アーニャからの贈り物
日が暮れてから、《はくげい》との衛星回線を開いた。
こちらの状況を手短に伝えると同時に、芽衣ちゃんがまとめてくれた報告書をデータ送信する。
ほどなくして返事があった。
『了解した。本艦は明朝マルヨンマルマル、貴機の至近に浮上する。海上で会おう』
通信用ディスプレイに表示された長津田艦長の顔は、どこか疲れているようだ。
ジジイに悩まされたのかな? 気の毒に……
『おっと言い忘れた。カルカのアーニャ・マレンコフ氏とコンタクトを取った。彼女からの贈り物がある。飛行船ドローンで先に送っておく』
アーニャから? あれか!
「隊長」
橋本晶に呼ばれて振り向くと、彼女はドローン操作に使用しているHMDを跳ね上げていた。
「フーファイターが帰還して行きます。落としますか?」
「推定エネルギー残量は?」
「八~十二パーセントです」
もう少し減らしたいな。それに、仕掛けるならアーニャからの贈り物が届いてからの方がいい。
「いや、今回は見逃そう。次の補給時を狙う」
「了解」
橋本晶はそう言って、HMDを装着し直して瑞雲の操作に戻った。
彼女の眼前には、二十キロ先の空を飛行している瑞雲から送られてくる光景が広がっているのだろう。
瑞雲には、昨夜受け取ったフッ化重水素レーザーを装備している。
フーファイターを落とすには、レーダーに映らない瑞雲で至近距離まで近づいての狙撃が一番確実。
しかし、これをかわされたらこちらにはフーファイターへの対抗手段がなくなる。
保険としてアーニャからの贈り物……位相共役鏡もあった方がいいだろう。
しかし、贈り物と聞いて位相共役鏡と思い込んでしまったけど、蓋を開いたら『北村君。カルカの美味しい紹興酒よ♥』などという事はないだろうな?
いや、そんなわけあるか。
カルカとコンタクトを取ったと言っても、荷物が送られてくるわけじゃなし。
送られてくるのはデータだろう。そのデータを元にプリンターで作った物が贈り物だと思うが、《はくげい》には無くてカルカに有って、僕が希望していた物は位相共役鏡しかない。
アーニャは長津田艦長から話を聞いて、データを送ってくれたに違いない。
決して紹興酒なんかではない。
贈り物が届いたのは深夜二時のこと。
「隊長。起きて下さい」
リクライニングシートで仮眠を取っていたところを、橋本晶に起こされた。
「橋本君。交代時間にはまだ早いけど、何かあったのかい?」
「ありました」
「フーファイターのエネルギーが無くなったのか?」
「いえ、まだ二十パーセント残っています」
「では?」
「先ほど、飛行船ドローンが五機到着しました」
「おお! 贈り物が届いたか」
「贈り物? ああ! ドローンのペイロードに、隊長宛の贈り物も積んでありましたよ」
彼女がそう言って差し出したのは、紹興酒の瓶だった。
おい………………




