泥団子作り
夜の雑談配信。
画面にはソファに並んで座る樹と朝倉。まったりした空気の中、コメント欄には「おかえりー!」「今日も尊いな」「何の話するんだろ」と、穏やかな声が流れている。
樹がふいに口を開く。
「なあ、バカなことしたくね?」
その唐突すぎる発言に、コメント欄が一瞬止まり、
「え?」「なに?急にどうしたw」「不穏」「こわいwww」
と、笑い混じりにざわつき始める。
朝倉がゆっくりマグカップを置いて、ちらと横目で樹を見た。
「……例えば?」
「んー……泥団子作りとか?」
「www」
朝倉が不意に吹き出す。
「今それか。……いや、いいぞ。別に嫌いじゃない」
コメント欄:「泥団子!?」「まさかの小学生ムーブ」「好きすぎる展開きた」「泥団子に命かけそうな二人」
樹は勢いよく立ち上がりそうな勢いで言った。
「よっしゃ!!今から公園行こうぜ!!」
「おい、今夜だぞ?」
「夜の方がテンション上がるだろ。真顔で泥いじってる27歳と高校生……逆に朝のほうがヤバくない?」
「……確かに。日が落ちて、誰もいない公園の片隅で、黙々と光らせる泥団子……」
コメント欄:「通報案件w」「その光景はアウト」「目撃者がトラウマになるレベル」
「……全く馬鹿げてるな」
朝倉が肩を竦めると、樹は得意げな顔で詰め寄る。
「で、やる?」
朝倉はしばし考えるふりをして、真顔で答えた。
「……いいぞ。どうせやるなら完璧なやつを作る。ピカピカに光るやつな。俺、手抜きはしないから」
コメント欄:「朝倉が本気出した」「職人来たw」「光りすぎて宝石扱いされそう」「どこまで全力なんだよこのふたり…」
樹が笑いながら胸を張って言う。
「マジで最高だなお前。お前みたいに全力でバカできるやつ、他にいねぇよ。……マジで、お前のこと、愛してる」
それに朝倉は、少しだけ口元をゆるめて返す。
「ああ、俺もだ。馬鹿なことでも、お前とやるなら価値がある」
コメント欄が盛大に湧く。
「愛の泥団子!?」「言葉の重さよ」「お前ら本当に付き合ってるのか?(知ってた)」「泣ける泥ネタやめろw」
樹がソファから立ち上がって叫ぶ。
「じゃあお前ら、俺たち今から泥団子作ってくるからな!配信外でな!!ピッカピカのやつ作ってやる!」
「完成したら写真見せて」「戦利品待ってます」「光沢チェックするわ」
朝倉もゆっくりと立ち上がり、カメラに軽く手を振りながら言った。
「……ピカピカに仕上げてやるよ。……お前と一緒にな」
コメント欄:「優勝」「泥団子で泣かされたのはじめて」「夜の公園で磨かれる愛」「推せる。泥でも推せる」
画面がエンディングに切り替わる中、リスナーたちは名残惜しそうにコメントを残していった。
「バカなことを本気でやる2人、最高だった」
「愛ってこういうことなんだな……」
「もう無理、尊い」
「泥団子作りがこんなにロマンチックだとは思わなかった」
配信は終了したが、リスナーたちの興奮と笑顔はそのまま夜のネットに残り続けていた。




