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神器

 途中色々あったものの、特に何の苦労もなく街についた。

 街は相変わらず賑やかで心なしか心が踊る。

 中央に聳え立つ大きな塔は何度みても圧巻だ。

 それにしても。

「なんであんな塔建てたんだろうな。こんな世界観じゃあんな大きな物建てる技術なんかないだろうに」

「この世界の人々は全員元いた世界の人なので技術自体はあるんですよ。ただ機材を作る時間がかかるだけなんです。ショベルカー一つ作るのに何年も掛かることもあるそうですよ?」

「へぇ……そんなもんなのか」

「場所によっては現代の日本と変わらないくらい設備が整った都市もあるそうです。一度行ってみたいものですね」

 日本と変わらない都市。

 そんなところにいたらここが魔法の世界ってことを忘れてしまいそうだ。

 全員が全員刃物や銃以上の殺傷力を持っているであろう世界。

 目の前を歩いている奴らを一瞬で殺戮できる力を自分は持っている。

 と同時に目の前の奴らも僕を殺戮できる力を所持している。

 そう考えると生きた心地がしない。

「この世界に法律とかないのか?」

「あるにはありますよ。でもその法律はあまり役に立ってませんね……」

 役に立たない法律なんて始めて聞いた。

「どんなのだ?」

「正当防衛を認める。以上です」

 まーたざっくりとした……。

「これだけを守って人々は生活しています」

「泥棒したら駄目とか人を殺したら駄目とかもっとあるだろ⁉︎」

「そんなことをしようものなら店の人に返り討ちにされたり逆に殺されたりされかねないので誰もしないんですよ。あと

 泥棒なんかしたら街の人が一斉にその泥棒を攻撃し始めるから治安はある程度いいんですよ」

 暴力で成り立った平和とは怖いものだな。

「おっと話が逸れたな。あの塔はなんの為に作られたんだ?」

 話の逸れって恐ろしい。

「あの塔には神器と呼ばれる特殊な武器を使う人たちが住んでいるんですよ」

 神器?

 強そうだな。

「神器ってなんなんだ?」

「神器とは特別な製造方法……その製造方法は不明ですが、それを用いて作られたとても強力な兵器です」

「どれくらい強いんだ?」

 素直に気になる。

「その性能は私がこの間使った断罪の衣を遥かに凌ぐ程です」

「その断罪の衣の性能を知らんのだけど……」

 なんだ断罪の衣って。

「ふふ、それは今度お見せしますよ」

 いたずらに笑う。

 笑ってればかわいいけどアスタと喧嘩を始めたときなんか大魔王をも殺しそうな顔してるしな……。



「ババァのところに行きたい」

「……楓さんババ専なんですか?」

 どうしたらそんなことになる。

 こいつやっぱり頭が暑さでやられてるのか?

「誰がババ専だ……。この前お前が言ってた武器の扱いの件だよ。もしかしたら元の姿で居るときに何かあるんじゃないかと思ってさ。いい機会だから一回死んで男の姿でババァの元に行ってみたいんだよ」

「なるほど。でもどうやって一回死ぬんですか?やっぱり痛いんでしょう?」

「まあ仕方ないよ。いざという時何が起こってるかわからなくて困るのは嫌だしな」

 死ぬのは心底嫌だけれどもさ。

 問題はどこで死ぬかだ。

 ババァはすぐに復活するとか言ってたけど意外と時間がかかる。

 死体を見られたら厄介そうだ。

「……なぁ、ダメージをどっかに肩代わりできる装備とかないのか……?」

「?」









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