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ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


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第35話 夏の予感

 七月初旬。夏休みを目前に、クラスは少しだけ浮かれた空気になっていた。悠真と紗奈はいつものように昼食を共にしながら、夏休みの予定について話していた。




「今年は花火大会、行けそう?」と紗奈が聞く。




去年は紗奈の体調が不安定で、結局行けなかった。悠真はその記憶を思い出しながら、「行けたらいいな」とだけ答えた。期待しすぎないように、でも諦めないように。そのバランスを、悠真は少しずつ覚えていた。




「無理だったら無理でいいよ。その時々で決めよう」




紗奈がそう言ったことに、悠真は少し驚いた。以前なら「絶対行く」と決めて、それが守れなかった時に余計に自分を責めていたはずだった。








 恒一は夏期講習に申し込んだらしい。「進路、ちゃんと考えてみる」と珍しく真面目な顔で言った。




「お前と紗奈見てたら、俺も自分のことちゃんとやらなきゃって思った」




「俺たちのせいにするなよ」




「いや、いい意味でだよ」




恒一は笑いながら、自分の参考書を見せた。悠真はその姿に、恒一なりの変化を感じた。








 部室では、玲奈が夏のコンクール用に最終的な展示作品を選んでいた。悠真の写真も三枚選ばれた。河川敷の夕日、自転車の影、そして文化祭の時の「二人の影」。




「これ、もう一回出すんだ」と悠真が聞く。




「うん。一番、悠真らしいと思うから」




紗奈にその話をすると、「私が写ってる写真、また見られるんだ」と少し恥ずかしそうに言った。




「嫌だった?」




「ううん。今は、嫌じゃない」




その言葉に、悠真は小さな安心を感じた。








 夏休み前最後の夜、紗奈から電話が来た。




「最近、悪い日も悪いまま終わらせられるようになってきた気がする」




「どういう意味?」




「前は、悪い日があると、それがずっと続くんじゃないかって怖かった。今は、悪い日は悪い日で、明日は別かもしれないって思える」




悠真はその言葉を、ゆっくり受け止めた。




「それ、すごい変化だと思う」




「悠真がいたから」




「俺だけじゃないだろ。恒一も玲奈も、先生も」




「うん。でも、悠真が一番隣にいた」




電話を切った後、悠真は窓の外を見ながら、これまでの一年を思い返していた。完璧ではない。波もまだある。でも、二人とも、少しずつ違う場所に立てている気がした。





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