拘束
いつものように二人で配信しているのと樹が
「そういえば、お前俺を縄で拘束したことあったよな?」
朝倉はちょっとだけ肩をすくめる。
「……ちゃんと血が止まらないように結んだし、筋肉も圧迫してない。俺の中では割と優しい拘束だったぞ」
「それが怖いんだよ」
《“優しい拘束”って何だよ》《朝倉さん用語集に追加》《プロの香りがする》
コメント欄はすでに大盛り上がり。
「ていうか、普通の高校生が縄の扱い方知ってるの、どういう経歴なん?」
「ちょっと特殊な訓練をしただけだ」
「どこでだよ」
「言えない」
「おい待て」
《また新たな闇が》《公安…?》《なんかの元工作員?》《いやでも愛は重いから納得》
コメント欄も疑惑を深めるばかり。
そして少し間を置いてから、朝倉が静かに言う。
「……今度、教えてやるよ。お前がやる側。俺が実験台な」
一瞬、樹が言葉を失う。
「……は?」
「お前、寝かしつけるの下手だろ。俺が寝られなくなったときのためにな」
「お前、それ今“俺で練習しろ”って言った?」
「言った。やるならきちんと教える」
《!?!?!?》《朝倉さーーーん!?》《その“教える”の意味が怖い》《樹くんが緊張で呼吸止めてるw》
コメント欄がもう完全に大炎上。
「……いや、俺、朝倉に手出せる気しないんだけど」
「それでも俺は安心する。お前の手なら」
言葉がまた重くて真っ直ぐで、樹は顔を手で覆いながら小さく笑った。
「ほんと、お前には敵わないわ……」
「知ってる」
あっさりと返す朝倉。二人の空気はゆるやかに落ち着いていく。
《何この愛の信頼》《重いのに尊い》《縄の話だったはずなんだけど!?》《オチが“知ってる”で笑う》
視聴者のテンションは、軽くジェットコースターだった。
こうして今日も、ふたりの配信は謎の技術と重たい愛に包まれて終了するのだった。