初デートの待ち合わせ
日曜日。晴天。
少し暑いくらいの陽気の中、駅前のロータリーで樹はそわそわと立っていた。
手元のスマホで時間を確認する。待ち合わせの時刻ぴったり。だけど、透はまだ来ない。
「……いや、あいつ絶対時間守るやつだし、もう来るはず……」
そう思った瞬間、カツン、カツン、と靴音が聞こえてきた。
振り返ると、そこに現れたのは――
「……透?」
透は、白いシャツに黒の細身のパンツという一見シンプルな格好だった。
けれど、そこに品の良い装飾が重なる。
左右の耳には揺れるイヤリングとイヤーカフ。首元には細い鎖のようなネックレスが光り、手元には黒と銀を基調とした指輪がいくつか光っていた。
そして、10センチはありそうなピンヒールで堂々と立つその姿は、まるでモデルのようだった。
目元はうっすらと赤みを帯びたラメで飾られ、睫毛が濃く長く、睨むでもなく見つめるでもない目線が、なぜかドキリとさせる。
唇は真紅。けれど派手になりすぎず、どこまでも品がある。
「待たせたか?」
透が静かに口を開いた。
その声は、少し低く、凛として、でもどこか柔らかい。
樹はしばらく言葉が出なかった。
なんだか、夢でも見てるようだった。
「……すげえ、綺麗すぎて……ちょっとびっくりした」
「そりゃありがとう。でも、今日はデートだからな。オシャレぐらい、するさ。」
ピンヒールのブーツは10cmをゆうに超えていそうだったが、その足取りはまるで裸足のように軽く、まったく不安定さを感じさせない。目元は赤く輝くアイシャドウが彩り、唇は真っ赤に塗られていて、化粧も完璧にキマっていた。
「透…すげぇ…」思わず見惚れた樹がそう呟くと、透は微笑みながら軽く片足を上げてI字バランスを見せる。
「ピンヒールでもバク転くらいはできるぞ。…見せないけどな。」
「いや、今やられても困るけど…てか、マジで運動神経どうなってんの…?」
「鍛えてるからな。あと好きな人とのデートだし、全力でオシャレした。似合ってるか?」
「……ああ、似合いすぎててちょっと俺が落ち着かねぇわ。」
そう言いながらも、樹は顔を真っ赤にして水族館のチケットを見せた。
「じゃあ、行こうか。楽しみにしてたんだろ?」
「……ああ、楽しみにしてた。」
ふたりは並んで歩き出す。
歩幅を合わせるように、透は少しゆっくり歩く。
その姿は、どこか誇らしげで――
そして、ずっとそばにいてほしいと、思わせるような存在感だった。




