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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第37話 波と、その先

 七月下旬。花火大会まであと一週間。紗奈は前日から少し落ち着かない様子を見せていた。


「緊張してる?」と悠真が聞く。


「うん、なんか。楽しみにしすぎると、当日ダメだったらどうしようって思っちゃう」


「ダメだったらダメでいいだろ。来年もあるし」


「……それだけで、ちょっと気が楽になる」


紗奈はそう言って小さく笑った。期待と不安が同時にあることを、隠さずに言えるようになっていた。




 恒一は夏期講習の合間を縫って、悠真に進路の話を相談した。


「正直、行きたい大学が決まらない。お前らみたいに、はっきりしてるわけじゃないし」


「俺だって紗奈のこと考える前は、何も決まってなかったよ」


「それ、励ましてんのか脅してんのか分かんねえな」


二人は笑いながら、それぞれの不確かさを共有した。完璧な答えを持っている必要はない、というのが、この一年で悠真が学んだことの一つだった。




 部室では、玲奈がコンクールの結果を聞いて戻ってきた。悠真の三枚のうち、「二人の影」が入選したという。


「おめでとう。これ、紗奈さんに見せてあげて」


その夜、悠真は紗奈に結果を伝えた。


「私が写ってる写真が、入選したんだ」


「お前のおかげだよ」


「違う。悠真が撮ったから」


「お前がいたから撮れたんだよ」


紗奈は少し黙ってから、「ありがとう」と小さく言った。以前なら謙遜して流していたはずの言葉を、そのまま受け取れるようになっていた。




花火大会前日の夜、紗奈からメッセージが届いた。


「明日、調子悪くなったら、途中で帰ってもいい?」


「もちろん。無理して最後までいる必要ない」


「ありがとう。それ聞いて、安心して眠れる」


悠真はその言葉に、これまでの一年間の積み重ねを感じた。完璧な約束ではなく、いつでも変更できる約束。その柔らかさが、二人の関係を以前より長く続けられるものにしていた。




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