第5話 「質問」
毎日毎日このくそ暑いのに学校……
そして変なうわさ、もういや
これといって事件は起きないし偵察っていうのか、これ?
授業にもついていけず、唯一数学がましとはいい全部欠点……
暑いし欠点だらけだし……オールレッドって感じ、意味わからんな……
けど、幸いにも教室には冷房がかかっており学校に入ればあと涼むだけ
これの繰り返し、なにが楽しいんだろ……
あんなに楽しみにしてたのに……もう、だる……
今は3時間目の休み時間、美月はこんな事を考えながら机のもたれかけてぐったりしていた
「きみ14歳だよね、何でこんなところに……」
今日の美月は誰とも顔も合わせてなかったが年齢をあっさり暴かれて驚いた
誰なのかを確認するとあの今東だった。
そして無視した。
「ひょっとしてまだ怒ってますか?あれは機関の命令だったので仕方がなく……」
それでも美月は無視した。このようなやり取りを何回かし
そのうち今東がこんなこと言ってきた
「君が監禁されていた事知りたくありませんか?」
美月もさすがにこれには食いついた。そして今東と次の休み時間、屋上に集まる約束をした。
それからしばらくして美月と今東は約束どうり屋上に集まった。美月が想像してたより人は少なかった。
居ても2,3人……どうやら美月は高校の屋上はたくさんの人で賑わっているイメージがあったようだ。
そんなイメージを崩され少しがっかりしている様子。しかし美月はその事についてはあまりがっかりしていない
本当に美月ががっかりした理由はとにかく……汚い……
空き缶がカランコロンと音をたて転がっている。それも十数個。
そして色とりどりのビニール袋がふわふわとコンクリートの地面すれすれを飛び、やがて手すりに引っかかる。
それどころではない、何かを食べた後のゴミが多すぎる。紙パックに、おにぎりを包んでいたと思われる、サランラップ
コンビニなどで売られている、お弁当のゴミ、箸。ゴミと言うゴミがありとあらゆるところで転がっている。
そんなありさまだ。美月は本気で掃除してやろうかと思った。
だが、美月のがっかりの仕方が異常である。と言うのもここはお嬢様高校である。
そんなお嬢様高校がこんな汚れているなんて……美月はそこにがっかりしていた。
こんなに汚れているのにも訳がある。今月のここの掃除当番が男子なのである。それだけだ。
そうして、汚い汚いと思いつつも歩き、今東と目があった。
「きましたか」
なにか、目と目から火花が散ったような気がした。
「どういう事?何であんたがあの事を知ってるの?」
美月の質問責めだった。今東は次々にその質問に答えていった。
美月が監禁されてた理由は機関の天敵となる人物の確保、そして記憶が失われてたのは機関ために働かせるために
機関が意図的に記憶を操作したためだと言う。だが記憶を失ったと同時に能力の弱体化は計算外だったらしく
機関としては戦力外になってしまったため監禁という方向に、もしかしたら能力がまた開花するかもしれない
ということも考慮しての判断だったらしい、しかしこの事を今東が知っているという事は、監禁していた機関は死封機関……
しかし、奇跡を起こせる美月が捕まるはずもないと思われるが寝ているところを襲われてはどうしようもない
「いいの?こんなこと言って……機関が許すの?」
「許すはずがありません……ですが君には本当の事を伝えたかったし、なによりも本当は君の事を救いたかった……
それと、せめての罪滅ぼしというか……だからこの事は内密にしていただけませんか?」
「いいけど……」
「ありがとう」
「それと、さっきもしかしたら能力が元に戻るかもしれないみたいなこと言ってたよね?」
「あ、はい。正しくは能力が開花するという事です」
また美月の質問責めだった。しかし今東もまた次々その質問に答えていった。
神剣には強さの段階がある。レベル0からレベル10までで表しており、電撃を起こしたり、火を操ったりする能力は
どうあがいてもレベル6が限界であるという。つまり今の美月や夏輝はレベル6より上にはなれないという事、
では、どのような能力がレベル7以上になれるかというとそれこそ奇跡を起こしたりしないといけないらしい
「そんなのは不公平じゃない」
「と思いだがそこでたまに能力が開花する者が現れる」
「開花……具体的にはどんなの?」
またしても美月の質問責めである。
神剣は心の強さで剣の強さも変わる、もっと強くなりたいとか、守るべきものがあるとかそういった強さを心に持てば
自然と剣は強くなる。美月と今東が戦った時がいい例だろう。しかしさらにそれを超えると能力が開花して、別の能力が
扱えるようになったりする。すると前の能力は失うのかとなればそんなこともなく扱えたりする。それでレベル7以上の力を
身につけた者も少なくはない、いやほとんどの者がそうなのだ。初めての能力でレベル9になった、以前の美月が天才というべきなのであろう。
あと、これは豆知識だが神剣は持ち主の力を保存している器であり破壊すると能力が極限まで弱まる。極限まで弱まるが完全に消えることはない
というのも持ち主の能力が完全に真剣に依存しているわけではなく、あくまでも保存されているからだ。これにより無駄な体力などの減少を防いでいる。
「ふーん……なるほど、開花か」
「わかりましたか?」
「だいたい、けど思ったんだけど能力が開花してレベル7以上になった者がいるって言われても
いまいち実感がわかないな……例えばどんな能力があるの?」
「僕の属してる機関の殿様は、ありとあらゆる病気や怪我を治す力しかも……」
「待って殿様? 一番上の人の事?」
「あ……失礼私たちは殿様と呼んでいるんです。」
「それに、ありとあらゆる病気や怪我を治す力そんなの奇跡を起こせばできる事じゃない?」
美月はちょっと誇らしげに聞いてみた
美月の説明責めはまだあった、今東もそれにまた答える
ありとあらゆる病気や怪我を治す力そんなの奇跡を起こせばできる事じゃない?……それがそこまでうまくはいかないらしい
確かに昔の美月の能力はすごいものだった。あともう少しでレベル10入りできそうなほどに、しかし
そこまですばらしい能力だとかわりの代償が大きいらしい、代償というのは自分の寿命……本来ならばこんな事もない。だが、
美月がその能力を取得したのは7歳の時、美月はその若さゆえ扱い切れなかった、というわけでレベル9になったという事だ
「簡単そうに説明してますが、ものすごい計算力もいるんです。君が放電する時も計算するでしょ?」
「確かに……という事は私は計算力の代わりに寿命を使ったということだよね」
「そう言う事です。けど発電とは比べ物にならないくらい難しい計算を君は7歳でしてたんです。
仕方ありません。といっても実際に能力を使った事があるのは2,3回ときいてますよ」
「ふ~ん……やっぱり天才だったんだ……」
美月は記憶を失わされた事を恨み始めた
「そういうことです。それとおもしろい話が、あ……予鈴が」
チャイムは空気を読まずに鳴った
「では、またの機会に」
今東はそう言うと帰って行った
美月は複雑な心境で帰ろうとした時、夏輝に声をかけられた。
どうやら物陰に隠れて美月たちの話を聞いていたようだ。
そして、わざとわしく聞いた。
「何話してたんだ?」
「監禁の事とか神剣の事とか、あ……」
「監禁?やっぱりあいつらか……」
夏輝はそう言うとどこかに行こうとした。
「待って、どこ行くの?」
美月は不安そうに聞いた。
「上に報告する」
「待って!この事は内密にして、今上に報告したら私たちの機関が今東の機関に何かするよね、何かはわからないけど……
そうすると今東の機関は今私たちと関わってる、今東を疑うよね!」
「それがどうした、第一あいつは俺らにひどい事をした。罰があたってもいいんだよ」
「それは機関の命令で仕方がなく……」
「……お前あいつに何吹き込まれた? まぁいい俺は報告してくる、お前は授業受けてろ」
「待って、何も吹き込まれてないから、とにかく上には言わないで」
美月は涙目でそう言った
「おいおい、泣く事かよ。……わかったよ。黙っといてやる」
「……ホント……?」
「ああ、親から女泣かせたら駄目だって言われてきたしな。そのかわり骨付きカルビおごりだから」
「……うん!!」
今、思えば、女におごらすって……
あ! 女としてみてないからか。




