話を長引かせないでくれよ。

「そんなことするメリットはなんなんだよ」

「……まぁ、諸事情があるんすよ。後は楽しみたいから?」

「楽しみたいだけで人を殺すなよ‼︎」

 なかなか危なそうだぞこいつら。

「ま、そんなことはどーでもいいんで」

 今までずっとヘラヘラしていたエンドールの空気が変わる。

「さっさと殺りあいましょうぜ」

 勢い良く直進してくるエンドール。

 馬鹿めが。

 「死ねええええええええ‼︎」

 相手の顔面に合わせてパンチを繰り出す。

「あぐっ‼︎」

 正直拍子抜けだ。

 エンドールはそのまま先程まで立っていた場所まで吹き飛ぶ。

「……これで終わりかな?」

 ……おかしい。

 思いっきり殴ったのに傷が一つもついていない。

「防御の能力か何か持っているのか?」

「へへへ、それは自分で暴いて欲しいっすよ‼︎」

 一度吹き飛はされたと言うのにエンドールはまた直進してくる。

 次は……。

「ぐあっ‼︎」

 脳天に思いっきり踵落としを入れる。

 流石にこれでは立ち上がることは出来まい。

「ふふふ、まだまだ僕は答えてないよ」

 やはりダメージを受けていない。

 ……どうなってるんだ?



「はぁ……はぁ………んん……‼︎」

 かれこれ数時間は殴り続けてるがまったく答えていない。

「ほらほら、息があがってきてるよ?」

「うる……さぁい‼︎」

 今度は心臓目掛けて手で突いてみる。

「こぽっ……」

 口から血を吐くエンドール。

 これは流石に……。

「いけた。とか思った?」

 最初から変わらない様子でいるエンドールがゆっくりと立ち上がる。

「なん……だよ………お前……‼︎」

 いくら最強の身体能力を持っているとはいえスタミナにも限界はある。

「ふふふ……カラクリを知りたいかい?」

「……」

 聞いたら負けな気がする。

「あっしの能力はね、受けた傷を瞬時に再生する能力なんっすよ」

 勝手に話し出した。しかし、再生か……。

 それならこの無尽蔵の再生にも納得がいく。なるほど合点がいった。

 問題はこれをどう解決するかだ。

「再生って体が再生するだけなのか?」

「そうっす。けどそれがどうかしたんですかい?」

 よし、それなら攻略法を見つけた。

 もうひとつ攻略法があるがそっちを試した方がいいのか迷う。

 ……まあ後者の攻略法は榊の手を借りないといけないので前者を試すか。

「ん……よし……」

 奴の攻略法とは……至って地味だがとりあえず相手を手刀でぶった切りまくって血を体外に大量に放出してもらい、動けなくなるまで続けるというものだ。

 如何せん地味な作戦だがこれともうひとつしか勝ち目がなさそうなのでこの作戦を実行する。

「あああああああああ‼︎」

 勢い良くエンドールに向かっていく。

「無駄っすよ」

 向こうから攻撃が飛んでくることはないが無限の回復力を持っているエンドールの言うことは正しい。

 しかし今回は違う。

 とりあえず奴の四肢を切断する。

「うっおすげえ」

 そんなこと言う割にはまったく応えてない。

「まだ……まだ……これからだ‼︎」

 そこから更に馬乗りになり、体をどんどんぶった切っていく。

 結構精神的にくるものがある。

「なにが目的なんすか?」

「教えねーよ」

 どんどんエンドールの身体を切ったり刺したりしていく。

 思ったより血が出ないな。

「あ、もしかして出血多量狙ってたりしますかい?」

 ……ばれてたか。

「無駄っす。だってすぐに再生するんだから出る血の量なんかたかが知れてるんでさぁ。このまま出血多量狙うなら餓死狙う方がまだいいと思うっす」

「……そうかよ」

 エンドールから離れる。

「まあ即興で考えたなら結構いい作戦だと思うけどさ、それじゃあっしは倒せないっす。降参しますかい?」

 誰がするかよ。これでも駄目なら……第二プランを実行するか。



「榊、何度も悪いけどなにが杭的な奴を貸してくれ」

「杭……ですか?」

「あるか?」

「ありますよ」

 あるんかい。なんであるんだよ。まあ、その方が都合がいい。

「どうぞ‼︎」

 舞台の外から杭的な物が飛んでくる。

 しかし、受け取りきれずにごとんという鈍い音を立てて地面に落ちる。

「……」

「……」

「……」

 僕、エンドール、榊の間に短い沈黙が流れる。

「……さて、やるか」

 杭的な何か……小さな丸太と言った方が妥当か。

 丸太を持ち、再度エンドールへと向かっていく。

 これが駄目ならもう僕に打つ手は無い。

「もう……何回目か分からないけど……ん……いくぞ‼︎」

 もう走れる体力も無いがそれでも力を振り絞って勢いをつける。

「それで内部にダメージを伝える気ですかい?内部破壊をしてもすぐに再生しちゃうんすよ?」

「そんな気……さらさらねーよ!」

 エンドールの腹を全力で殴り、大きな穴を開ける。

「これじゃあやってることさっきと変わらないですぜ?こんなんじゃあすぐに……」

「黙って……見てろっ‼︎」

 先程榊から受け取った丸太をエンドールの腹に突っ込む。

「……え?」

 余裕のある表情がエンドールの顔から消え、膝をつく。

 苦悶に満ちた表情で僕を見上げる。

「……最初からこれやっとけばよかったな」

「ぐ……うああああ……‼︎」

 エンドールが痛みに耐えかねて転げ回る。

 エンドールの腹は既に再生しており、先程突っ込んだ丸太が再生を阻害している。

「丸太を抜いて欲しければ降参するんだな」

「へ、へへへ……悔しいけど……あっしの負けっす……」

 苦しそうながらも笑顔を浮かべるティフ=エンドールに敬礼。

「やりましたね!」

 榊が舞台に駆け寄ってくる。

「はぁ……もう疲れたよ」

 本当に疲れた。

「それじゃあこの依頼、約束通り無料で受けさせてもらっちゃうっす。あと……早くこれ抜いて頂けますかい?」



 無事(?)依頼を取り付けることが出来た僕たち。

 もうすっかり夜になってしまった。

 夜だというのに街はまだ賑わっており、夜の静けさを感じさせない。

「せっかくですしどこかに寄って帰りますか?」

 榊の提案。

「そうするか」

 快諾する。

「それじゃあ新しい服を見ていいですか?」

 あっこいつそのために僕を引き止めたのか。

「……まあいいよ」

「本当ですか⁉︎やったー‼︎」

 ……子供かこいつは。

 そういえばいつも大人っぽい仕草だから忘れていたけどこいつ年下なんだよなぁ。

 子供みたいな19歳もいるのに大したもんだ。

 ……そういえばアスタのことをすっかり忘れてた。



「は、腹が減って死ぬ……」










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