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人間未満、あるいは未完成  作者: レム睡眠
1章 黛紫苑編
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自己紹介

心海大学。

ここは、有名な難関私立大学である。


名を馳せる要因は、理系文系のあらゆる研究分野を網羅している所だ。

節操がないと言ってしまうと否定はできないが、ありとあらゆる研究が最前線を進んでいることを加味すると、笑い話にもならない。

つまり、この大学にいる人間は学問的に優秀な人物が多いというわけだ。


進学先としては大変魅力的であり、東京ということもあってか、出願する高校生が多く、毎年合格倍率は十倍を優に超える。

客観的に見れば誇るべき要素しかないのだが、僕自身の主観を通すと、実態と大きく離れている為、過大評価もいい所だ。

では実態はどうかというと、変人奇人の魔窟だろう。


この学校では9割以上の人間が研究者となるわけだが、その研究者というのは大変捻くれた思想を持っている人間が多い。

外部の人間もそうであるかというと怪しいと思うが、少なからずこの学校の研究者はそうだと言える。

残りの人間に関して言えば、軒並み学校のテンプレートから外れている人間である為、これまた変人が多い。

学校の主な売りである研究を意にも介さず、本当にやりたいことだけやっている人間が多いからだ。


僕の周囲にはそれに該当する人間が男女含めて5人存在しているし、僕もその一味であると言っておこう。

さて、自己紹介は済んだけど、学校紹介はまだ終わってない。

先ほどこの学校の魔窟具合を語ってきたわけだが、その歪んだ実態はもう一つある。


それは、都市伝説だ。

小学生が悪戯や本などで実しやかに囁くようなそれらが、この魔窟で、大学生の口から語られている。

その中でも特に有名なものとなると、あのサークルの話になるのだろう。

そう、ミステリーサークルである。


ミステリーサークル。

このサークル名を聞いたことはないか心海大学でアンケートを取れば、全員が聞いたことはあるというだろう。そう、全員がだ。


これは一般論的な話になるが、一つの情報に対して、少なからずその中身を知っている人間が全体の3割ほどは存在する。

だけど、そのサークルの実態を中身を大学の大多数は知らない。

これがミステリーサークルの本領であり、1番の都市伝説に押し上げている要因。

つまり、その不透明さだ。


不透明で、不鮮明。

人間の知的好奇心を煽るには余りあるもので、研究者だらけのこの学校では、挑戦者は後をたたなかったが、結果はお察しの通りだ。


そんな不透明なミステリーサークルだが、僕からすればそこまで追い求めるようなものではないと思う。

研究者と自由人が所属しているせいで、協調性という概念がそもそも備わっていない。

現在もメンバーの大半は大学におらず、海外や旅や遺跡探究やらで、人生謳歌の真っ最中というわけだ。

全く、振り回されるこっちの身にもなって欲しいものだ。

そんな感じのサークルのため、もぬけの殻になる事が少なくないが、公式サイトに依頼人を募集している以上、誰か二人は必ず残らなければならない。


要するに、僕はその貧乏くじを引いて大学にいる。

さりとてそのくじを引かずとも、僕自身に極めたい学問や行きたい場所もないため、貧乏でも富豪でもないわけだ。


そんな摩訶不思議な我がサークル実態だが、たった一つだけのルールに全員が従っている。

もぬけの殻の要因と、依頼人を募っていることにも繋がっている事だが。

それは、未知の体験をする事、だ。


自分の知らない知見を外界から得ることを至上としており、逆にそれ以外の行動はつまらないためやってはならないと明言されているほどだ。

これを聞いた時、僕は知的好奇心に支配された、この学校らしいなんとも身勝手な連中だと思った。


未完成の生物ほど、未知に飢えている。


「………全く、碌でもない話だ」

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