追ってを振り切り、国境越えに挑む
レオン君は逃げる。
追っ手を振り切らずと考えていたが。
一騎尋常じゃないのを相手にした際に、車輪に罅が入っていた。
追ってくる本隊。
シュンナは再び囮に捨てられるのでは不安がこみ上げる。
レオン君の無防備な背中に、荷馬車内に置いてある何か武器になりそうなので襲う?
囮で死ぬなら道連れ。
そう、心の中に悪魔の自分が囁く。
レオン「シュンナ! 荷馬車を捨てるしかない! 」
シュンナ「ああ、やっぱり私をお・」
レオン君の目を刺せそうな鑿を隠し握る。
レオン「早く僕の背中につかまって! 」
シュンナ「・え? 私を囮に、使うんじゃ…」
レオン「何言ってんの!? シュンナがいないと僕は困るよ! 」
もちろん両親に美味しい料理の為である。
が、シュンナは別の意味で捉え。
鑿を気づかれないように手荷物に隠して、顔を赤く染めて戸惑う。
下士官「待てこらーーー!? 」
下士官「昇進! 下剋上ぅぅ! 」
追手が軍馬に無理をさせて距離が近づく。
シュンナの戸惑いに構っている余裕が無い。
レオン君は「ちょっとゴメン」と片手でシュンナ(の胴)を掴み。
片手で荷馬車を振りぬいて追っ手に投げたあああああ。
下士官「「「「どわあああああああああ」」」」
軍馬「「「「ヒヒィィィンンンン」」」」
慌てて回避行動をとるも。
後続の者たちはいきなりのことに対応できず、荷馬車に激突。
打ち所が悪い者は二階級特進(戦死)した。
下士官「クソガァ! 」
下士官「荷馬車を捨てて身軽になりやがってぇぇ」
下士官「それでも追うのよ! 」
戦死ではなく。
生きて昇進する為に。
レオン「飛ばすからしっかり摑まって! 」
シュンナ「は、はひ…///」
レオン君たちは本隊の追撃を振り切った。
総指揮官「逃げたのは、宝石人族の女、魚人族の男。間違いないな? 」
中隊長「はい、間違いありません。先行部隊の生き残りの証言です。虚偽の可能性も、ありません」
うむ、そうかと地図を鞄から取り出して。
逃げた方角と、隠れられる場所の目星を推測する。
総指揮官「隣国に通じる橋を渡られたら流石に不味い」
国際問題を破った帝国としてはではなく。
この本隊の任務達成が困難になるのがである。
帝国は【スキルスイッチ】の開発で軍事力、経済力も発展した。
隣国が幾ら横槍を入れようが関係ない。
烏合の衆では、時間と共に更に強力になっていく軍事力の前では敵じゃない。
総指揮官「隊を分ける」
中隊長「はい」
・
・
・
宝石人族の国を侵略した際。
国境付近には手練れの駐屯部隊が配置されていた。
いたのだが、現在駐屯施設にいるのは左遷された貧乏くじを引いた下級兵士。
上官は下士官の教育を受けている程度の実力。
まあ、人数はそれなりにいる。
国境を越える者を追い返したり、拘束したりするので。
■駐屯施設、南の出入り口■
下級兵士「ふわぁ~~」
下級兵士「見回りだろ? 早く行けよ」
行商人や軍隊を政治的、裏取引で追い払って以降、暇。
仕事は両国の政治的な交渉を知らない旅人、知人に会いに来た者、密入者の発見と捕縛。
気に入った男女だったら、尋問と言う名の個室でやりたい放題。
そして用済みになったら、捕縛者収容の檻の中か、息の根を止めて地面に肥料として埋められる。
下級兵士「最近イイ女が来ねぇぇんだから。早く行ってもなぁぁ」
下級兵士「そんなこと言って。もし、今日がそのイイ女が訪れるたら如何すんだ? 」
「そんなことあるかよ」と仕事の見回りに行く。
装備はお古だが、しっかり手入れされたフル装備。
不意打ちで矢が飛んできても即死は無い。
下級兵士「あ~~ぁ。その辺を何時も通りぶらぶらして、今日の仕事も終わりだぁ~~」
欠伸をしながら何時もの見回りルートの途中で小休憩。
北側だったら他国だから、小休憩などせずに見回ってさっさと交代の兵士に引き継ぐ。
下級兵士が見回っているのは占領領地の南側。
帝国兵と輸送部隊しか来ない。
が、万が一があるかも。
駐屯施設から数百メートル地点には鳴子がある設置されている。
だから、さぼる。
下級兵士「Z~~…♪ 」
だから油断する。
ドスンドスンと。
レオン君とシュンナが向かって来ていると言うのに。
下級兵士「○○ちゃ~んz♪ 」
夢の中でイイ女と出逢えてる。
なので地面から伝わる振動も、カランカランと鳴子の音が鳴り響いても、起きない。
起きたくないのだ。
レオン「なんで兵士が、寝てんだ? 」
シュンナ「起きる前に倒さないと!? 」
追手が何時追い着くか分からず。
見え見えの鳴子共々身体に引っ掛けるレオン君。
シュンナ共々、見張りの兵士だろうが地面でグースカ寝ているのに不思議がるのは当然の反応。
シュンナは危険だと、直ぐに兵士の排除をレオン君に助言する。
レオン「それもそうだな」
「えい」ととても簡単に寝ている兵士の頭を踏み潰す。
兵士は永遠に覚めることの無い夢の中で、イイ女と永遠に居られて幸せであらんことを。
レオン君は駆ける。
国境を越える為に。
駐屯施設に駆け込む。
下級兵士「な!? 魚人族!? し、侵に・ぶふぅぅ」
レオン「こいつ等……追ってくる奴等より…弱い? 」
まるで最初にシュンナを(偶然)助けた時に遭遇した兵士よりも弱い。
統率も何もなく。
こっちを見るなり悲鳴を上げながら、斬る、突くと単調な動きで襲ってくるだけ。
烏合の衆かと思ってしまう。
レオン「鎧は飾りかよ」
しかも装備がどれも年季を感じるほどに擦り減っているのが見て取れる。
体に運よく当たった刃は砕け散る。
鎧は布の服じゃね? と思えるほど薄い。
シュンナ「弱いならいいじゃないですか? そんなことより早くこの場を抜けないと」
レオン「それもそうだな」
下級兵士「ぎゃあああ」
下級女兵士「こない・っ!! 」
下士官「首が……私の首が……」
旧式の手動弦巻き付きのクロスボウガンを構える。
狙うはこの騒ぎの元凶のレオン君。
と、背中に背負われているシュンナ。
狙うは背中。
下士官「シネェェェェ」
パシュッ! キリキリキリ カチン
発射して直ぐに次弾装填の為に、弦巻き機を巻く。
一射目はシュンナが下士官の込めた殺気に気付いて、レオン君が腕で打ち払った。
下士官「コンドコソォォォ」
二射目を発射し様とした。
レオン「背後から鬱陶しい」
駆けている先の地面に丁度いい小石を見つけたレオン君。
小石が無かったらシュンナに荷物から入らない物を受け取っていた。
「オラヨォ」と下士官が発射した二射目の矢を小石で弾き。
勢いが衰えることなく小石は下士官が握っていたクロスボウガンに衝突。
「イデェェェ」と叫びながらクロスボウガンを地面に落とす。
指に当たってませんよ?
条件反射、ああ、なるほど。
下士官「しまったっ! 」
慌ててクロスボウガンを拾って、キリキリと弦を巻く。
が、射程圏内にレオン君は離れている。
下士官「待、待てぇぇ!? 」
国境を突破されたら減給、最悪は首が飛ぶ。
だから追い駆けて引き戻す。
軍馬「「「ヒヒィィン! 」」」
レオン君が撒いた追手がようやく姿を見せる。
そして更に此処以外の駐屯施設の騎馬たちを率いて、遠征を命じられた本隊が現れた。
挟撃の危機である。
中隊長「逃げた魚人と小娘を捉えました」
総指揮官「よし。このまま突っ込んで潰せ」
下士官『オオオオオオオオオオオ』
軍馬『ブルル! っは、っは』
追っては【スキルスイッチ】を持っている。
能力は不明なれど、厄介極まりない。
レオン君は相手をせずに逃げに徹する。
下士官「た、助かった」
なんか知らんが援軍の出現、到来。
侵入者どもを蹴散らせ。
厳罰は有耶無耶にすることができる。
下士官「行けー♪ そうだそこだーー♪ 軍馬も良いぞーー♪ 」
声援を送る。
レオン君とシュンナは騎馬からの突撃を何とか躱す。
レオン君はシュンナを庇って怪我を増やす。
怪我は魚人族の治癒力で回復、再生していくので。
致命傷を受けなければ死なない。
が、怪我で動きが鈍くなり駆ける速度が遅くなる。
レオン「く、やばい」
シュンナ「危ない! 今、今掠りそうですんだけど…」
後数センチでバッサリ骨まで肉を切られていた。
下士官「クソ。鎗持ち!? お前等がんばれよ!? 」
下士官「言わせておけば。反転! 」
下士官「再突撃だ! 俺の功績ぃぃ! 」
反撃すれば駆けるフォームが崩れる。
レオン君は身を低めて真っ直ぐこの突撃地獄を抜けようと進む。
総指揮官「む。馬がばててきた…無理させすぎたか。止むを得ん。最大魔力を味方ごと放て!? 」
遠距離魔法の【スキルスイッチ】持ちに命令を下す。
もはや磨り潰すのにも、軍馬達は限界。
機動力が落ちてきては、もう突撃攻撃の刃は届かない。
ならばせめて、味方が見事に速度を落としてる今が好機。
下士官「「「恨まないでね」」」
下士官「「化けて出るなよ」」
複数のスキルを合わせた【殲滅球】。
それをレオン君とシュンナ、それと周囲の味方も余波を受けるだろう彼等彼女たちに発射。
レオン「なぁ」
シュンナ「そんな」
下士官『ちょっと待てよ!? 下剋上がああああ』
【殲滅球】が爆ぜて前方を火の海に変えた。
焼き殺される者たちと軍馬の苦痛の叫びが木霊する。
レオン君とシュンナの確認は不明。
総指揮官「・・死んだか」
中隊長「おそらく」
炎が収まるまで近づけない。
今水で消火したら、魚人は復活する恐れがある。
助けられるかもしれない下士官たちには悪いと思うが、これも任務達成の為の犠牲だ。
総指揮官「彼等の無念を胸に刻め。敬礼! 」
戦死者たちに礼。




