↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベストフレンズ  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/95

第25話 二月の輪郭

二月に入った。


紗奈のクリニックは、二週間に一度のペースになった。


悠真は毎回、待合室で待った。


二回目の診察の帰り道、紗奈が言った。


「薬、出してもらうことになった」


「そっか」


「飲んだことないから、怖いけど」


「先生に聞いた? 飲み始めたらどうなるか」


「うん。最初は眠くなるかもしれないって。でも、あの朝の感じが少し楽になるかもしれないって」


悠真は頷いた。


「じゃあ試してみる価値あるな」


紗奈は「そうだね」と言った。


以前より少しだけ、声に厚みが戻っていた。


でも、毎日が上向きなわけではなかった。


薬を飲み始めて数日後、深夜に紗奈からメッセージが来た。


「眠れない。頭が変な感じ」


悠真はすぐ返した。


「副作用かも。クリニック、電話相談できるって言ってなかった?」


「……そうだった」


「明日の朝、電話してみて。一人で抱えなくていい」


「うん」


翌朝、「薬の量を調整してもらえることになった」と連絡が来た。



中旬、恒一と玲奈と四人でファミレスに行った。


紗奈が外に出るのは久しぶりだった。


恒一がくだらない話を続けるうちに、紗奈も少しずつ笑うようになった。


玲奈が「好きなデザート頼んでいいですよ、今日は恒一さんが払うので」と言い、恒一が「聞いてない」と言い、悠真が「言ってたよ」と嘘をついた。


紗奈がパフェを頼んだ。全部は食べられなかったけれど、半分以上食べた。


帰り際、玲奈が紗奈にそっと言った。


「来てくれて嬉しかったです」


紗奈は「ありがとう」と返した。




月の終わり。


五回目の診察の帰り道、紗奈がぽつりと言った。


「先生に、弱さを見せられなかった話をした」


「うん」


「先生がね、『弱さを見せることは、相手を信頼しているってことだよ』って言ってた」


「……そうだな」


「私、ずっと逆だと思ってた。弱さを見せたら、重くなるって。嫌われるって」


悠真は少し考えてから言った。


「重くはあったよ」


紗奈が立ち止まった。


「でも、嫌じゃなかった。重さと嫌さは、違うから」


紗奈はしばらく悠真を見ていた。それから、小さく笑った。


「……正直だね」


「それくらいは言える」


冬の終わりの風が、少しだけ緩んでいた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。