大食い企画
配信開始直後――
画面に映っているのは、大食い系で有名な配信者たち。個性バラバラな男女8人がずらっと並び、目の前には10人前以上の料理が所狭しと並んでいる。
・ローストビーフタワー
・10合炊いたガーリックライス
・唐揚げ山盛りプレート×2
・特大ハンバーグ
・パスタ(明太クリーム&ペペロンチーノ)
・ケーキとシュークリームのデザートタワー
「いくぞー!制限時間90分! よーい、スタート!!」
【胃袋戦争開幕】【絶対無理な量で草】【夢のようなテーブル】
序盤は大盛り上がり。誰もが笑顔で食べ進める。
・ノリ全開の陽キャ→「この唐揚げ、ひと口が拳やん!」
・咀嚼早い系のストイック配信者→「パスタは先に攻め切る!」
・実況と食レポが得意な女配信者→「このハンバーグ、肉汁の爆弾~!」
……などなど、みんなバラバラなテンポで挑んでいく。
が、40分経過。
徐々に口数が減り始める。表情が重くなり、フォークが止まる配信者も。
「……さすがに、10人前って……すごいな……」
「パスタが、減らない……」
「米、腹にくる……うっぷ」
【もう無理そう】【限界きてるな……】【唐揚げがラスボスすぎる】
そのとき。
画面の隅に、サッと黒いシルエットが映る。配信者のひとりが言う。
「……あ、ていうか言ってなかったけど――実は今日、サポートに朝倉くん来てくれてます!」
「えっ!?」「マジ!? いたの!?」
カメラがそっと振られ、控えめに立っていた朝倉が画面に映る。
シンプルな黒の服に、髪をひとつにまとめたロング。端正な顔立ちに、一瞬コメント欄がざわつく。
【モデルの人!?】【なんでいるの!?】【画面の質感上がった】【待ってかっこよすぎて内容入ってこない】
「他人のチャンネルだから、遠慮してた。手伝いだけのつもりだったけど……」
「……さすがにこの量、食べきるの無理そうで……ねぇ?」
朝倉が静かに、席の端に腰を下ろす。
そして、皿の前にスッと手を伸ばし、ナイフとフォークを手に取る。
「じゃあ……少し、食べるね」
その瞬間から。
“静かな暴食”が始まった。
誰よりも姿勢がよく、所作がきれいで、無言で上品。
けれど――速い。
肉は一口で切り分けて完璧な咀嚼、パスタは絡ませて迷いなく口へ、ガーリックライスは一度で三口分ほどをキレイにまとめて運ぶ。
「え、えっ、ちょっと待って……え?」
「え、ペペロンチーノもう半分なくなってる?」
「米……皿の米が……消えていく……」
【待って早い】【なんでこんな静かに!?】【人間技じゃない】【でもマナーは完璧】【何者なんだ……】
甘党女子のいちごもコメント欄で反応。
「朝倉くん、ほんとにスイーツ以外も食べるんだね!? その胃袋、私にもください!!!」
【甘党仲間!】【ケーキ争奪戦の再来】【人類の希望】
全体の進行が再加速する。朝倉の静かな大食いに感化された他の配信者たちもラストスパートに入り、残っていた唐揚げとハンバーグを一気に攻略。
ついに90分の制限時間を目前に――
「……食べきったあああ!!!」
「うそ……ほんとにいけた……」
【まさかの完食】【神回すぎる】【朝倉が裏のMVP】【隠しキャラじゃなかった、ラスボスだった】
終盤、飲み物を手にした樹が、コメント欄に現れて一言。
「朝倉、食べてるときだけ性能変わってるの怖いな……普段そこまで食べないくせに」
「うん。普段は活動するにはあの量で十分。燃費はいい。でも、胃の容量が多いだけ」
「……怖いな?」
【そのうち“胃袋配信者”ってタグつきそう】【朝倉くんの全力こわい】【静かに全部持ってく】
最後は全員で並んで「ごちそうさまでした!」の挨拶とともに、記念撮影。
その中央で、ナイフとフォークを丁寧に置いた朝倉が、静かに小さく一礼している――そんな姿で、配信は幕を閉じる。
コメント欄の最終行:
【“静かなる食神”爆誕】




