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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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朝倉のRP

ある日、配信者仲間たちがTRPG配信を企画した。今回のセッションは初見の人でも楽しめるよう、ルールは簡易なもの。GMゲームマスターを務めるのは配信者の一人・タケシ。そして朝倉は、GM補佐として参加。NPCノンプレイヤーキャラクターをすべて演じる役を引き受けていた。


 


朝倉はカメラ前に座りながら、やや無表情気味に口を開く。


「配信では珍しいジャンルかもしれないけど、こういうのも好きだ。今日はGMの補佐でNPCやる。よろしく」


 


セッションが始まると、いきなり朝倉が演じる最初のNPCが登場。

チャラい商人という設定だったが——


 


「よぉ、おたくら旅の人?ちょうどええタイミング。今ならこの『魔除けのお守り』、特別価格で出しとくけど?」


 


軽快な口調に変え、テンポよくセリフを回す朝倉。

声のトーンもさっきとは全然違い、まるで別人。聞いていた配信メンバーが一瞬で静かになる。


 


樹「……ちょっと待て、急に演技うまない?」


タケシGM「なんか今のだけで商人の人生感じた……」


コメント欄

【え、声変わった?】【マジで商人が出てきたみたい】【朝倉さん、まさかの本職?】


 


次に出てきたのは、情報をくれるマダム風の人物。

朝倉は姿勢を正して、口調もふわっと柔らかく変える。


 


「まあ、珍しいお客様ね……あなたたち、最近この街に来た方かしら?」


 


どこか艶のある、しかし重みもある声色。

キャラクターの年齢や背景が、声と表情だけで伝わるようだった。


 


他の配信者「マダム出てきた瞬間、空気変わった……」「え、さっきのチャラ男と同一人物なのこれ……?」


樹「ほんとに朝倉か?……というか、これどこで練習したんだよ」


 


朝倉は、表情こそほぼ変わらないが、トーンやリズム、息遣いの差でまるで別の人間になっていく。NPCが変わるたび、声も人格も自然と切り替わっていくのだ。


 


「……あー、あの学者?気難しくて嫌われてるけど、知識だけは本物だな」


 


「フッ、ここは通さねぇよ。通りたいなら――命を賭けてみな?」


 


「まあまあ、みなさん落ち着いて?争いは美しくありませんわよ」


 


コメント欄

【切り替え早すぎてプロ声優】【もうプレイヤーよりNPC見ちゃう】【TRPGってこんな面白かったっけ?】


 


タケシ「なんかごめん、俺GMだけど今日一番仕事してんの朝倉じゃん……」


 


終盤、物語は核心へ。

朝倉が演じる「謎めいたボス」が現れると、プレイヤー全員が黙り込む。


その声は低く冷たく、淡々としていながら、どこか哀しさを含んでいた。


 


「選んだのは君たちだ。……私が望んだ未来じゃない。けれど、抗う理由もない」


 


完全にそのキャラ“そのもの”として喋る朝倉に、セッション全体の空気が一気に緊張感に包まれる。


 


樹「いや……これ、もはや声の演技だけで泣けるやつ」


他の配信者「NPCでここまで空気持ってくって……ちょっと反則じゃない?」


コメント欄

【こんなの初めて見た】【声の演技だけでボス戦の空気が変わった】【朝倉さん、TRPG界の刺客か?】


 


セッションが終わったあと、配信者たちは一斉に口を揃える。


 


タケシ「いやマジで……今日の主役、朝倉だわ」


樹「普段あんまりしゃべんないのに、演技入ると急に喋るじゃん。びっくりした」


朝倉「……役に入ると自然に出る。黙ってるのは、演じてないときの癖みたいなもん」


 


その冷静な返しに、コメント欄が再び沸く。


コメント欄

【朝倉さんのギャップやばすぎ】【演じるとスイッチ入るんだな】【この人、もっと演技系の配信出てほしい】


 


こうして、“NPC全部一人で演じる男・朝倉”の名が界隈で知れ渡ることとなった。

TRPGセッションという枠を超えて、「魅せる演技」の場になったこの配信、アーカイブ入り確定だった。

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