予想以上の軍の対応の速さ
■旅立ちから2日目の昼過ぎ■
レオン「お」
シュンナ「あ…」
街道の先に土煙を発見。
レオン君は人族の軍はもっと遅く現れると思っていたので驚いた。
シュンナはやっぱり東に進むからとレオン君に逃げましょうと声を掛ける。
レオン「おう」
人力馬車。
シュンナは荷台に乗っているだけ。
馬より早く駆けることはできないが。
人族の軍との距離は離れている。
脇道に入り、雑木林やら荒らされた田んぼや畑を利用すれば上手く逃げ切れる。
シュンナ「ど、どうかしたんですか? 」
何故レオン君がノロノロ進んでいる。
シュンナはもっと急いでと悲鳴に近い声でレオン君に急ぐように声を掛ける。
ヒィィンと軍馬の鳴き声が聞こえた。
おそらく人族の軍に見つかった。
軍馬の鳴き声は手綱を振るったのだろう、速度を上げる為に。
シュンナは追いつかれれば殺されるのを知っているからレオン君に急ぐように懇願する。
が、レオン君は故郷への近道的な海底洞窟がある王都跡地から遠ざけるのが目的なので。
人族の軍が追ってきてくれなきゃ困るのだ。
レオン(よし、だいぶ食い付いた、よな? )
地球ではゲームの世界でしか敵を引き付ける経験が無い。
魚人族に生まれ変わってからは、餌を追い立てる側だったので未知の経験。
失敗したら新しい両親や友達、ご近所さん達がシュンナの国の様に蹂躙される。
レオン(絶対にしくじれない)
■遠征軍■
上層部が逃がした宝石人の奴隷並びに匿っている者達を、拘束もしくは処刑の命を受けた大隊。
【千里眼】の新型【スキルスイッチ】で街道を進む大柄の人物を発見。
下士官「ひゃぁ♪ ひゃぁ♪ 」
軍馬「ブルル…」
新型【スキルスイッチ】を使い。
軍馬と自分自身を強化する効果で先走る者が居た。
小隊長は上司の中隊長、そうして大隊の総指揮官に部下を止められずと己の監督不足と謝罪する。
総指揮官「気にするな♪ だが、奴だけに手柄が上がったら…分かるな」
この大隊は功績を上げ、気に要らない上司に下剋上を願う者達の集まり。
総指揮官・遠征の任務で大隊長に一時的に成っているのは今回だけではなく。
任務を完遂して正式な大隊長に昇格するだけの成果を。
もし、得られないなら部下の成果を捏造しろ。
それが呑めないなら、今直ぐ戦死か引き戻せと暗に伝える。
小隊長「もちろんです! 」
軍馬の荒い息遣いや蹄の音にも負けない様に。
はっきり答える。
小隊長(逃げた奴隷。もしくは協力者がいなくても。この辺は既に帝国の領土)
旅人を殺して手柄にすればと考える。
そんな事を知らない先走った下士官は、レオン君とシュンナを逃がすまいと手綱を振るう。
小隊長「おい。見失うなよ」
遠征軍の目になっている【千里眼】を使う下士官に指示を飛ばす。
下士官「魔力もまだまだ余裕です」
街道を進む誰かと先走った同僚の背中を見つめながら返事を返す。
遠征軍は総指揮官の速度を上げろと言う指示で更に加速する。
■間道■
レオン「一騎滅茶苦茶早い」
シュンナ「このままじゃ追いつかれちゃう!? 」
そしたら私は囮として捨てられる。
そんなの嫌だ!!
下士官「ようやく追いついたぞ♪! 大人しく俺に殺されろ♪! 」
シュンナ「キャァアアアアアッ!! 」
レオン「ック。コノォオオオ! 」
急速反転。
左腕のエルボーを迫る兵士に仕掛けた。
荷馬車の車輪が悲鳴を上げるが気にせず振り抜いた。
下士官「おっと」
軍馬「ビヒィ!! 」
解せぬ。
軍馬は騎乗していた兵士に恨みを抱きながら輪廻転生の輪に逝った。
レオン「シュンナは荷馬車の裏に」
シュンナ「は、はい! 」
下士官「よくも俺の軍馬を。お前? 魚人族か? いや後ろ姿じゃガタイがいい大男だなと思ったが…そうか♪ そいつ等(宝石人族)と(魚人族は)手を結んだんだな。成程♪ 上司達が何で奴隷に逃げられたか、これで納得いったわ♪ 」
手助けした魚人を殺せば。
間違いなく帰還後は昇級。
下士官「ペロ♪ (【スキルスイッチ】の限界まで強化して♪ さっさと本隊が到着する前に殺す♪ )」
レオン「く。馬が速いだけかと思ったら。こいつも動きが速い」
下士官「両腕でガードしてんじゃねえよ♪ さっさとその太い首を斬らせろ♪ 【嵐斬】」
レオン「ぐぅ、この」
クロスガードで防戦一方。
致命傷にはなっていないが。
視界に映る敵の集団が今にも到着しそうでジリ損。
兵士の剣が腕に食い込めば勝機はあるのだが。
連続斬りは肉を断つのではなく。
肉を削ぎ落とす様に振り抜かれている。
腕に食い込む様にガードするも、兵士が狙いを察知して軌道を変えられて肉を削がれる。
下士官「しつけぇぞ!? 」
レオン「あんたもな! 」
最後の勝機は。
兵士がスタミナ切れ、息切れを起こすのを待つ。
だが、疲れている様子がない。
シュンナだけでも逃がすか?
でも、徒歩じゃ馬に追いつかれてしまう…。
下士官は【スキルスイッチ】の魔力が尽きないか焦っていた。
身体能力を上げられるだけ強化したのに。
魚人を殺し切れていない現実。
このままでは自分の体内魔力を使い、戦闘を継続することになる。
しかも勝機が無いまま。
ただ本隊が到着するまでの時間稼ぎ。
それじゃ、魔力を使った損だ。
魔力の回復には個人差がある。
もしここで使い切って。
数日…下手したらこの後直ぐにこいつ等の仲間と戦闘になる。
その時魔力が無くて後方で弓を引いて援護射撃。
冗談じゃない!!
せっかく一番槍を飾ったんだ!
下士官「ここで俺の手柄にするんだよ! 【強一閃】」
レオン「ッ! 」
ッガツ! と剣が腕に食い込んで止められた。
下士官「しま・」
レオン君の空いた右手の拳が顔面に入る。
頭蓋骨は粉砕。
脳や口内は骨で傷付いた血肉でグチャグチャ。
レオン「シュンナ! 乗って! 」
レオン君は荷馬車に乗る様にシュンナに指示を飛ばす。
が、シュンナは兵士が殴られた光景を見て既に乗っていた。
この場から全力で逃げる為に。
総指揮官「惨いな」
中隊長「追えーーー!? 逃がすんじゃないぞーーー!? 」
小隊長「「「はい!! 」」」
ようやく追いついた遠征軍。
頭部がグチャグチャの仲間の死体と首があり得ない方向にへし折れた軍馬の死体を発見。
2つに分かれ、犯人(レオン君達)を追う部隊を先行させる。
残った者達は使える物を回収。
死体は放置。
総指揮官「如何やらただ奴隷に逃げられただけじゃなく。強力な協力者の存在がいる様だ」
中隊長「っは。部下から報告ですが。回収した【スキルスイッチ】の魔力が殆ど残っていないとのことです」
総指揮官「つまり協力者は相当手練れ、もしくは上層部が噂するアレ(魚人)と言うことだ」
中隊長「その通りだと、将官も思います」
総指揮官「では我々も気を引き締めて追い駆け様か」
これ以上アレに地上を跋扈されるのは気に入らない。
速やかに排除し。
他の共々我々が地獄に叩き落とさなくては。
中隊長「先行部隊を追い駆ける! いいな! 仲間が一人やられた! 手柄を取るのに焦るな! 小隊の連携で動け! 」
下士官『サー! イエッサー!! 』




