2 刀儀の一族と妖刀と送り梅雨 ②
「いいか蒼太、宿郷とは、國そのものなんだ」
「? ええと日本ではないと?」
「ん~、そう捕えるか・・・いや、現代の国家体制を言うならば、宿郷はもちろん日本であり、日本人だ」
ちょっとお師様が何を言ってるのかわからん・・・。
「すまんな、話を変えよう。この宿郷は、主1族裏3族、表3族の計7族からなる集合体だ。主である宿郷一族、裏族の刀儀一族、隠一族、蒐郷一族、表族豊土一族、満屋一族、猟漁一族、これが宿郷7族だ。」
げげ、なんだか知らない情報がわんさと出てきたぞ。
なんだか話も大きそうだな・・・。
「7族を総称して宿郷と呼ぶ。全一族にはワシの血を入れてあってな、特に宿郷一族には何度か入れてより濃く、より力ある一族にして、主族を担っている」
「えーと、つまり戦国時代の主家と家臣で、その家々が血族になっているみたいな??・・・って事はまさか鈴鹿って世が世ならお姫様って事??!」
「ふふ~ん、分かった蒼太?畏れおおいのよ?さ、ひざまずきなさいっあいたっ」
「なにがひざまずきなさいだっ、良いか蒼太、その認識はちと間違っておる」
「お師様酷い~イテテ」
「それぞれの役目を担うために七族としたのだ。まず主である宿郷一族だが宿郷家・山坂家・六合家・野分家が序列順となり、仮に宿郷家の跡取りが生まれない、または死、もしくは実力が伴わない場合、分家、もしくは序列上位家から養子となる事もある」
「まあ、宿郷本家は子宝に恵まれるのでな、今まで養子を入れたことはないがな」
「他の家の役目というのは聞いても?」
「もちろん説明する。が、その前に宿郷一族をもう少し掘り下げて説明する。蒼太も居候してよくわかっているかと思うが、宿郷は七族の長であり、また闇払いを生業とする。これは宿郷を私が生み出した絶対理由であり、願いの為だ。表向き宿郷はグループ統括会社を立ち上げ、その直轄会社に宿郷セキュリティーがあり、宿郷一族はほぼどちらかに所属している。そして、宿郷が問題なく活動できるよう、生まれたのが他の六家だ」
「まず刀儀だが、鍛冶を担う。例えば作ったころは太刀を打ち、研ぎ、鍔や柄、細工等を造っていた。これは宿郷が闇払いをする為に必要不可欠だった。当時は武士であれば帯刀していたのでな、闇払い先で難癖付けられることもあった為、数打ち品なぞ持たしたら命がいくらあっても足りはしない。世に知られることはなくとも、刀儀の刀は見るものが見れば国宝扱いされるぞ」
「え、刀腐るほど蔵にありましたよね?」
「ああ、どんどん増えてるな♪」
あの蔵から数本持ち出したら億万長者まっしぐらじゃないか!
まあ、あの防犯体制では俺ですら盗むのは無理だが・・・誰だよあの結界張ったの!伝説の空海とか安倍晴明とか言われても納得しかない程だ。
「そして宿郷とは少し異なるが、刀儀にも序列家がある。刃座家・砥空家・飾根家・鞘利家となる。昔は全家で武器造りをしていたが、今は武器は刃座家、砥空家は大工や工務、インフラ系と所謂ゼネコンの様な方向に特化しているが一部研ぎ専門。飾根家は装飾で今はアクセサリー服飾や家電技術の研究開発とかが主だな、ああ、眼鏡やコンタクト、レンズ系の研究開発もしてたな。あとは鞘利家だが、一部まだ鞘造りをしているが、ほとんどは電子機器研究開発に移行している。まあ、各家が自らの元の役割を刃座に伝承し、新しい道を歩んでいる。ただ各家も伝統技術が失伝しないようきっぱりやめてるわけじゃないってところだ。」
なるほど、そこでこの前刀儀一族の刃座家へ赤鮫のレプリカ作成のために連れていかれたのか。
しっかし、ものすげえ眼光の随分歳くった爺様に赤鮫を渡して小一時間位抜いたり柄外したり、手心地を感じたりしただけだったのに、ここ迄精巧に偽刀赤鮫を打ってくるとは、あの爺様もただものじゃないな。
「そして次が蒐郷だ。朧月家・気月家・望月家・焔月家となる。蒐郷は呪術を扱う一族だ。本来なら化生を祓うのには呪術系が一番だったのでな、蒐郷をトップに据えた形態がワシの理想だったんだが・・・そもそもワシが呪術系は苦手でな、残念ながら宿郷のアシスト役に据えたんじゃが・・・」
お師様は言葉に詰まり、痛ましい表情を浮かべていた。なんだ?何かがあったのか?
気にはなるがお師様の苦々しい表情を見ては無理に話をせかせず、言葉を待つ事しか出来なかった。
「いや、すまん。ずいぶん昔の事を思い出してのう。まあ後々話してやろう。今日はお預けじゃ」
そう言うとかっかっかっかといつものお師様が戻ってきた。
「まあその一件で、各家宗派分けをする事にしてな。朧月は陰陽道。気月は仏教。望月は神道。焔月は密教を主に展開しておる。ああ、ちなみに蒼太の実家の望月もここの分家じゃな」
まるで風が強いのうとでも言うが如く、自然に言の葉を吐いた。
「はっ??????????????えっ???????」
「どうしたのじゃ蒼太?」
「いやいやお師様、いまさらっと凄い事言いましたよね?」
「なにがじゃ??」
「いや、家の本家が宿郷の蒐郷一族望月家だって!!!!!」
「なんじゃ?知らんかったのか??」
「いっちミリも知りませんでしたよ!!!」
「ま、まあ、とりあえず落ち着きなさい蒼太」
「あ、ああ」
「そしてあたしにひざまづきなさアイタッ」
「ったく、そうか、蒼太はババ様から何も聞かされてなかったのか」
「ぜんっぜんです。なんだよ、ばば様は知ってたのかよ」
「いや蒼太のテテゴも知っとると思うがな」
「なっ・・・・」
「まあ、分かれたのは鎌倉の前くらいじゃから、ここの望月とはすごーーーく遠縁じゃから気にするな」
「いやまあ、そうですか」
「うむ、分かれたのは望月だけではなく気月もよ、神社と寺をいくつか分社してな。遠縁ではあるが、今も交流はある。どうしても必要があってな。それをいま語ることは出来ないが、まあそういう事なのじゃ」
すまんな、とテヘペロするお師様だが(メッチャかわ綺麗だった)、そう言われると聞くことは出来ないが、滅茶苦茶気になるじゃないか。
「そして隠一族。諜報、情報操作、伝令、捜索、暗殺、戦闘補助等、まあ今でいう忍びよ」
「え!忍者ですか!!」
うわー忍者迄いるのかよっカッコイイ!!しかしすげえな宿郷は・・・うちも末端ではあるが属してたのか・・・まだまだ先の事だが、いずれお師様にはあの件を相談する事になりそうだ・・・。
「そうだ、そして隠一族は刃風家、火走家、土野家、水鏡家の四家在り、どの家も総じて忍びの技を扱うが、刃風家は暗殺や戦闘が得意、火走家は戦闘、土野家は諜報や情報操作、水鏡家は忍術と攪乱が得意と各家特色がある」
「あ、暗殺て・・・化生相手ってより人間相手の一族?・・・何ですか?」
「そうだな、そっち方面が主目的で創ったしな。今もどうかとかは聞かぬが花よ。かっかっかっか」
あ、これまだバリバリ現役だわ、背中に冷たい汗を感じざる得ないわ。
まああれだな、あまり突っ込まないようにしよう。触らぬなんとやらだ。
「以上が裏三族十二家となる。なぜ裏なのかは、世間一般に喧伝しない、出来ないからだ。また、宿郷も含めた四族十六家の初代宗家家長は全員ワシの子で、そこから分家、離家と一族の枝葉を広げており、全員が遠い近いはあれど、親戚となる。離家とは家を新たに起こして姓を名乗った新家でな、離家とは言え各一族には必ず属する」
「なるほど、という事は表三族は真逆になるんですか?」
「まあそうだな、表三家は豊土一族、満屋一族、猟漁一族となる。この三族は宗家が一族名を姓とし、やはり初代各三家はワシの子が子孫をつくり、さらに戦闘とは無縁となる為枝葉は裏家よりずっと多い。豊土は農業を生業とし、現代では農作遺伝子研究等も行うし、世間一般の農家と同じように田畑で宿郷の台所を担う。今となってはワシらの土台である」
「つまるところ宿郷の自給自足の農作物部門って事ですか」
「そうじゃ、そして満屋は商業を生業とし、刀儀や豊土、この後話す猟漁の物を外に売り、外貨とするが、それだけでなく、医療に医薬研究開発製造、教育、スーパーやコンビニや外食店とかなり手広くやっている。資金調達はここがほとんどやっている。とはいえ、最終的には宿郷グループの傘下として動いているんだがな」
「そんなことまで・・・」
呆気にとられるとはまさに今の俺を指す言葉だろう。
しかし、お師様が言う國と言うものの全貌が垣間見えた思いだ。
「最後が猟漁だが、まあ察しの通り肉、魚を狩猟して宿郷の食卓に彩を与える事を生業としている。もっとも現在は家畜業をし、動物の遺伝子研究、交配。魚の養殖でこれは淡水海水どちらも行っており、関係上満屋の医療、教育も提携している。もっとも、ここも昔ながらの猟をして猪や熊や野兎の狩猟技術を失伝しないよう保護している。弓や銃の腕だけなら宿郷と匹敵する。いや、それだけに特化している分上かもしれんな!かっかっかっか、以上全七族をもって宿郷となる」
「あの、教育もって事は俺の通う学校は私立だったんですか?」
「いや、基本的に小、中学校は公立として宿郷に何カ所かある。これは日本との差異を出さない為だ。だから基本教員も通常通り教育委員会管轄としており、保険医のみ宿郷より入っている。これは先にも言った通り、日本の常識と同じことを学ばせるためだ。だが、宿郷の地でいじめや猥褻な行為をさせる事は許さん。よって日本国の圧力を使い、保険医には校長以上の絶対権を与えている」
「保険医が最高権力者・・・なんだそれ・・・」
「まあ、高校以上はすべて宿郷の私立運営でな、ここからは宿郷の生き方を学んでいく事となる」
「なるほど、だからお師様は宿郷を國と呼んだんですね。日本であって日本でない。何らかの宿願の為に両面宿儺が何千年もかかえて作り上げた國」
國とは国であり、小さな島国の、日本という国の中の宿郷國。昔で言う自治都市に形態は似ているが、ここに國がある事などほとんど誰も知りえない小さな、しかし莫大なポテンシャルをもつ宿郷。
その話は痛快で、そして自らの宿願の為にも非常にたよりになりそいうな場所だった。
ならば自分はここで、更に研鑽を積むのだ。いつか、我が宿願を果たすその時まで。
お師様の話は長く、理解するにも随分と時間を要する事になった。夕焼けに目を細めつつ、送り梅雨を見送ると、宿郷に来て初の夏が訪れようとしていた。
こんばんは、今回はほんとーになかなか筆が進まず久々に更新しました。(できました)
実は普段は一度携帯でチェック読みをして登校するのですが、薬が効いてて今にも寝そうなので、このまま投下します。あとで見直して誤字脱字がありましたら修正します・
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